40 拐われたお姫様
昨日はあのまま眠ってしまったのね。
「おはようございます!」と元気に部屋に入って来たルーシー。
昨日のことは何も聞いて来ない彼女の優しさに感謝する。
「本日はお嬢様、お店には行かれますか?」
「そうねぇ。午前中は帳簿を見て、午後から向かうわ」
「今日はアンはお休みの日だったわよねぇ? 確か」
「左様でございますよ。お嬢様。今日はデートだそうですよ?」
自分のことのように嬉しそうに言うルーシーを見て、私まで嬉しくなる。
『トレ・ゾール』の店長のアンは、最近、買い出しに行った市場で出会ったらしい青年とお付き合いをはじめた。
大きな荷物を持ったアンに声を掛け、店まで荷物を運んでくれた好青年だと聞いている。
デートかぁ… 殿下と行った教会を思いだすわ…
胸が熱くなる…
「お嬢様??」
「いえ、何でもないわ」「気にしないで」
誤魔化す。
帳簿の整理を終えると、ちょっと遅めの昼食を摂り、店に出かける準備をする。
「お嬢様!」
「あ! 申し訳ございません。オーナー」
彼女は、ペロっと舌を出し頭を下げる。
最近新しく雇ったパートの女性だ。
フィニーが、もう直ぐトムと結婚する為、それまでに仕事を覚えて貰う為にお願いした女性だった。
フィニーには、結婚後も「パート」で働いて貰う予定だ。
「今日はフィニーもお休みなのね?」
「そうなんですよぉ~、アンさんも、フィニーさんも、おまけにトム君まで休みでぇ~
困ってたとこだったんですよぉ~」
「お嬢様が来てくれて良かったですぅ~」
「あ!」
「すいません」
彼女はまた舌をペロっと出して笑う。
うーん…
メラニー女史が見たら、激怒するでしょうね…
と、少し困惑顔を浮かべる
そんな私の様子も気にせず
「店長~休憩行ってきますね~~」二階の階段を駆け上がる。
え? 店長って? 私??
ちょうど、アンナがゴミ出しに行っていた為、店内には私一人となってしまう。
まぁいいか…と思い、店内の品を整理していると
黒騎士様が現れた。
「おや、レディ。僕はやっぱりツイてるね」楽しそうに言う。
「先日は、沢山のお買い上げありがとうございました」
「いや、いい買い物が出来て良かったよ。大事に使わせてもらったよ」
優しく微笑む。
「今日はこの前のお礼をしたくて来たんだ。良いガラス瓶が沢山うちにもあってねぇ」
「ここでは買取もしていると聞いて」
「いや、お金はいいんだ。どうせ家にあっても捨てる物だしね」
「良かったら、引き取ってもらえたら助かるんだが…」
「あ! お礼って言って、ゴミを引き取って欲しいって」
「悪かったかな?」と微笑む。
「そんなことは、ありませんよ」
「沢山お買い上げいただいたお返しですし、お代はちゃんとお支払いさせて下さい」
「量が沢山あってねぇ、ここに全部運ぶとなると、店の邪魔になると思って。どうすれば良い?」
「それなら倉庫のほうに。今日は生憎係のものがお休みですが、置くだけなら私が鍵を開けますわ」
「それは申し訳ないことをしたねぇ。運ぶのは僕がするから、じゃあ倉庫の鍵を開けてくれるかな?」
「わかりました」
念のため店のドアに一旦鍵を掛け、準備中の札を出し、黒騎士様を倉庫に案内する。
「荷物は入口付近に置いて頂いてかまいませんからね」と言いながら鍵を開けようとすると、
突然、布のような物を口にあてられた…
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