38 告白
秋もすっかり深まり、黄色に染まった銀杏の葉が落ちて道路は黄金に染まっていた。
もう直ぐ冬支度だ。
この国は、大陸の北部に位置しており冬は長い。
王都では、何日も雪が積もる程の大雪に見舞われることは少ないが、北部の辺は、早いところでは雪が舞う日もある。
そんな中、珍しく暖かな日、久しぶりに王太子殿下が『トレ・ゾール』に現れたのだった。
「エレナ、久しぶり!」
「少し時間はあるかい?」久しぶりのキラキラ光線を発射する。
「え?」私が驚くと
「連れて行きたいところがあるんだ! きっとエレナも気に入ると思うよ!」
少し早口で、声が普段より高めだ。
店長のアンから目配せされると、すかさず殿下が私の手を取り、ドアを開ける。
流れるような動作でいつの間にか馬車に押し込められた。
そして、何故か?隣に殿下が座っている。
何処に向かっているのかしら?と思いつつ窓の外を眺める。
「もうすっかり秋も終わりに近づいたね」殿下が少し淋しそうな顔をする。
私は小さく頷くと、殿下の手が軽く、私の手に触れる。
え?
手を振り払うことも出来ず、そのままの状態が続く。
これ、どうしたらいい?
殿下の手は、私の小さな手をスッポリと覆い、逃れることが出来ない。
恥ずかしくて、顔を上げられずにいたら、
殿下の指先がゆっくり折られ、私の指に絡みつく。
もう、心臓が張り裂けそうなぐらいの、早さで飛び跳ねている。
頬が熱くなり、自分でも赤くなっているのがわかる。
「エレナ、見てご覧?」
繋いだ手とは反対の手で窓を指す。
その間も、繋がれた手は離されることはなかった。
私は耳まで真っ赤になる。
「可愛いね」
私の耳に殿下の薄くピンクの唇が触れそうになり、ビクンと跳ねた。
シトラスとシガーの香りが入り混じった色香に眩み、頭の中が白くなる。
殿下の吐息が耳にかかる……
もう、心臓の音が大き過ぎて殿下の声さえ、聞き取れないほどだ。
ダメ…もう無理…
死んでしまいます…
そして馬車がゆっくり止まる。
そこには、綺麗に手入れされた小庭に、白く小さな建物。
建物の上部には大きな窓があった。
そして屋根には十字のしるし。
そこは教会だった。
殿下にエスコートされて馬車を降りると、そのまま手を絡め繋いだまま、中へと案内される。
厳かな祭壇が鎮座し、窓から光を浴びた女神像が、より神々しく輝いていた。
前の世界では、あまり教会の中に入る機会がなく、実は結婚式の時以来だ。
あの、悪夢の始まりの結婚式…
ステンドグラスを見上げると、殿下が突然跪き
真剣な眼差しで手を差し出す。
「エレナ、私と一緒にこの国を支えて行ってくれないだろうか?」
「この先ずっと、君と一緒に歩んで行きたい」
「君を守る役目を僕に赦して欲しい」
え?
え?これって……
私が、固まっていると、
次の瞬間、いつもと変わらない優しい目で私を見て、
「答えは今直ぐじゃなくて構わない。僕は何年でも待つよ」
微笑みながら、そっと私の手にキスを落とした。
「面白ければブックマーク、評価をして頂けると作者は泣いて喜びます。よろしくお願いします」




