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27 乙女の憂鬱

「いっぱい寝たからスッキリしたわ」

 エレナはベッドから起き上がる。


 タイミング良く、ルーシーが部屋に入って来る。

「お嬢様、お身体の方は、もうよろしいんですか?」心配そうな顔で言う。

「もうすっかり良くなったわ。心配掛けてごめんなさいね」謝るとルーシーは破顔する。


 明日は、いよいよ 『トレ・ゾール』 のオープンだ!


 しっかりしなきゃ!と自分の頬を軽く叩く。



 朝食を終え直ぐに店に向かい、備品や商品の最終チェックを行う。


 朝の朝礼を行い、ご近所さんに、チラシを持ってご挨拶に行く。

 チラシの下方部に、粗品プレゼントの券を付けた。先着100名様にした。

 これも前の世界の知識だ。


 やるとなったら遠慮せず、近代文明の恩恵を使いまくる。


 宣伝を兼ねて数日前より、制服姿のスタッフに店先を掃除してもらい、その後は大きな声で「接客5大用語」を並んで唱和する。


 朝から店先に若い娘達が横一列に並んで「いらっしゃいませー」「ありがとうございましたー」と大きな声で、頭を下げる光景は、この辺では最近ちょっと有名になりつつある。

 近所の大人達からは「頑張れよー」「開店が楽しみだわ」と応援され、子供達は、麗しき娘達が一斉に大きな声でお辞儀をする姿を見て、真似する子もいる。



 開店を祝う花々が、続々と届いて来ている。


 その中に、キラキラ王子様からの、花もあった。


 それを見て、温かくなったことにレオナは不思議に思う。


「殿下、お元気かしら?」無意識に呟いていた。



 驚いたことに国王陛下夫妻より花が届いたのだ。


 これには、みんなビックリだ。急遽、屋敷から花台を持って来てそこに置いた。


 でも殿下のはこのままで良かったのかしら?と、心配する。その他大勢の中に混ざって置かれていたのだ。


 そっと、取り出し、店内の目立つ所へ移動させる。


 店内の品物を見て歩きながら「これ殿下に似合いそうだわ」と、革製の小銭入れを手にとる。

 イニッシャルを彫って、殿下の意匠の鷲を型押ししたら、きっと素敵だわ。


 ちなみに、殿下の近衛騎士団は、通称「ホワイト・イーグル」と呼ばれ、白い鷲に剣を2本交差させた意匠だ。その中でも特殊部隊は「ゴールデン・イーグル」と呼ばれ、金の意匠を身につけている。ゴールデン・イーグルの隊長がヘンリー様である。


 ハッ!何考えてるんでしょう!殿下がこんな安物お使いになるわけがないじゃない……

 100円の小銭入れなんて!と、思い直し、つい元パート独女の庶民感覚を恥るのであった。




 でも、今まで1年以上毎日のように、お菓子を贈り続けてくれて、開店記念に感謝の気持ちで、お贈りするぐらいなら?ご迷惑にならないのでは?

 何て自然に考えている自分の変化に気づかないのだった。



 贈り物はあの日以来、未だに定期的に贈られている。この店に顔を出すようになってからは、お菓子が余りつつあり勿体ないので控えて頂くようにやんわりお伝えして、最近はお菓子ではなく、お花であったり、流行りの本であったり、上等なレースのハンカチであったりと、贈り物攻撃は続行中だ。


 頻度は前に比べて減ってきたものの、それでも10日に1回程度は贈られ来ていた。




 頻度を減らすようにお願いした際の殿下の淋しそうな、お顔は今でも覚えている。

 なんとなく、独女を隠している罪悪感とは違った、申し訳ない切ない気持ちになったのを覚えている…



 その後も、店内を歩き回り商品をチェックする度に、殿下やホワイト・イーグルからの寄付された、大量の「空の酒瓶」を無意識のうちに見ている自分に気づかないエレナだった。




 何だか、胸の辺りがムカムカ?いや、胃が重い感じがするわ……

 お昼ご飯食べ過ぎちゃったかしら?


 胃の腑に効くお薬、まだ屋敷にあったかしら?明日は大事な日!

 早く帰ってお薬飲んで、今日は早めに寝ないとダメね……



 頬を赤く染めた一人の少女が、消え入るように呟いた。















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