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レーア様がヴァイツェン様の所に行った日から二日、また朝準備して、今度はハサカの森に向かう。
今までと同じように『加護』を行い、昼食をいただくために場所を借り、座って食べてゆっくりした後、レーツェルはハサカの森の精霊主に尋ねた。
「あなたたち以外の精霊主は来ないけど、こちらから呼ばれてもないのに勝手に行ってもいいものなのかしら?」
最初のシリスから始まりタカス、キチャ、ミナチ、ハサカの森と『加護』をしてきたが、他の森はどうすればいいんだろう?という疑問を投げかけてみた。すると、ハサカの森の精霊主が
『おふたりのいきたい所へ。お好きな時に。順番は気にしませんので』
「それでいいの?王国内の森全てに行けばいいのよね?」
『はい。よろしくお願いいたします』
アルフォンスが
「帰ったら大きめの地図を準備して行った所に印と日付と書き込まないと」
ダメだね、と苦笑している。
「そうですね。是非そうしましょう」
片付けながら帰る準備をしていると、もう恒例行事と化した森の動物達が寄ってきて木の実を持たせてくれた。
皆にありがとう、と伝え、『竜化』し、アルフォンスを背に乗せて、離れに向かって飛び立つ。
離れに戻って『竜化』を解いてもらってレミリアにリュックを渡してリビングに入る。
ふう、と一息ついてるとアルフォンスが
「レーツェル、おいで」
と椅子に座るよう促される。
なんの疑いもなく言われた通りに座るとまず回復魔法をかけ始めた。
アルフォンスの暖かい気が流れてくるのがわかる。
エルゼが二人の前のテーブルにお茶とお菓子を置いていく。ありがたくいただく。
そういえば、とアルフォンスが話し出す。
「陛下が呼び出したストリア子爵の事だけど」
気にはなっていた。エルゼとレミリアもふりむいて聞いている。
「自分に良い事かと思って喜々としてやって来たらしいけど、何故今までレーア嬢の力を黙っていたのかと聞かれ、顔面蒼白になってしどろもどろになったらしい」
なぜそこで良い事だと思って来たのかも不思議な所だが。
「さらに追い撃ちで18歳を50歳近い男に嫁がせるのは何故か、と問い詰めたらしい」
理由は?と。
「まあ答えられるわけがないよね。イーヴォいわく、陛下の追い詰め方はすごかったと」
それはそれは。普段身内相手だと結構飄々とした軽い感じだが、やっぱり『国王陛下』である。
「で、レーア嬢の魔道士部門入門と家を出ること、婚姻の白紙等、諸々認めさせたらしいから」
認めざるをえないですよね……。
「良かったです。これで心置きなく安心して過ごせますね。レーア様には?」
「すぐさま伝えてるらしいから大丈夫だ。まあヴァイツェンの家にいる限りは連れ戻そうとしても手は出せないから大丈夫だろう」
そうですね、あの家も中々のものですからね。
「昨日から少しずつ訓練的なものを始めたらしい。ヴァイツェンいわくやはりスジがいいから一ヶ月もしないうちにこちらに合流するかもしれない、との事だ。来たらまた会いに行こうか?」
「はい、是非行きたいです」
アルフォンスがにっこり笑って頭を撫でてきた。
あと、とアルフォンスが続ける。
「明日、レーツェル、予定ある?」
「いえ、何も」
元々予定などそんなにないし、今はアレクシア様もユーリア様もお茶会を開くことを控えているので、警護の依頼もない。
私自身へのお茶会のお誘いも沢山来ているらしいが、前回の事とやはり今は『加護』のお仕事を優先させたいので今暫くは行かなくてもいいらしい。
とても助かるのは秘密である。
「なら、次の『加護』に行く前に街に行こうかと思って」
街に行く。その約束を忘れずに覚えててくれたんだ!
「い、行きたいです。」
アルフォンスがにっこり微笑んで
「良かった。約束から日が経ってしまってたし、なんやかんやあってバタバタとした日が続いていたからね。じゃあ明日、行こう」
「はい、よろしくお願いいたします」
エルゼとレミリアに
「と、言うわけで明日昼食はいらないから。街で適当に食べるよ」
「はい、了解いたしました。そのように料理長にも伝えておきますね」
「街で食べてもいいんですか?アル、毒見とか」
いいんですか?と聞くと
「まあ大丈夫でしょ。私はそれなりに毒に対しては訓練してるから。レーツェルもでしょ?」
「はい大丈夫だと思います」
ならいいでしょ、と軽く言う。
確かにルカリスティア公爵邸にいる間に訓練して耐性はそれなりについている。よっぽどじゃない限りは平気だ。
「いくつかレーツェルを連れて行きたい所があるから。あと行ってみたい所ある?エルゼとレミリアのお勧めのお店は行こうかと思ってるけど」
「アルにお任せします。どんな所でどんなお店があるかもわからないので」
「途中で気になるお店とかあったら遠慮なく行ってね。明日は丸々一日休みにしてあるから」
と、にっこり笑って私の頭を撫でながら言ってきた。思わず
「大丈夫なんですか?」
と、叫んでしまった。
「大丈夫。ちょっと何軒か仕事も兼ねたお店いくけど許してね」
「あ、はい、大丈夫です」
「じゃあ今日はゆっくり休んで早めにおやすみしないとね」
「そうですね。アルはこれから?」
「ちょっとだけ仕事してくる。あと地図の準備も」
「よろしくお願いいたします。私はここにいますね」
「そうだね、よろしくね」
とレーツェルのおでこにキスをして、立ち上がって、行ってきます、とさわやかに王宮のほうに向かって行く。
街に行ける。『竜化』して街の上空を飛んでいく時に目には入ってくるが、歩いていくのは初めてだ。
「楽しみですね。アルフォンス様もとても嬉しそうですし」
エルゼが声をかけてくる。
「とても楽しみ。人多いかしら」
「アルフォンス様とレーツェル様ってわかったら凄いことになりそうですね。魔法かけるんですかね?」
レミリアが聞いてくる。
「イーヴォ様はそのままで行ってくれば、って言ってたけど、ダメかしら」
「まあ人集りになってもアルフォンス様がどうとでもできるでしょうし、レーツェル様もつけていけますよね短剣」
「つけてはいくつもり。普通のお出かけ着よね?」
エルゼとレミリアがジッとこちらを見る。
「……レミリア、どう思う?」
「ここは私達の腕の見せどころかと」
「そうよね」
何やら不穏な空気が流れる。
「な、何?二人共。どうしたの?」
「いえ、何でもありません。レーツェル様はゆっくり読書でも」
「そうですね、ゆっくり休んでてくださいね」
有無を言わさない二人の微笑みがある意味怖い。
「は、はい…じゃあ部屋にいるわね…」
レーツェルが自分の部屋に戻って本を読み始めると、隣の衣装部屋からあーでもない、こーでもない、とエルゼとレミリアの声がアルフォンスが帰ってくるまで聞こえていたのは聞かなかった事にしようと思ったレーツェルであった………。
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