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「……あ、あの、私…」
レーア様が目を見開いたまま固まっている。指先も炎を放った時のままで。
「これはこれは予想以上だ」
とヴァイツェン様が言っている。こころなしかとても嬉しそうに見える。
「凄いな、その子の力か」
アルフォンスも同意している。オスカー様達は呆然としている。
「凄いですね、レーア様」
と私が声をかけるとやっと動き出した。
「あ、あの!私の力なんですか?今の……」
「もちろん。君とその子の力だね。これは…2×2の4倍の更に×10ってくらいかな」
ヴァイツェン様が推測する。
「それぐらいですね」
アルフォンスも肯定している。
×10ってことは40倍か。部隊長のビット様で五人だから25倍なので、かなりのものだろう。っていうか、他にはいないレベルでは?
「これは…私の部隊長の座も危ないんじゃないですかね」
とオスカー様が笑いながら言う。
「いや、俺もでしょ。ってか他の色の子の分も10倍になるんだったら、すごくない?」
ビット様も興奮している。
「あ、あの的、壊しちゃったんですけど、弁償とかって…」
レーア様が心配そうに問いかける。アルフォンスが
「ああ、全然気にしなくていいよ。備品だし」
「でも」
「大丈夫。そういう予算はちゃんとあるから。でもレーア嬢用のは防御力上げないとだめだね」
「そうだね。我が家で練習する分は私が施すよ。こちらの分はアル、頼むね」
ヴァイツェン様がアルフォンスに頼んでいる。
「わかりました。材質も変えようか」
と話していると誰かまた近づいてきた。今度は赤い髪の女性だ。
「先ほどのはなんですか?殿下」
「ああカリーナ。あとでそっちにも行こうと思ってたんだが」
先に紹介しておくね、と
「第二部隊長のカリーナだ。カリーナ、今日から魔道士部門に入門したレーア嬢だ。しばらくヴァイツェンの元で訓練する。こっちにきたらよろしく頼む。第三に入ることになるとは思うが。でレーツェルはわかるよね。初めましてかな?」
「第二部隊長のカリーナと申します。よろしくお願いいたします」
「こ、こちらこそ、レーア・ストリアと申します。よろしくお願いいたします」
レーア様が頭を下げる。続けて私も挨拶する。
「初めまして、カリーナ様。レーツェル・シュヴァルツと申します。これから先関わることも多いかと思います。よろしくお願いいたします」
「カリーナも視える人だから」
とアルフォンスが付け加えてくる。
第二と言うことは回復系の方か。確かに緑の子が四人ついている。しかし見た目は、と思っているとヴァイツェン様が
「見た目は第一に見えるけどね」
「よく言われます」
とクスッと笑っている。続けて
「先ほどのはレーツェル様?レーア様?ですか」
「レーア嬢だ。その虹色の子の力だ」
アルフォンスが説明する。
「あら本当。珍しいっていうか初めて見る色の子ですね。レーア様の子ですか?」
「生まれた時から一緒にいるから守護精霊だね」
「羨ましいです、凄い愛されてますもんね」
と、カリーナ様がおっしゃるとレーア様が
「愛されて…」
「ええ。愛されてって表現で合ってるかはわからないんですけど、その子がレーア様の事とても大好きな事はわかります」
「だよね」
とヴァイツェン様も同調する。するとレーア様から突然涙が溢れ出した。
皆がえ?と驚いて、あらあらとなっていると
「す、すみません、こんな風に話しが出来る日が来るなんて信じられなくて……」
涙を拭っている。
「今までこの子達の事、隠さなきゃって……。見つからないようにって……」
ずっとそうやって、と。
するとカリーナ様が、そっとレーア様に抱きつき
「もう大丈夫ですからね。隠す必要なんてありませんから。むしろ皆に魅せつけてくださいな。のびのびと、自由に」
ね?と持っていたハンカチでレーア様の涙をふいている。
「どうせ、なんて言ったらなんですが、お貴族様の世間体の犠牲でしょう?全く。そのせいでレーア様みたいな方がいらっしゃると思うと腹が立ちますわ」
……見た目通りかもしれない。
「まあまあカリーナ落ち着いて」
ライラ様がいなす。
「ああすみません。レーア様、こちらにいらした際はぜひ第二にも来てくださいね。魔道士部門全体でも、何ですが女子、少ないんですよ。仲良くしていただけると嬉しいです」
「こ、こちらこそよろしくお願いいたします」
「よし、じゃあ今日の所はこれで失礼しようか。レーア嬢、我が家に帰ろうか」
「あ、はい」
テオが持っていたレーア様のカバンを渡してもらう。アルフォンスが
「じゃあしばらくはヴァイツェンとライラに教えて貰ってね。何かあったら言ってね。その子に伝言頼んでもいいからね」
と虹色の子を指指す。
「あと、オスカー」
アルフォンスがオスカー様を呼ぶ。
「はい、何か?」
「的の予算、申請しておいてくれる?材質強化するから多めに」
「え、また私ですか?」
「だって一番頼みやすいし。皆怖がって申請しづらそうだから、ね?」
「私だって怖いですよ〜まあ今回のは理由がちゃんとあるから大丈夫かな」
?な顔を自分とレーア様がしていると、アルフォンスが
「予算の申請先の会計部門のトップが皆、怖くてね」
とクスッと笑って言ってくる。
会計部門のトップって誰だったっけ?と考えていると、オスカー様が
「見た目はそんなに怖くないとは思うんですけどね〜兄さん」
あ、そうだ、ヴァイツェン様の長男のヴァルター様だ!
「レーア嬢には我が家にいる間に多分会うと思うからその時紹介するね。うちの長男のヴァルターを」
「魔道士ではないんですか?」
「そんなに魔力ないから、と自分で見切りをつけて文官の方の道に進んだんだ。今は王宮内の会計部門の仕事についてる」
「そんなに怖かったイメージはないんですが私」
とレーツェルがアルフォンスに問いかける。
「そうだね、普段はどちらかというと優しそうなイメージだね。まあ仕事の時だけだよね、あれは」
「なまじ魔力があるだけに、見透かすからな。嘘はつけない」
ヴァイツェン様も同意する。
「どういう事ですか?」
レーア様が尋ねる。アルフォンスが
「彼は魔力が父や母や弟ほどないから、という理由で文官になったんだけど、比べる相手が違ってるよね。魔道士でもやっていけるほどの力量はあるんだ。ただ彼についてる精霊がちょっと変わっていて、ある意味今の会計部門は適職とも言える」
「変わっている?」
「そう。彼の精霊は色が無いんだ」
今度会ったらみてごらん、と。
「そのことがどうして」
適職に?とレーツェルが思ったことを聞いてみた。すると、オスカー様が
「嘘を見破るんですよ。なんとなくらしいですが、ああこれは嘘ついてるな、ってのがわかるらしいです。透明の子の力でしょうね」
いろんな子がいるんだ!と驚きを隠せない。
「だから嘘の予算申請だったり、適当なものだったら、ことごとくはね返すらしいよ、申請書類を」
クックと笑いながらアルフォンスが説明してくれる。
「ついたあだ名が『鉄壁のヴァルター』です」
とオスカー様が言う。
まあ今回の申請は大丈夫でしょ、よろしくねオスカーとアルフォンスが声をかけて、魔道士部門の訓練場を後にする。
王宮の馬車止めまで来て、ヴァイツェン様、ライラ様、レーア様が乗り込んだ馬車を見送った。
「これで一安心です。ありがとうございました、アル」
「こちらこそありがとう。レーツェルのおかげでとても優秀な人材が埋もれずにすんだ」
「良かったです」
二人で微笑み合って離れに戻った。
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