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「……テオ達が接触したようだ」
アルフォンスが静かに告げる。
「テオと繋げます。陛下にも繋げますか?」
「ああ、頼む」
以前の夜会の時のようにテオの左眼とアルフォンスが繋がっているのだろう。
テオが見聞きしたことは全てアルフォンスに伝わる。
他の人は静かにその様子を見ている。
アルフォンスも陛下も険しい顔になっている。大丈夫だろうか。
しばらくすると二人共、ふぅと息を吐いた。どうやら終わったようだ。
「どうだ?」
ルカリスティア公爵が尋ねる。
「結論から言うと成功です。あとは記憶装置にきちんと残っていれば。まあ大丈夫だとは思います。父上達は時間あります?今テオがザシャと共に戻ってきますが、一緒に見ますか?」
アルフォンスが聞く。
「ああ私は大丈夫だ。アレクシアも大丈夫だな?」
アレクシア様が頷くのを確認して陛下が
「では帰ってくるまで待とうか。少し軽食を準備させよう」
とカールに指示を出している。確かにもう昼食の時間に近い。
しばらくすると部屋の隅の方にテーブルが準備され、軽食と飲み物が並べられていく。
「食べられる時に食べておいてね。カールもヨルクもエルゼも食べること。レーツェルは特にね」
なぜ?と思っていると
「この中で一番栄養とらなきゃならないのはレーツェルでしょ。言わなかったら食べるの忘れるでしょう?」
と陛下が言うと、アルフォンスが立ち上がって軽食が置いてあるテーブルに向かった。
お皿にいくつか盛り合わせて、果実水と一緒に持ってくる。
目の前にお皿が置かれて、アルフォンスがにっこりと
「王命です。ちゃんと食べてね」
「……はい、ありがとうございます」
持ってきてくれたサンドイッチに手を伸ばす。
「ほら、エルゼ達も。テオには悪いけど。戻ってきたら食べてもらおう」
食べ終わってしばらくするとアルフォンスが
「テオが戻ってきました。ザシャも一緒に入ってもらっていいですね?」
「ああ、大丈夫だ」
陛下が了承すると、カールが扉を開けに行く。
流石に侍従の服ではまずいので着替えていったテオがそのままの服装で入ってくる。
うん、野盗の皆様とあまり遜色ない格好ですね。そんな服持ってたんですね、と思っていたら続けてザシャとさらにもう一人入ってきた。
ん、と思ったがよくよく見ると昨日の10人の中にいた顔だ。ということはザシャの部下か。
「ただいま戻りました」
と、記録装置を机に置きながらテオが礼をする。
「そちらは?」
陛下がザシャの後ろの男を確認する。
「すまないが、俺の片腕だ。こいつにも話をしておかないと俺が動けない時があると困るからな。よろしく頼む。大丈夫だ、こいつも昨日の二人を見てるから絶対に手は出さない」
「わかった」
椅子に座って、皆で記録装置の画像を確認する。
確かにルージュナ侯爵本人だ。
本人がこういう交渉事に直に来るなんて、抜けてるのか、よっぽどの事なのか。
画像を見ていくと慌てているようにも見える。ザシャの誘導がうまいからか、男を通じて雇った事も言って認めているし、ザシャ達に口止め料としてお金を渡している所もきっちり写っている。ありがたい。
これで侯爵の罪については追求できるだろう。
「で、これが口止め料だな」
とザシャが机の上にドン、と袋を置いてきた。
「どうやらあの捕まえた男が殆ど全ての交渉事の担当だったみたいで、あいつが戻ってこないからかなり焦ってはいるみたいだった。ナントカ侯爵自体ははっきり言ってバカだな」
「確かに。その口止め料を見るとよくわかるよ」
と陛下が口にする。
何が?と思って袋をよくよく見ると、布にルージュナ侯爵家の家紋が入っている。
――――確かに、バカだ。
口止め料を払うのはまだわかるが、何故自分の家の家紋入りの袋を使うのか…見つかった時のことを考えてないのか………。
「とりあえず、助かった。これでうまく行くはずだ、ありがとう。この件に関しては私から報酬を出そう」
と、アルフォンスが言うと
「いらねえよ、これは昨日の取引分だ。もし次があったらよろしく頼む」
ザシャが言ってきた。
「その件なんですけど」
と、二人の会話に入り込む。
ん?とアルフォンスとザシャ、あと部下の方がレーツェルの方を見る。
「私に、との事なんですけど、今まで噂とかでも『赤髪のザシャ』に頼むのは難しく、中々コンタクトも取れないと聞いてきました。それなのに何で私と?」
本当に訳がわからなかったので、素直に聞いてみた。
ザシャは、あー、うーとか言いながら頭をかいたりして、言葉を考えていた。すると部下の方が
「単純に言ったら、黒の姫様に惚れたからですかね」
「!?」
部下の方の爆弾発言に部屋の中の全員が目を開く。
アルフォンスが特に警戒態勢に入る。
「おい、こら!シン、誤解招くような事言うな!」
どうやらこの部下はシンと言うらしい。
「ああ、言い方が少し。惚れたと言っても男女の好きではなくて、その戦闘の仕方というか、格好というか」
だから安心してください、とアルフォンスをなだめている。
「どういう事だ?」
とルカリスティア公爵が聞いてくる。
頭領の代わりに説明しますと、とシンと呼ばれた男が話し続ける
「元々俺達、仕事を引き受ける時に報酬もそうだけど、その雇い主の人柄みたいなもんを重視してまして。まあ今回のは失敗しましたが」
と、軽く言ってくる。
「で、昨日捕まってる時に見た黒の姫様の姿が皆忘れられないと言うか、とにかく男前すぎて」
全員惚れました、と。
「あ、大丈夫です。そちらの方とのこともわかってますし、男女の惚れたではなくて、とにかく皆、黒の姫様に仕えたいんです。役に立ちたい?と言うか難しいですね、言葉にすると」
部屋の中の全員が驚いているが、私が一番驚いている。
「これはこれは。本当に昨日のその場に私もいたかったな」
と、陛下が笑いながら言う。
「笑い事じゃないでしょう、レーツェル!」
アレクシア様の声が響く。
「はい!何でしょう、お義母様」
「昨日、何をしたの?」
………マズイ。かなりマズイのでは?
どう説明しようと思っているとアルフォンスが
「母上、昨日レーツェルは義姉上のために手を尽くしてくれただけです。そのおかげで今こうやって解決に向けて動いています。今度からは私が止めますので今回ばかりはお許しを」
「……絶対無茶させないわね?」
「はい」
「レーツェルも無茶しないと約束するわね?」
「はい!」
ふぅとアレクシア様は息を吐き
「今回はこれ以上追及しません。アルフォンスもそこの『赤髪のザシャ』もレーツェルに怪我させたらただじゃすまないことを覚えておきなさい」
「……はい」
流石アレクシア様、誰も勝てません……。
読んでいただきありがとうございます。
明日も更新いたします。
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