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「まあなんか悪いな、黒の姫さんよ」
と、ザシャが謝ってきた。
「いえ、大丈夫です。で、話戻しますが、本当に私でいいんですか?」
「ああ、皆の意見だ。なあシン?」
「はい。ここまで俺ら全員の意見が一致するのは初めてじゃないですかね」
と、にこやかに言ってくる。
「なら、是非お願いしたいのですけれども、一つ条件があります。それを聞いていただけるかになりますが」
何だ?と尋ねてきたので
「私と、とのことですが、私とアルフォンス、でお願いしたいのです」
「それは、その王子さんの命令も聞けってことか?」
王子さん、って聞き慣れないな、と思いつつ
「まあストレートに言えばそうなりますね。命令、する気もないのですが、もし何かお願いするとしたら、ですが、私からだけしか受け付けてもらえないのなら、まず伝わらないと思います」
「どういうことだ?」
ザシャが聞き返してくる。
「まず私が『竜化』している時に何か頼みたくても、喋れませんし、アルフォンス以外そばにいないので」
「………なるほど」
「あと、どんな方法でコンタクトを取るおつもりですか?」
ザシャは不思議そうに
「コンタクトの取り方って、知ってるもん同士だったら、魔法伝達だろ?今こうやって話して約束したら伝わるし」
やっぱりそれか。
「それが無理なのです」
「………は?どういう事だ?」
まあ、隠してることでもないし、言ってもかまわないだろう。アルフォンスの方を向くとわかってくれたのか頷いてくれた。
「私、魔力がないので魔法を使えないのです」
「は?」
「え?」
ザシャとシンの声が響く。まあそういう反応ですよね。
「だから魔法伝達できないのです」
「……嘘だろ?」
「……え?まったく?全然?少しぐらい…」
「まったく、全然。少しもないのです」
驚いて固まってる二人。
「え、でも今魔力持ってねーか?あるように見えるが。それに昨日のあれは?動けなかったぞ、あれ、魔法じゃないのか?」
「今見えてるのはアルフォンスの魔力です。分けてもらっているので。それと昨日のあれは魔法じゃないですよ」
自分自身の魔力は一切ないのです、と左耳を触りながら言ってみた。
「ですので貴方がたとコンタクトを取る時、魔法伝達でとなるとどうしてもアルフォンスを通す事になります。ですので、二人で、とお願いしたいのです」
さらにアルフォンスが説明する。
「二人で、とは言うが私はあくまで連絡係と思ってくれればいい。レーツェルの願いしか頼むつもりはないから」
ザシャは考えて
「そういうことなら仕方ないな。わかった、了承する。二人でだな。シンもいいな?」
隣でシンも頷いている。
「じゃあ魔法伝達でくるのは王子さんだけなんだな?姫さんからは来ない、と」
「はい、そうなります」
「じゃあ何かあったら遠慮なく伝えてくれ。姫さんの頼みは最優先にするからよ」
「ありがとうございます」
じゃあそういう事で、と去ろうとする二人を陛下が呼び止めた。
「ちょっと待ってくれ。持っていって欲しい物がある」
と、陛下がいつの間にか準備されていた袋をザシャに手渡した。
ズン、とかなり重い感じがする袋だ。
「これは……?」
「さっき持ってきた口止め料は証拠として貰っておくから。これはその代わり」
少しくらい金額違うのは許してくれ、と陛下が軽く言う。
「……っ待ってくれ!あれは取引だから金はいらねぇ」
ザシャは返そうとしてきた。
「じゃあ私個人からのお礼として貰ってくれないか?君たちのおかげで妻とレーツェルを襲った相手をきちんと処理できそうだし助かった」
「……妻?」
「そう、だからこれは本当に私的なお礼として受け取って欲しいんだ」
陛下の微笑みがある意味怖い。
ザシャとシンの動きが止まる。そして私の方を見る。
「……あの馬車の中にいたのって……」
「私と王妃様です」
その言葉を聞いてザシャは
「……そりゃあ死刑でもおかしくないわな……」
「……そうですね」
シンも同意する。
「すまないがこのことは内緒で頼む。まだ発表したくないこともあるのでね。その分の口止め料だと思ってくれ」
と有無を言わせない笑顔で袋を持たせてザシャとシンを送り出した。
最初のメンバーに戻り、陛下が話し出す。
「これで証拠はそろったし、あとは本人を追及するだけだな。処分についてはまかせてくれ」
「すぐ動きますか。様子見ますか?」
カイル様が尋ねる。
「すぐ動くつもりだ。逃げられても厄介だしな。カイル、ゲルト、兵士と騎士、そうだな、20人ずつ選抜してくれ」
「了解した」
「かしこまりました、では」
二人が部屋を出ていく。
「レーツェルもありがとう、うまい具合にアルフォンスも認めてもらえて助かった」
陛下が言うとルカリスティア公爵も頷いている。
「いえ、伝達できないのは本当のことですし、私だけじゃ決断できない事もありますから」
アルフォンスが頭もポンポンしてくる。良かった、あれで正解だったんだ。
いくつか確認するとルカリスティア公爵が
「じゃあ私達も一旦帰る。何かあったらいくらでも呼んでくれ」
「わかりました、気をつけて」
レーツェル、無理しないのよ、と抱きしめて釘を刺してからアレクシア様とルカリスティア公爵も退出していった。
部屋の中は三兄弟と各々の侍従、イーヴォ様と私とエルゼだけになった。
ずっと静かに聞いていたエルヴィン様が
「で、昨日レーツェルは何したの?母上もいなくなった事だし是非聞きたいな、ねぇ?」
とにっこり笑ってきた。
……この三兄弟の微笑みって何でこんなに似てるんだろう、この有無を言わさない感……。
「私も是非聞きたいな。あの『赤髪のザシャ』のメンバー全員を堕とすってすごいよね。エルゼも見てたんだよね?どうだった?」
話を振られたエルゼは、一旦私の方を見てきたが、断れるはずもなく、仕方ないのでOKサインを出す。自分で説明するのも難しいし恥ずかしい。
「では、お許しも出ましたので。後ろで見ていましたが、とにかく格好いいといいますか、一言でいうなら、敵にしたくない、ですね」
最初にザシャを追い詰め、仲間以外を見つけだし、男を一人横に出し、追い詰め、蹴りを入れ、剣を地面にブッ刺して、さらに追い詰め。
ベルンハルト陛下とエルヴィン様、イーヴォ様、カール、ヨルクの顔の動きが止まる。
エルゼの説明に固まっている。
一通り話が終わったところで、陛下が
「アル、本当の話?」
「嘘みたいですが本当です」
お見せしたかったですよ、と答える。
「微笑みも素晴らしく妖艶というか女神のようと言うか。あれは同性でも堕ちますね」
とエルゼが付け加える。
「……蹴りか。それは母上には聞かせられないな」
とクックと笑いながらエルヴィン様が言っている。
「そうですね。ここだけの話でお願いします」
アルフォンスも肯定する。
もう何も言わず静かにしています、はい。
「レーツェル、本当に身体は大丈夫?無理してないね?」
とベルンハルト陛下が確認してくる。
「あ、はい。あの程度でしたら全然。むしろ、いえ何でもないです」
また変な事を言ってしまいそうになったが遅かった。
「「「むしろ?」」」
そんな三兄弟、かぶらなくても……。
まあお義母様いないし、いいか。
「むしろ、夜会やお茶会に出るより楽ですし」
皆の視線を痛いほど感じた………。
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