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 飛んできた道筋をもう一度、今度は少し高い位置で飛んでいく。


 先程よりスピードを出せるのでかなり早く戻ってきた。

 兵士達が縛り上げた賊を一箇所に集めているのが目に入る。馬車も二台ともまだそこにある。


 黒竜がゆっくりと着陸態勢に入る。戻ってきた事に皆気づき、場所を空けてくれている。


 なるべく砂埃をあげないよう、静かにそっと着陸する。着くと黒竜は態勢を低くして、アルフォンスが降りやすいようにかがんでくれる。

 よっとアルフォンスが地上に降り立ち、黒竜を撫でつつポケットから小さくしたドレスを取り出し構える。


「レーツェル、戻ろうか」


 その言葉を聞いた黒竜は光り出し、輪郭が崩れる。と同時にアルフォンスが魔法を発動させ、レーツェルに戻る頃にはドレス姿に戻っている。


「ふぅ。ありがとうございます、アル」

「こちらこそありがとうレーツェル」

 とレーツェルのクラウンゾーンにキスしながら回復魔法を掛けてくる。


「アルフォンス!レーツェル!」

 アレクシア様が駆け寄ってくる。

「母上」

「お義母様」

「二人共大丈夫?ユーリアは?」

 心配そうに問いかけてくる。

「レーツェルも私も大丈夫です。義姉上は兄上に。あとは兄上と侍医に任せましょう」

「そうね。ここはもういいかしら?私も王宮に向かっても大丈夫?」

「そうですね、母上の方は大丈夫だと思います。ちょっと確認とってきます」

 とカイル様とゲルト様の方へ向かっていった。


「レーツェルもありがとう、助かったわ」

 アレクシア様がこちらを向いてくる。

「いえ、私ができるのはこれくらいですから」

「ユーリアも何ともなければいいんだけど。まだ本人も気づいていなかったみたいだしね」

「そうですね」

 そうだろう、もし気づいていたら妊娠初期の段階で馬車の振動はあまりよろしくないだろう。あとはとにかく無事を祈るだけである。

 

 アルフォンスが戻ってくる。

「母上の方の馬車は動かしても大丈夫です。なので王宮に移動して頂いても結構です。もしよろしければ義姉上の女官を乗せて行ってもらえませんか?」

「いいわよ。なら行くわね」

 と、馬車の方に向かって行った。ユーリア様付きの女官も移動してアレクシア様の乗ってきた馬車に移ってもらい、王宮方面へ走って行った。


 さて、残るは、と。


 アルフォンスと共に一箇所に集めてられている賊の元に歩いていく。

 カイル様とゲルト様もそこにいる。


 12人。いかにも野盗のような格好をしている。


「何かわかったのか?」

 アルフォンスがカイル様に尋ねる。

「いや、裕福そうな馬車だから襲ったと。中に誰が乗っていたかは知らないと言っている」


 まあ、野盗の常套文句ではある。雇われているなら尚更、雇い主がバレないようにそう言うだろう。


 この内の何人かは本当に雇われた何も知らない野盗だろう。まさかこの人数で襲ってやられるとは思ってもみなかったはず。

 

 王国軍の副総帥とレーツェルがいた事が彼らにとっては誤算だろう。

 

 ―――さて、どこから崩そうか。



 襲ってきた時にいなかったアルフォンスとゲルト様は彼らと戦ってないので、カイル様に聞いてみる。


「カイル様」

「ん?なんだいレーツェル」

「カイル様はどの人だと思ってます?」

 アルフォンスとゲルト様も静かに聞いている。

「……野盗の頭、というなら彼だろうね」

 と一人の男を指し示す。

「……ですよね。一致しました」

 

 踵を返してエルゼの元に向かう。

「エルゼ、私の剣を頂戴」

 エルゼが持っていてくれたレーツェルの剣を渡してくる。まだ少し血がついている。

 レーツェルは気にせずに手に取る。

「ありがとう。あと短剣(ナイフ)も一本貸してくれるかしら」

 エルゼは一瞬、眉が動いたが、スカートのある部分に手を入れて、足につけてあった短剣(ナイフ)を一本取り出しレーツェルに手渡した。


 右手に血のついた長剣、左手に短剣を持って男達の前に戻ってくる。


「……レーツェル、何をする気だ?」

 カイル様が尋ねてくる。


「……襲われた本人には知る権利がありますよね」

 なるべく穏やかに言ったつもりなのだが、そうは聞こえなかったらしい。


「……アルフォンス、止めなくていいのか?」

 カイル様がアルフォンスに聞いている。

「止められると思うか?」

「止められねーな、あれは」

 ゲルト様も同意する。


「ありがとうございます。ここからは私が勝手にやる事ですので」

 お気になさらずに、と皆に宣言する。


 

 ドレスを翻し、縛られまとめて座らされている12人の前に立つ。


 先程カイル様が指し示した男の顎辺りに長剣を突きだす。男は睨んできた。間違いなさそうだ。


「誰に命令されましたか?」

 レーツェルの声が低く響く。


「……こんなに男どもがいるのになんで女のあんたが尋問するんだ?女だったら答えるとでも思ってんのか?」

「まさか!本来なら彼らがするべき所を私が勝手にしているだけです。もう一度聞きます、誰に命令されましたか?」

 少しだけレーツェルの『気』が変わり始めた。男はその事に気づいたのか、答えてきた。


「………命令なんてされてない。何故俺に聞くんだ?」

「あなたがこの集団のボス、でしょう?」


 戦った際の動きや他の人との対話など色々な面から読み解くと彼がボスだ。カイル様とも一致したので間違いはない。

 

 下っ端を攻めても意味がない。どうせ知らされてないことの方が多い。時間の無駄だ。


「……言うと思うか?」

「そう簡単には」

 言わないでしょうね、と微笑んで言うと

「なら」

 男が何か言いかけた時、レーツェルが

「取引をしませんか?」

「取引?」

「はい」

 にっこり笑って返事をした。


「あまりこういう事に時間をかけたくありませんし、得意ではありませんので」

 と前置きしてから


「もし、あなたが知っていることを話してくださるのなら、私の権力を行使してあなたとあなたの仲間だけ、はお助けいたします。何もお話されないのであればまあ間違いなく皆様死刑になるかと」

 死刑、の言葉に12人全員がざわつく。


「……っな、なんで馬車襲ったくらいで死刑なんだよ!誰もヤッてねーだろ!」


 やはり、誰が乗っていたのかは知らないらしい。


「普通なら何年かの使役、でしょうね。普通、ならね。ただ私が誰かは分かってますか?」


 王妃の事は隠す。先程眼の前で『竜化』したのと、色で分かってはいるはずだ。


「……『竜』だろ?この前発表された」

「そうです。この国では『竜化』した人間は王族並みの扱いなんですよ。だからその人間が乗っていた馬車を襲ったと言う事はこの国の王族を襲ったと同じ事になります。それがどういうことかわかりますよね」


 突きつけた剣を微動だにせず、そう告げると顔色がどんどん悪くなるのがわかる。


「ですから間違いなくあなたがたは死刑でしょうね。そうだ!どうせ死刑になるのですからお話がないならこの場で私が手を下してもかまわないですよね」

 と、剣を持ち直し微笑むとボス以外の男達はヒッと声を出す。


「……言えば皆助けてくれるのか?本当に?」

「あなたの仲間、は助けます。それだけの権力は私にあると思ってます。アルフォンス様、カイル様、ゲルト様、この条件、よろしいですよね?」

 御三方に尋ねてみると頷きが帰ってきたので

「王国軍の総帥、副総帥がよいと言っているので大丈夫かと」


 ボスらしき男はしばらく考えてから、ふぅと一息吐き、



「何を言えばいい?」











読んでいただきありがとうございます。

明日も更新予定です。

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