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「―――――お茶会ですか?」


「そう。夜会より気楽でしょ。お酒(アルコール)も出ないし」


 アルフォンスと一緒にベルンハルト陛下の執務室のソファに座って説明を聞いている。



 昨日、陛下からちょっと来てほしいと言われて昼食の後、アルフォンスと共にやって来て座った途端、イーヴォ様が目の前に50通くらいの手紙の束を置いてきた。


 『竜』と『契約者』を発表してから王宮に届いた招待状らしい。

 直接ではなく陛下を通すこと、とお達しをしてあったらしく、こちらに届いている。


「一応、私とイーヴォ、ユーリアが目を通した。まあほぼ王都内の貴族からは来ていた。辺境の方からも来ていたがそこは追々。そのうちお願いするだろうからよろしくね」

「はい、それは大丈夫ですが」

 

 この量から選べと?それはかなり難しいのではないでしょうか。一体どの家を優先させればいいのか……。

 

「レーツェルが行きたいと思ってる家ある?あるなら優先させるけどないならこちらで決めるけど」

「ないです。というか全然わからないのでおまかせします」

 だよね、と陛下もクスッと笑いながら手紙を手に取る。パラパラっと差出人を見るが、名前は知っているが直にお会いした相手などいるはずもなく。


 ふと目に止まった名前がある。この名前って……。


「気づいた?」

 と、陛下が苦笑しながら3通取り出す。


「あの家名、ですよね?」

 

 ルージュナ侯爵家、レカヒト男爵家、ユピドア男爵家。


 お披露目前にレーツェルに『気』をあてられた令嬢方の家名である。


「……すごいですね、あれ、は無かったことになっているんでしょうか」

 と、思わず笑いながら言ってしまった。


「まあ、そこまで図太くないと貴族なんてやっていけないんだろうな」

 アルフォンスも笑っている。


「仕方ない、出さないわけにもいかないのだろうよ」

 陛下も楽しんでいるようだ。


「で、最初なんだけど、ここが一番いいかな、と思って」

 と一通の封筒を渡された。差出人を見る。


「リリエスタ公爵家、ですか?ここって……」

 陛下を見る。

「そう、ユーリアの実家」


 なるほど。王妃の実家なら誰も文句が出ないだろう。それに我が国の筆頭公爵家でもある。アルフォンスも


「そうですね。出なければならないなら一番良い選択かと思います」

「だよね、じゃあ決まりだな。返事は出しておくから。あ、あとレーツェルだけね、アルは行かないから」


「「え?」」


 二人同時に声が出る。


「だってお茶会だし。女性だけだよ。それにユーリアと母上も出るから」

「母上も?」

「そう。ユーリアとレーツェルで、と思ったら母上にも招待状送ってたらしく、行くってさ」


 王妃と前王妃が出席のお茶会って……かなりのものじゃないですか……?


「まああくまでユーリアにしたら実家に遊びに行くようなものだし、そんなに堅苦しく考えなくてもいいよ」

 いやいやそういうわけには。


「警備は?リリエスタ公爵家の者だけですか?」

 アルフォンスが尋ねる。

「いや、流石に無理だろうからこちらからも出す。レーツェルにもつけるから」

 え?私にも警備?と顔に出たのか

「当たり前でしょ、いくらレーツェルが強くたって、王弟の婚約者なんだから警護対象者です」

「は、はい」

 誰がつくんだろう。

「じゃあ一週間後ね。よろしく」

「一週間後ですか?」

「うん、あ、ドレスは心配しないでいいから」

「どういうことです?」

 アルフォンスが聞き返す。陛下が答える。


「レーツェル、前に母上からドレス貰っただろう?」

 何着か、と。

「はい、いただきました」

「その中にいいというまで着ないでっていう箱なかった?」

「あ、ありました」


 確かに一箱だけそう言われていた。


「それを着て欲しいらしいよ」


 はい?

「そういうことですか」

 アルフォンスが何かに気づいたみたいだ。

「何ですか?」

 

 アルフォンスがため息をつきつつ


「お揃いなんでしょう、三人で」

「え?」


 お揃い?ドレスが?


「多分、そうなんだろうね。現物を見てないから確定ではないけれども。まあレーツェル、母上に付き合ってあげて」

「は、はい」


「リリエスタ公爵家以降はまた追々決めていくね」

「よろしくお願いします」

「行きたい所あったら言ってくれていいからね」


 で、もう一つなんだけど、と別の手紙の束をイーヴォさまが持って来て前に置く。十通もないぐらいか。


「これは?」

「差出人見て知ってる家名ある?」


 パラパラっと見る。全部で八通だ。


「いえ、全然。知識として覚えてるだけで会ったり話したりしたことはないかと」

「だよね。中身も見てみて、全部似たような内容だけど。アルフォンスも」

 見て、と言われて二人で中身を見る。


 ―――――手が止まる。


「これって……」

 アルフォンスが陛下の方を見る。

「気分悪くなるよね。見せない方がいいかとも思ったんだけど万が一直接言ってきたら困るから」

「全部ですか、これ?」

「そうだね。自分の家だけと思って送ってきたか、どうかはわからないけど」


「レーツェル、大丈夫か?」

 アルフォンスが心配そうに覗き込んでいる。どうやら動きが止まっていたみたいだ。


「あ、はい、大丈夫です」

「ごめんね、全部違うはずだから」

 陛下が申し訳なさそうに言ってくる。


 

 ―――レーツェル・シュヴァルツ嬢は我が家の娘である―――――



 はい?一体どういう事?私が?ここの家の娘?しかも八軒全部?

 頭がクラクラしてくる。えーっとどういう話だ?


 アルフォンスが機嫌悪そうに言ってくる。

「これは全部、娘を捨てたと言うことを悪びれる様子もなく言ってきてる、と思ってよろしいですか?」

「そうだね。レーツェルの事を父上が森で見つけた拾い子と発表したからだろうけど、よりによってその事を利用しようなんてちょっと許せなくてね」

 陛下からも笑顔が消えている。


「そうですね。あまり許される事ではないですね」

 アルフォンスも全てに目を通している。


 どの手紙も十数年前、何らかの理由で手元におけず、手放してしまった娘ではないか?と。今思えば手放すべきではなかった、とか、もし許されるならば我が家の娘として籍を入れて嫁がせたい、やら、まあとにかく「今更」である。


 素性のわからない娘を取り込んで王族に繋がりを持ちたい貴族達の駆け引きなんだろう。それほどまでに王弟殿下との婚姻は貴族にとって魅力的なんだろうけど。


「ほんと、今更、なんだよね」

 陛下が呆れたように話す。


「前からレーツェルの事は公然の秘密みたいな感じで貴族達には知られていたんだよね。アルとの婚約と『竜化』を発表してからすり寄ってくるなんて、腹立たしいよね。じゃあ何で前から言ってこないの?って感じで」

「そうですね。もし万が一、この中に本当の親がいたとしても渡したくないですね、レーツェルには悪いけど」

 二人共かなりご立腹のようである。私のために怒ってくれているのだ。


「レーツェルはどうしたい?」

 陛下が聞いてくる。


「私はそうですね……」

 アルフォンスも覗き込んでくる。


「私の親はディートハルト様とアレクシア様ですし、今更本当の親と言われても、という感じです。ヘレーネもいますし」


 陛下とアルフォンスが笑う。

「レーツェルがそう思ってくれてて良かった」


「その手紙をよこした家はどう対処しようか?放っておいたら直接来かねないだろうし」

 アルフォンスが陛下に尋ねる。

「そうだね、どうしようか」

 と、考え始めたので、


「ではよろしければその家にはこう返事を書いていただけますか?」

 

 何?と皆の視線が集まる。


「十数年前、私を捨てた日と場所。なるべく詳しく。あと何故捨てたのか。捨てる時に何を思って置いてきたのか。自分で捨てたのではないのなら、誰にどうやって頼んだのか。それらを事細かに書いてもう一度手紙をください、と」


 本当に捨てた親なら全部書けるような事ばかりのはずだ。


 それを聞いた陛下もアルフォンスもイーヴォ様もポカーンとした顔をしたが、すぐ理解したのか、皆笑いだした。


「……っく、いい、それいいレーツェル。そうしよう」

 陛下が笑いながら返事する。

「流石レーツェル様、早速そうさせていただきます」

 イーヴォ様も頷いている。

「レーツェル、流石だね。頼もしいよ」

 アルフォンスが頭を撫でてくる。


「これで本当に返事が来て、何かしら一致するようなら考えようかね」

 陛下が手紙の束を手にとってイーヴォ様に渡す。

「そうですね。それからでいいと思います。では手配いたしますね」

 イーヴォ様が自分の執務用の机に戻る。


「じゃあそういうことで。一週間後よろしく頼むねレーツェル」

「はい」

 アレクシア様とユーリア様が一緒ならなんとかなるだろう。


 陛下の執務室を出て、二人でアルフォンスの執務室に向かった。






ご覧いただきありがとうございます。

明日も更新いたします。

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