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 しばらく午後から図書館通いの日が続き、気がつけば明日からレミリアが離れに住み込み始める。

 

 夜会まであと一週間だ。


 ドレスも仕上がって、アレクシア様に頂いた紫水晶の裸石も加工し終わったらしい。


 アルフォンスに紫水晶を何にしたいか聞かれたけれども、私には知識もセンスもないので全ておまかせにした。


「本当にいいの?私が決めて」

「はい、お願いいたします。アルなら私に一番似合うようにしてくれるでしょう?」

 と、言うとまかせといて!とすぐさまお店に連絡して注文を出したと言う。



 今日も午前中離れで庭の手入れと片付けなどをし、昼食をとってから図書館に向かっている。

 ここ数日間、同じ様に行動している。

 

 図書館最奥区の本もかなり読むことができ、色々なことがわかってきた。


 やはり自分の意思だけでは『竜化』できなさそうな事、『契約者』の意識があり、意思があることなど。


 初めて『竜化』する時にどういう条件でなれるのかはその都度なった条件が違うので、これ、といった確定条件はわかってはいない。


 確かに『契約者』がいないと『竜化』が解けないなら、いない所でなるとずっと竜のままという事になる。そうなると身体に負担がかかり、肉体的にも精神的にも大変な事になる。


 以前に『竜化』した者が何かの理由で『契約者』と契約を結べすに暴走した、と書き記された文書もあった。

 契約できないという事は人に戻れないということであり、それは想像難くない。


 自分はその点有り難かったし、助かったと思っている。

 まだまだわからないことだらけだが、お披露目が終わり堂々と『竜化』できるようになったら色々試していけばいい、と思う。


 あと一週間、無事に終われば、だが。


 とか考えて王宮内を歩いていると、本来ならいつも人通りがない場所で、あまり似つかわしくない格好の男が三人、歩いてきてレーツェルの周りを囲んだ。


 ―――やはり、この場所か。



 後ろに一人、前に二人。


「静かにしろ。大人しくしていれば痛いことはしない」


 後ろの一人が首元に短剣を突きつけるように見せてきた。



 ―――やっぱり来た。あと一週間、とうとう武力行使できたか。

 とりあえずアルフォンスの近くにいる私が邪魔な方々はまだまだいるわけで、あの事件以来誰も来ないし終わったかなとおもいつつも、とりあえず仕掛けてみたらものの見事に釣られてきてくださいましたね。


 一人で毎日同じ道を通り、時間もほぼ一緒、そしてその中でも一番人目がなく、襲いやすい場所。


 定石セオリー通りすぎませんか?

 


「動くなよ、手荒な真似はしたくないが、反抗したら傷つけてもかまわないんだからな」

 と短剣を首にあてる。チクッとしたので血が出たかも知れない。


 何も用意せずに釣ってる訳ではないのだが。まあ一つ試してみたいこともあるしのってみるか。


「………アルに伝えて……」


 誰にも聞こえないくらいの本当に小さい声で囁いてみた。


――――さあ、どのくらいの速さで伝わるのか。


 後はこっちをどうするか。下ろしている左手をスカートのヒダに忍びこませる。


「私になんの御用でしょうか?」

「とにかく大人しくついてきてくれればそれでいい」

「どこかに連れていかれる?」

「とりあえず連れてこい、との命令だ。無傷でとは聞いてないからな」

 と、ニヤけた笑いだ。気持ち悪い。


「いやだ、と言ったら?」

 そんなことを言われると思ってなかったのか、一瞬、動きが固まった。だがすぐ持ち直して

「なら、仕方ない、ちょっと痛い目みてもらおうか」

と、前にいた男がレーツェルの腹部めがけて拳を繰り出してきた。

 鳩尾に決まると思っていた後ろの男ともうひとりの男はレーツェルがうめき声を出しで倒れると思った。


 しかし聞こえたのは拳を繰り出した男の声だった。


「ぎゃあ!」


 となんとも言えない変な声をだし、右拳を押さえている。


 血が滴り落ちている。かなりの出血だ。レーツェルがドレスの間から取り出した短剣で刺したのだ。

 

「「な!」」

 二人が同時に驚いた声を上げる。

 動きが止まった瞬間をレーツェルが見逃す訳がない。

 まだその男の血がついている短剣を後ろからレーツェルの首元にのばされている腕に向かって思いっきり斬りつける。手加減などしない。


「ぎゃあああ!」


 後ろの男は叫び声を上げて、持っていた短剣を手放す。

 さらにレーツェルは後ろの男の鳩尾に向かって肘打ちを繰り出す。

 見事に決まり、膝から崩れ落ちる。


 前にいたもう一人の男は二人を置いて走り出した。


 レーツェルは先程男が手放し落ちていた短剣を拾い、自分の短剣と二本、逃げる男の背に向かい投げる。

 肩と足に命中させる。ぎゃ!とこれまた変な声を出し、動きが止まる。


 最初の手を刺された男が気を取り直して長剣を腰から取り出して構えてきた。


「このっ!大人しくしてればいいものを…容赦しねぇぞ!」

 と、叫びながらレーツェルに向かってきた。


 さて、どうしようか、スカートの中からもう一本短剣を取り出し構えた。レーツェルまであと数歩の所で男がうげっ!とこれまた変な声を出して倒れた。

 背中に短剣が三本ほど刺さっている。


「大丈夫ですか、レーツェル様」

 テオだ。


「テオ様」

 お怪我はありませんか?と近くにやって来る。どうやら短剣3本は彼のようだ。さらに走ってくる音がする。


「レーツェル、無事か?」

 アルフォンスと騎士達何人かが駆けてくる。

「大丈夫です。早かったですね、ちゃんと伝えてくれたようですね」

「ああ、これが風の速さかってくらいに何人もの精霊が飛んできた。きちんと場所も人数も伝わったぞ」

「凄いですね、ありがとうみんな!助かりました」

 と、私には見えないけども周りにいてくれるのはわかるのでお礼を言う。


「たまたまテオを使いに出していて、そっちの方がレーツェルに近かったから魔力伝達して走らせたんだ」

 だからアルより速かったのか。


「いきなり走れ!ですからね。もうちょっと具体的に指示が欲しかった所ですが」

 まあ場所は思った通りの所でしたね、と。

 騎士達が三人を縛り上げている。とりあえずは命にかかわる怪我はさせてないはずだ。


「しかしやはりと言うかある意味期待通りというか」

「やり過ぎましたかね?」

 前、イーヴォ様に返り討ちにしていいって言われてたから手加減しませんでしたが……。

「まあ連れていってどこの手の者か吐かせるよ」

 大体検討はついてるけど、と言ってアルフォンスの動きが止まる。


 私の顔を見ている?ん、何かついてますか?


「……吐かせたら消してもいいかな、テオ」

「だめですよ、まだ」


 ?な顔をしているとアルフォンスがすぐ前までやってきて私の顎をクイッと上げる。首元を覗き込んでる。あ、あれか!


「………レーツェルに傷をつける輩は手加減しなくていいと思うんだ」

 ちょっと待って、多分ほんの数mmの傷ですよね?チクッとしただけですし、血も殆ど出てないと思うんですが。


 アルフォンスが傷に手を当てて何か唱える。少し光ってその部分が暖かく感じる。フッと光が消える。


「他に怪我は?痛むところは?」

「ないです、ないです。ここも痛みも殆どなかったくらいで」

「ならいいけど。この後は?図書館行く?」

 少し考えてから

「いえ、今日は止めておきます。ドレスに血もついてますし、離れに戻って着替えて大人しくしています」

 あとの事はお願いしてもよろしいですか?と尋ねるとアルフォンスは

「ああ、もちろん。分かったらまた教えるよ」

「アルもお忙しいのにすみません」

 大丈夫だと微笑まれ、頭を撫でられました。


「んじゃあ、ちょっと行ってくる。大人しくしててね。テオ、レーツェルを送っていってくれるか?」

「はい」

「いいですよ、テオ様も忙しいでしょうから」

「レーツェル様のことを差し置いてする仕事などございませんから。我が主を安心させると思ってお供させてくださいね」

 と、軽くウィンクされました。


「じゃあ頼んだぞ」

 とアルフォンスと騎士達が去っていき、

「では私達も行きましょうか」

 とテオが促す。



 奥庭まで来た所で

「明日から妹がお世話になります。何かありましたらすぐ連絡くださいね」

「こちらこそありがとうございます。レミリアに来て貰えるなんて心強いです」


「兄としてはかなり心配なのですが…」

 と、本当に不安そうな顔をしている。ちょっと微笑ましく思ってしまった。


「テオ様意外と心配性ですか?」

 ちょっと笑いながら聞いてみた。


「レミリアだからです。ああそれとレーツェル様、できれば私の事もテオ、と呼んでいただけませんか?様はいりません」

 え、でも、と思っていると

「レーツェル様は我が主の大切な方ですから。私の主でもございます。是非エルゼやレミリアのようにお願いいたします」

 と、頭を下げられました。


「……追々でいいですか?中々慣れなくて」

「はい、大丈夫です」

 よろしくお願いしますね、と離れまで送ってくれて、また王宮の方へ戻っていった。

 

 



本日で毎日投稿一ヶ月。これからも続けていけるようにがんばります。

評価、ブックマーク、是非よろしくお願いいたします。

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