表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/557

36


 夜会まで外出禁止になってしまったので、大人しく過ごしている。

 

 あの後アルフォンスの話によると、侵入者達は雇い主を吐いたらしいが(どのように吐かせたかは聞かないことにした)、相手に知らないと言われても困るし、それならばとちょっとした罠を仕掛けた。


 男の一人に催眠をかけ、雇い主の所に一度戻らせて、

「連れては来れなかったが、顔に深い傷を負わせた」

 と、報告させたのだ。もちろん男はこちらに戻らせて捕縛している。


 そのため顔に深い傷を負ったとなっているレーツェルは外出禁止となっている。まあ一週間だけなのでどうってことはないのだが。


 ちょうどレミリアも来てくれたので三人で彼女の荷物を片付けたり、案内したり、庭の手入れをしたりと大人しく静かに過ごしていた。


 一度この離れに様子を見るためにでも来たのか、男が一人来たが、何せここは無駄に強い二重結界で護られており、招かれざる客は一歩も入れない。

 弾かれ、アルフォンスに検知されるので私の姿は見ることはできないようになっている。


 さて、あとは夜会当日にどう出てくるかである。

何もなければそのまま見過ごしてもいいのだが。


「どうなるかしらね」

 と、手にしていた刺繍を一度置き、ふぅと溜息をつく。

「アルフォンス様が全てよくしてくれますよ」

 エルゼが答えるとレミリアも

「そうですよ、レーツェル様はアルフォンス様のために綺麗に磨きあげることだけを考えていればよろしいかと」

「そうよね、考えていても仕方ないか」

 と、刺繍の仕上げにかかった。




 ―――夜会当日の朝。


 本来なら離れで準備となるのだが、着替えてからの移動も危ないかもとのことで、朝の内に王宮内の王族居室区域に移動し、そちらの部屋を借りて準備となった。一応マントをかぶったりしてみる。


 エルゼとレミリアと共に移動し、朝から湯浴みやら髪の毛の手入れやらマッサージやらとにかくフルコースで磨き上げられた。

 世の中の貴族の女性達は夜会のたびにこれなのか、と少しグッたりしているとエルゼが

「訓練より疲れてません?」

 とクスクス笑って言った。

「………多分」

 正直に答えるとレミリアも笑っていた。

「レーツェル様は何もしなくてもお綺麗ですが、さらにお綺麗になってその美しさを見せつけてきてくださいね」

 買い被りすぎですよ、レミリア。


「髪はドレスを着たらアルフォンス様をお呼びしますので、先にこちらへ」

 と、隣室に案内される。


 仕上がったドレスを初めて見た。


「………これ…」

 動きが止まる。


「素晴らしいですね、さすがアルフォンス様ですわ」


 いやいや、普通デビュタントのドレスって白系だと聞いてましたが?この前の仮縫いの時のマーメイドラインも白でしたが?


 確かにマーメイドライン部分のドレスは白い。しかし胸元の刺繍は銀色、さらに裾の部分に入っている刺繍が紫色。

 濃い紫ではなく、薄い紫色なので凄い綺麗なのだが、紫。

 背中にはリボンが編込みされているのだが、このリボンも薄紫色。

 そして腰の辺りから全体的にオーガンジーのフワッとした布が巻きつけられており、ドレスの形の印象をかなり変えている。少女ぽい印象を受けるが、でも基本のマーメイドラインのおかげで大人っぽくも仕上がっている。

 そしてそのオーガンジーが紫。さすがアルフォンス。独占欲が強いと言うかなんと言うか……。

 

 でも確かにレーツェルに似合う形であり、色味である。


「まあ、流石の色、とも言えますけどね」

 と、エルゼが苦笑している。


 さあ、着替えましょうと、エルゼとレミリアが促す。 

 「……はい」


 二人に手伝ってもらい、気をつけながらドレスを着ていく。


「はい、出来ました」

 と、エルゼが確認をし、レミリアがアルフォンスを呼びに行く。


 しばらくするとノックの音が聞こえて、エルゼが招き入れるとアルフォンスが入ってくる。


 アルフォンスも今日の夜会の一人であるので正装である。

 黒地に銀色の刺繍を施した詰襟の軍服に近い上着で黒いパンツに黒い靴。

 普通の正装だと白いパンツのような気がするが、今回は全身黒い。

 手にマントがわりの長衣と手袋を持っているがそれも全て黒い。


 お互いに正装姿を見つめ合っていたが先に動いたのはアルフォンスだった。


「うん、似合ってる。綺麗だねレーツェル」

 と、最高級の微笑みで言われて、顔が赤くなるのがわかった。

「……アルも格好いいです…よ」

 なんとか振り絞って答える。さらに笑みが降ってくる。


「ありがとう。レーツェル、お誕生日おめでとう」

「あ、アルもお誕生日おめでとうございます」

 今日はアルフォンスの誕生日であり、彼の決めたレーツェルの誕生日でもある。


「さあレーツェルの仕上げに入ろうか」

 と、アルフォンスがレーツェルの髪の毛に手をかける。

 慣れた手つきで上の方を少し編み上げでいく。


「本当は髪の毛上げて背中のリボン見えるようにするつもりだったんだけど、母上からの紫水晶の加工が間に合ったからちょっと変更するね」


 ハーフアップの状態で、下の方は全て下ろしている。

 紫水晶を埋め込んだシルバーのアクセサリーが二つ、紫のリボンとレースで繋がっている。

 それを耳の上辺りに両側につけるとリボンとレースが後ろ側に綺麗にドレープを描く。


 そして大きめの紫水晶を埋め込んだネックレスを胸元につけてもらう。


「はい完了。どう?」

 鏡を覗き込む。

「……凄いです。ありがとうございます」

「流石ですね、アルフォンス様。お綺麗です、レーツェル様」

 エルゼも褒めてくれる。


 仕上がった所でノックが鳴る。レミリアが対応に行く。扉が開く音がする。


「できた?」

 と、ベルンハルト陛下とユーリア王妃が入ってきた。


「陛下…お義兄様、お義姉様」

 これまた正装のお二人が入ってきてレーツェルを見ると


「流石!うん、綺麗だよレーツェル!」

「うん、素晴らしいわ!悔しいけど流石ねアルフォンスは」

「あ、ありがとうございます」

「ごめんなさいね、本当なら広間で待っているものなんだけど、どうしても見たくって」

「よし、じゃあ行くね、広間で待ってるからね」

「よろしくお願いいたします」

「ほら、アルフォンスも行くよ」 

 陛下がアルフォンスに声をかける。

「やっぱり先に行かないとダメです?レーツェルをエスコートしたいのに」

「今回はお前も主役だ。とりあえず先に皆お前に生誕の祝いを言いにくる。お前がいないでどうする」

 

 そうなのだ。まずはアルフォンスの誕生祝いを皆、述べにくる。大体来たらその後に今日デビュタントの者達の入場となる。本日は私を入れて6人らしい。

 名前を呼ばれて入場し、陛下と王妃の前に行きお言葉を頂く。そしてダンスを一曲踊ることとなる。それが社交界デビューの流れである。

 入場時は普通、親か兄弟などにエスコートしてもらうものだが、私にはいないので陛下がイーヴォ様にお願いしていた。まあアルフォンスはあまり気に入らないみたいだが、こればかりは仕方ない。


「わかりました、行きますよ。レーツェル、エスコートは仕方なく譲るけどダンスは私とだからね!」

 と、念を押し長衣をはおり、手袋をはめ、陛下達と共に部屋を後にした。


 しばらくするとイーヴォ様がやってきて、声がかかったので広間に向う。

 陛下のはからいで私の入場は6人の中で一番最後になっている。


 もう皆広間に入っているのか、廊下には兵士や騎士以外見当たらない。


「緊張してますか?」

 とイーヴォ様が聞いてくる。

「してないと言ったら嘘になりますね」

 とクスっと笑って答えると

「では、その緊張をほぐして差し上げましょう」

 と広間近くの部屋に案内された。

 

 あれ?広間へは?と思って部屋に入ると見知った顔の二人が待っていた――――

 


本日も更新できました。明日もがんばります。

よろしければ評価、ブックマークお願いいたします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ