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部隊長達とカイル様と対戦している間に回復したのか、アルフォンスと帰ろうとした時にアメリ様がこちらに向かってくるのが見えた。
近づいてきて、目の前まで来て止まった。そしてスッと頭を下げてきた。下げたまま
「ありがとうございました」
と、綺麗なよく通る声が響いた。
アルフォンスと二人、ちょっとびっくりしたが、
「顔をあげてもらえますか?」
と声を掛けると、ゆっくり頭を上げた。目線が合う。
「身体は大丈夫ですか?無理してませんか?」
と問いかけると
「はい、大丈夫です。ご心配おかけして申し訳ありません」
まだちょっと強張った表情のままでそう言った。
「私の方が年下で身分もありませんので、敬語は辞めてください、もしよろしければ気楽に話していただけると嬉しいのですが」
「……よろしいのですか?」
「こちらの方こそ私なんかに敬語をつかわれてよろしいのですか?自分で言うのもなんですが、貴族の方や、それこそアメリ様のお家の方々にはちょっと」
良く思われていないと思うのですが、と。
「いえ、そんな事は……」
「大丈夫ですよ、慣れてますし、当たり前の反応ですから」
普通に話してくださる方のほうが少ないですから、と言うと、アメリ様は少し目線をはずし、考え、また目線を合わせて
「……私は、私を認めてくださったレーツェル様を信じますし、親や家など関係なくレーツェル様とお話しできたら、と思います。対等にではなく、私の方がレーツェル様に教えを請いたいのです」
そう言われて私とアルフォンスは目を見張った。
ああ、やはり会った時から感じていた、話を聞いた時との違和感は正しかったのだ。
話を聞いた時は彼女自身が高飛車で親の力を使い、王妃様にまで直談判をしたのかと思ったがそうではなく、彼女の力を使ってのし上がろうとした親が暴走した感じなのだろう。
彼女自身は不本意だったに違いない。そうでなくてはこんな短時間に変わるはずがない。
今日会った彼女が本当の姿であろう。
「そう言っていただけるととても嬉しいです。是非一度アメリ様とゆっくりお話をさせていただきたいと思いました、ねぇアルフォンス殿下?」
いきなり話を振られたアルフォンスだったが
「そうだな。アメリ嬢さえよければレーツェルの離れに一度ご招待したいね」
アルフォンスの許可が出たことを確認して
「アメリ様、もしよろしければお休みの時にでも私の離れに是非。人の目もありませんし、ゆっくりお話しできるかと思いますので」
とお誘いすると、目を輝かせて
「よろしいのですか?私なんかが伺っても」
「もちろんです。なんかではなく、アメリ様だからお誘いしているのです」
「…あ、ありがとうございます。是非都合をつけて伺わせていただきたいです!」
「では、私の方はほぼ空いてますので、アメリ様の都合の良い日が決まりましたら……そうですね、私に直接は難しいし、人の目もあるでしょうから…」
と、考えてカイル様の方を向くと目があった。
「カイル様にお伝えして、カイル様からアルフォンス殿下に伝えてもらうというのは大丈夫でしょうか?」
と確認を取るとカイル様が
「私は大丈夫だよ、アルフォンスもその方が安心するだろうしね」
と快諾してくれた。
「ではその流れで是非。アルフォンス殿下から私にはすぐ伝わりますので」
お待ちしております、と言うとアメリ様は頷いてくれた。
では、と挨拶して騎士達の間をアルフォンスと2人、王宮内に向かって歩いていく。
王宮内の廊下に入ってからアルフォンスが
「中々有意義な訓練だったね。久々にレーツェルの『本気』も見られたし」
将来有望な子も見つけられたかな?と。
「そうですね、あのまま伸びていかれると護衛的にはいい戦力になるのではないでしょうか?女子は貴重ですしね」
「もしワナズア家が口出ししてきたら言ってね、対処するから。アメリ嬢はあのまま騎士部門にいて欲しい所だね。」
そうですね、と会話していると向こうからやって来る人影が見えた。テオだ。
「アルフォンス様、レーツェル様、ちょうど良かった」
「どうした、何かあったか?」
予定はこの後何もなかったはずだが。
「レーツェル様のドレスの仮縫いが出来たとの事で、お店の方が持って上がっております。できたらとにかく一度持って来てくれと指示をだしたのはアルフォンス様でしょう?」
「ああ、もうできたのか、がんばってくれたみたいだな。ちょうどいい、レーツェル合わせてみてくれるか?」
私に拒否権はないですよね……。
三人でアルフォンスの執務室近くの部屋に向かう。
中に入ると、すでにドレスメーカーの三人が待ち構えていた。
「アルフォンス殿下、レーツェル様、この度は突然の訪問お許しください。少しでも早くと思ったものですから」
と、何度もお会いしたことのある、商会の女主人兼デザイナーのミシェ様だ。あとはお針子の二人。
「いや、かまわない。急がしたのはこっちだ、申し訳ない」
「レーツェル様も一緒なら是非一度袖を通していただいてサイズ感を確認したい所ですが、お見せしてもよろしいのですか?」
そういえばデザイン画も何も見てないし、内緒だったのでは?私来ても良かったのかしら?と思っているとアルフォンスが、
「ドレス本体の部分だけならいいよ、最終形は当日にね」
と、軽くウィンクされた。お針子さん達も了解しました、とではこちらをお借りして、と隣室に四人で移動した。
訓練後だし汚れてないかと確認すると、大丈夫とのことなので、着ていた騎士隊の服を脱いで仮止めされているドレスを着ていく。
「うん、流石の体型ですね。お綺麗ですわ羨ましい」
とミシェ様が褒めてくれた。
自分としてはもうちょっと胸が欲しい所ではあるが……。
アルフォンス様をお呼びしますね、とミシェ様が隣室に声を掛ける。
アルフォンスが入ってきてドレス姿のレーツェルを確認する。
「うん、大丈夫そうだね。レーツェル動ける?ダンス出来そう?」
確かに普通なら16歳のデビュタント時のドレスはフワッとした感じの物が多いとは思うのだが、今試着したドレスはマーメイドラインに近い。腰回りから膝上辺りまでかなり細く、大人っぽいデザインだ。レーツェルの身長と体型だからこそ着こなせる感じである。
少し動いてみるが、そんなに制限されることもなさそうでダンスは大丈夫そうだ。
「大丈夫だと思います。当日はまだ何かつくのですか?」
「それはお楽しみ。まあそれ以上の動きの制限はないと思うよ、ねぇミシェ夫人」
「はい、この感じなら大丈夫ですね。ではこのまま仕上げに入らさせていただきますね。当日が楽しみですわ」
ミシェ様とお針子二人がいくつか確認し、印をつけたりして、アルフォンス様と打ち合わせをし、では、当日に、と帰っていかれた。
そういえば夜会までもう一ヶ月ないのか、色々と忙しくなりそうだ、と考えていると、
「レーツェル、どうかした?」
アルフォンスが心配そうに覗き込んできた。
「っ大丈夫です!何でもありませんので」
慌てて否定すると、アルフォンスが手を引っ張ってソファに一緒に座らされた。手を握られたまま、
「レーツェル、何か不安だったり思ったことがあったらちゃんと言ってね。私はここ数日、嬉しくて浮かれていて、いつもと違っていても気づいていないかもしれない」
嬉しい?浮かれている?と聞き返すと
「当たり前じゃないか!これ以上ない程浮かれているよ!レーツェルと、婚約して、結婚できるんだよ?」
テオにどれだけ呆れられていると思う?と。
婚約、結婚……そうですよね、そうでしたね、と思い直した途端にボッと顔か赤く、熱くなるのがわかった。
アルフォンスが手を握り直してきて、
「夜会で発表して『竜化』のこともお披露目したら、二人での仕事も増える。『竜』と『契約者』としてこの国のための色々な公務や仕事だ。レーツェルに『竜』になってもらう回数も増えてくると思う」
目を合わせてアルフォンスの声を聞く。
「そのことによって、レーツェルの身体や心にどれだけの負担を与えるかわからない。だからちょっとでもおかしかったりひどかったらすぐに言ってくれ」
回復魔法でも何でもかけまくるからと。
「そんな魔力の無駄遣いしちゃだめですよ」
と笑って言うと
「無駄遣いな訳ないじゃないか、一番有意義な使い方だ!私の魔力はレーツェルのためにある!」
と、力説されました。
「ありがとうございます。大丈夫です、アルが隣にいてくれるだけで私は強くなれますから」
二人ならどんなことでも大丈夫でしょう?と微笑むと、アルフォンスも最高の微笑みで私の頰を両手でかかえて、おでこをくっつけて
「もちろんだ」
顔が近すぎて、クラクラする。アルフォンスが笑って、
「このままこの可愛らしい口唇にキスしたいけど、いい?」
――――?え?
さらに近づき、口唇が軽く触れる。
「ごめん、返事待てなかった。怒ってる?」
――――んー怒ってない、怒ってないけど。
どうしよう、顔が真っ赤で熱くて動きが止まる。
頰を両手でかかえたまま、アルフォンスが
「ほら、レーツェル、『動いて』」
「んー無理で…す…」
治まるまでしばらくかかって、その後も離れに戻るまで、中々顔から赤みが引かなかったは言うまでもなかった。
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