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15


 4人で離れに戻ると、さすがエルゼとテオ、すでに準備ができていた。


 庭からの光が入る大きい窓のリビングの椅子に4人が腰掛け、エルゼがお茶とお菓子を準備する。テオは入口近くに控えていた。


「さて、何を聞きたいのかな?」


 深い、けど優しい声で尋ねてくる。


「そうですね、まず父上はどこまでわかっていたか、を」


 公爵の目の色がスッと深くなったような気がした。


「……どこまで、とは?何のことをだ?」


「レーツェルの事です。もしかして最初からわかってて連れてこられた?」


 私のこと?最初からって?


「……何故、そう思った?」


「なんとなくです。ただ竜化を解くために兄上にここに行けと言われ、そこの窓の造りを改めて見て、わかっていてレーツェルにこの離れを充てがったのではないかと」


「……」


 沈黙が続く。破ったのは公爵の溜息の音だった。


「……確定ではなかった。お前が竜化する可能性もあると思っていた。その場合でもお前はレーツェルを契約者にすると思っていたからちょうどいいと」


 話についていけない顔をしていると、アルフォンスがこちらを向いて説明をしてくれた。


「レーツェル、この離れはね竜化した者とその契約者の為にあるんだよ」


 え?そうなんですか?え?でも私、竜化する前からここに住まわせていただいてましたけど……?大丈夫だったんでしょうか?と思ったことがそのまま口から出ていた。


「こんな2階分ぶち抜いて窓も大きくて天井も高い部屋なんて普通に住むには意味がない造りだ。でも竜化した者にとっては竜の姿のまま入ってこれて、人目につかずに解除できる」


 助かるだろう?と問われ確かに戻ったあと服をきていないので誰も見てない場所で戻れるのは非常に助かる。


「父上はレーツェルが竜化すると知ってましたね?」



「……9割方くらいか。あとの1割はお前かもしれないと」

 思っていたよ、と。9割ってかなりの確率の高さですよね?そんなに?何故?どうして、私が?


 知っている者は少ないし、レーツェルにはキツい話になるかもしれないがいいか?と問われ私が頷くと公爵は話し出した。


「10年前のあの日の朝、侍従のマルクと2人で防護壁の点検も兼ねて馬駆けに行ったんだ。何故かあの日は森に行きたくなって、いつもとは違う道を駆けていたんだ」

 でも何度も行ったことのある道だったんだぞ、と。

「一瞬見たことのない道が現れて、フッと見るとそこにいろんな動物達がいてな、それこそ狼やら鹿やら熊やら。何故一緒にいるのか不思議に思っていたら、乗っていた馬が勝手に動いてな」

 そちらの方に連れて行かれたんだ、と。


「しばらくその動物達を追いかけていくと洞窟が現れて、大きな狼に中に入れると促されたような感じがして、馬から降りて中に入ると、そこに少女が寝てたんだ」

 マルクと2人でびっくりして固まったよと。

「考えたけど連れて帰るしかないだろうと思って。抱き上げて馬に乗せると先ほどまでの動物達やどこからきたのかさらに増えた動物達に見送られてた。多分保護して欲しくて呼んだんじゃないかと思う」


 初めて聞く話に膝の上の手が強張っているのがわかった。


「森から出るまでそれこそ普段は感じない見えないようなフワフワしている光に誘導されているのがわかった。小動物や鳥達も森を出るまでついて来てくれていた。不思議な体験だったよ。多分あの光達は精霊だったんだろうね」


 瞬きもせずに話を聞いていたら、アルフォンスが膝の上の手を握ってくれた。すーっと力が抜けていった。


「帰ってきてからはアルフォンス、お前の知っている通りだ。ただあの動物達や精霊達の護り様からほぼ間違いなく大切な存在だと思ったから、手元に置いておきたくてアレクシアにも全てを話して協力してもらって王宮で保護したんだ。王妃の一言は効いただろう?」


 確かにあの時、アレクシア王妃が『私、娘も欲しかったのよ』と言ってなければ、どこかの孤児院か修道院で保護されていただろう。

 そうなれば今のようなこの状況にはまずなっていないし、竜化しても契約者を見つけられず暴走していたかもしれない。


「レーツェルを森の中で見つけた時、捨てられてすぐだと思った。じゃないとあんな獣だらけの森の中で子供が一人で生きていけるはずがない。だが連れ帰ってよくよく見ると着ていた布もボロボロだし、髪の毛も伸び放題のボサボサ。さらに言葉も喋れない、親の記憶もない」


 確かに5歳くらいで捨てられたなら少しくらい記憶があるはずだが、私には一切なかった。


「そこで思ったのが、もしかしたら赤ん坊の時に捨てられたのではないかと。普通なら生きていけるはずはないが、森の動物達や精霊達はその子供が大切で大事な存在だとわかっていて、みんなで護り育ててきたのではないかと思った」


 あくまでも私の想像、仮説だがなと付け加えて

「さらに魔力もない、だが魔道士達は口を揃えて、奥深くに何かある感じがするという。そしてお前達が対面した時の態度でほぼ確定した」


 あとはどうやって育て上げていくか、だったと。


「あの時点ではお前の魔力は安定してなくてよく寝込んでいたし、契約者になり得るかも半信半疑だった。あの時魔道士長にアルの魔力を分け与えてみれば、と言われて試しにやってみたら、どちらにもうまいように転がったわけだ」

 レーツェルは魔法が使えてアルフォンスは寝込まなくなった。


「そしていくつもの未来と選択肢を考えて、お前に課題を与えて、レーツェルにも普通じゃないことを色々と教え込んだ。まさか全部こなせるとは思っていなかったがな」

 二人共、やっぱり普通じゃなかったな、と笑って言った。


「2人のこれからの事は私もアレクシアも全面的に味方で協力をおしまない、な?」

 と隣の夫人を見ると、夫人も

「当たり前です、私はずっと味方ですよ。本当の家族になれてもうこんな嬉しいことはないわ」

 なんでも言ってね、アルへの文句でもいいのよ、と明るく言われて、つられて笑った。


「文句言われないように尽くしますから大丈夫です」

 肩を抱き寄せられ、ギュッとされまた体温が上がるのがわかる。



 話も一段落ついて、じゃあ戻るかと公爵が立ち上がると、夫人が、

「レーツェル、明日にでも一度こちらに来れないかしら?」

 渡したい物があるの、と言われて予定もないので、行ってもいいかとアルフォンスの方を見ると、

「では明日、私も一緒に行きます。ヴァイツェンに会いたいので」

 ヴァイツェンは元王国軍副総帥で王国軍魔道士部門トップだった方だ。アルフォンスの師匠でもある。今はアルフォンスに全てを譲ってルカリスティア公爵領に引きこもって色々研究をしている。

 じゃあヴァイツェンに言っておくよ、と公爵が返事をし、待ってるわと夫人が握手をして去っていった。


 

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― 新着の感想 ―
[良い点]  第15話まで拝読させていただきましたので、また感想を書かせていただきます。  ひとまず、アルフォンスとレーツェルが公私ともに結ばれたことに安堵いたしました。幼少期からの絆がこうした形で…
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