思い当たってしまった
勇者についての考察が上手くいかず、特に閃きも起こらずでいたが、情報は突然やってきた。
数日後、執務室の扉を開けると、目の前にリアムがいた。
「おはよ。」
「おはよう。ちょっといいか?」
「なに?めずらしいね。」
出待ちされるにしても、ウォルターやノア、神出鬼没ぎみなレティシアならわかるが、リアムはめずらしい。
「ホワイト勇者についてなんだが。」
私の民間勇者も微妙だが、ホワイト勇者もどうかと思うぞ。
「勇者がどうかした?」
「……おまえさ、外に出るときフード被るだろ?ホワイト勇者も被ってるらしいんだ。」
「へー。」
新人は顔を覚えてもらってなんぼなのに、隠してるの?
「何でだと思う?」
「さあ?」
そんなこと私に聞かれても……
勝手に仲間認定されても困るんだけど。
「見られたらヤバイんじゃない?」
適当な返事を返すが、掘り下げられた。
「なにがヤバイんだ?」
「知らないって。あ~、考えろってことね。例えば……ものすごい恥ずかしがりやとか?……あとは、どこかで犯罪を犯してて、身バレしないようにとか、私と一緒で見ただけで身元がわかるような容姿をしてる、とかかな。」
容姿で身バレする人ようなことがあるのかどうか知らんけど。
「確かに、見た目で身元がわかる場合があるな。」
「そうなんだ。で、私にそれを聞いてどうすんの?」
「実は、考え方というか発想もにていたから。」
「どう言う意味?」
「おまえが新しい魔法を使うと『なんだか小難しいこと考えたな』っていう思うんだ。一緒に戦ったっていう冒険者に話を聞いた。ホワイト勇者の戦いぶりを聞いて、同じことを思った。」
さいで。でも、それだけで仲間認定されてもなぁ。
「だから、似てるなって。身長もお前と同じぐらいで細身な男らしいし……あと、仲間内で『テル』って呼ばれてるって……おい、どうした?顔が怖いぞ。」
「……別に。気にしないで。」
自分がどんな顔をしているかなんて考える余裕なんてなかった。
思い当たる人が浮かんでしまったのだ。
足が速くて、身長が私と同じぐらいで細身の人。
発想が同じなら、同じ世界線からきているかもしれなくて、身バレする可能性のある容姿を持つ人。
そしてちょっと前に擦れ違ったドッペルゲンガーと『テル』と言う名前の人。
「最悪だ。」
今にも吐きそうな気持ちを押さえて、その一言をこぼす。
もし、私の浮かべた人物が当たりだったなら、これ程不運なことはない。
私の十数年しか生きていない人生における最大の天敵の顔が、私の脳裏には浮かんでいた。