あなたが求めるもの 私が求めるもの
役に立たないような勇者情報を聞いた日から、民間勇者情報が耳に入ってくるようになった。
これは、単に情報が多くなった結果なのか、それとも私が無意識のうちに意識するようになった結果なのかはわからないが、とにかくその話題を話していることによく気がつくようになった。
「もう一人の勇者のはなし聞いた?」
「聞いた、聞いた。」
「あれでしょ?ばったばったと魔物、倒すらしいよ。」
「え、私が聞いたのは、駆け抜けるようにして相手を殺るって話だったよ。」
「やっぱり、同じ勇者だと雰囲気似るのかな。」
「ここだけのはなし、そうだとしてもヨシムネ様より役に立ちそう。」
と、ここだけに止まらなさそうな話も聞いてしまった。
確かに。
今の話を聞いた感じでは、小豆ちゃんより役に立ちそうだ。
それが本当ならね。
なんか、噂がふわふわしすぎな気がするんだよね。
もう少し具体的な話があれば、信憑性か増すのに。
「結局よくわかんないなぁ。」
仕事終わりに自室の机に向かい、今まで聞いた民間勇者について箇条書きにしていた。
・めちゃくちゃ足が早い、すばしっこい
・小さい(身長なのか、歳なのかは不明)
・ばったばったと魔物を倒す
・駆け抜けるようにして魔物を倒す
・吉宗より役立つ
「情報すくなっ。」
ついつい大声で独り言を言ってしまう。
「あっ、あとまだ言っていたな。」
思い出した点も追記する。
・無口でクールと思いきや口下手(言葉が不自由?外国人?)
・常識はずれなところあり
・よくわからない呪文を唱えることがある
「うーん。」
自分で書いといてなんだけど、これってなにか意味があるのだろうか。
私的には、ドッペルゲンガーの方が気になっているんですが。
「このまま、何もなくめでたしめでたしに向かえばいいけどなぁ。」
勇者が召喚された意味からすれば、魔物が減るのは万々歳である。
しかし、タイミング的に魔道具を使って、魔物の被害が多発したところに勇者が登場するなんて、疑ってくださいと言ってるようなものではないだろうか。
何時だったか新米教師に「なんでもかんでも直ぐ疑ってはいけません。まず、信じてあげましょう。」って言われたことがあったなぁ。
その時既に私は信じられる相手がいなかったし、周りも私に対してぞんざいな感じだったから、疑うのが当たり前だった。
私は疑いはすれど、なんでもかんでも人のせいにはしてないつもりだ。特に物理的にやられたことに関しては。
だから、その先生に対して私が思ったのは「なるほど。他人からの情報を信じた結果、私が他人を信じれない可哀想な奴になるわけだ。どうしてそうなったかは知らないだろうけど。」だった。
どうしてそうなったかを知っていればもう少し違う言い方があったでしょうに、と思ったのも内緒だ。
いつも通りの澄まし顔で話を聞いたのを覚えている。
いくら考えたって答えが出るわけでもなく、横道に逸れてしまう自分の思考を弄びながら、ただ箇条書きを見つめていた。




