喧嘩の行方
今その話を出されて、逆に覚えていたんだなと感心したぐらいである。
それと同時に何故今、その話を持ち出したのだろうかと疑問こ浮かんだ。
本当は私だって言いたいことが沢山あった。
でも、それを言ったところでなんともならないことを知っていた。
むしろ言い返せば、「姉に向かってなんてことを言うんだ」と責められる事がわかっていた。
居たたまれない気持ちでここに立ち尽くし続けたくなかった。
でも、この場から立ち去れば、追いかけられて、話の途中でしょ、きちんと話をしなさいと引きずり出されることがわかっていた。
だから、私は立ち尽くすことしか許されなかった。
私は、どんな顔して、どんな反応を返すのが当たりなのかわからなかった。
その頃、周りからよく言われていた言葉は、「強いね」だった。
そして、周りの人は私にはそれくらい言っても大丈夫だよね、って認識だった。
私は周りからの期待に応えたい性格だった。
だから、「強い」と言われれば、強くあろうとした。
大丈夫だよねって認識されているなら、大丈夫なように振る舞った。
泣くなんてもってのほかだった。
「忘れるわけないよね。記憶力いいし。」
「……どうだろうね。」
「だから、私は嫌われてると思っていたんだけど。」
「だから、別に嫌いじゃないって。」
「それすら言ってくれなきゃ……わかんないよ……私はあなたがわからない。」
「じゃあ、わからなくていいんじゃない?家族だから、姉妹だから、わかり合えなきゃいけないなんてことはないと思う。」
「なんで、そんな悲しいことをいうの?」
「だって、今さらじゃない?」
疑問系ばかりの会話は、たぶん交わることがない。
それを姉は、はぐらかしているかバカにしているのかと思っているのだろう。だんだんとイライラしていくのがわかる。
私的には、そんなことは思っていない。
言葉通りに受け取ってくれればいいのに。
そして気付く。
これは、不味いパターンだ。
喧嘩になる予兆。
「もう!やっぱり私のこと嫌いなんでしょ!」
こういうところはきっと似ているんだろうな。私も考えてしまうから。
そして、私は言うよ?
「あのさっ、嫌いって言って欲しいわけ?だったらいくらでも言ってあげるよ。大嫌い!」
お望みの返事をすると、姉はショックを受けたような顔をしてさめざめと泣き出した。
「えー、言わせといて泣くとかやめてよ。」
エグエグと泣きじゃくる姉を見ながら、面倒になりつつもいつまでも泣かせてそれを見ているのも嫌だなとどうしようかと思っていると。
「泣いて、いる人に掛ける言葉とか、ないの?だから」
私は付き合っていられないと姉の隣をすり抜けようと一歩足を踏み出した。




