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君が、




小さな水しぶきをあげて

走り回ったプールサイド。



照りつける太陽に負けないくらい

大きな笑顔で笑ったグラウンド。



黒板に数字が散らかるのを

真っ白いそこに写し出す教室。



出入り禁止の屋上は

私たちの特等席だった。





きっと、忘れない夏。

きっと、思い出す夏。



きっと、ずっと、一生。



大切な夏――――。




「サボったら承知しねーぞお前ら」



学年主任の神谷先生の一括に気のない返事をする5人。

手に握るのは古びたデッキブラシ。

日向君と葉月君、平松くんは学ランの裾を膝まで捲し上げて、Yシャツも腕まくりをしている。

私と莉奈も腕まくりをし、髪の毛を一つに高く結って濡れない準備万端。

太陽は容赦なく私達の体力と気力を奪っていくほど熱い。



「にしてもなんで俺達まで・・・」



文句をこぼした葉月君に平松君がグっとデッキブラシで突く。



「わーるかったって」

「ごめんね皆」

「相川は悪くねーよ。悪いのは職員室から社会共通室の鍵をパクってきた大地」



文化祭のあの日。

神谷先生に立ち入り禁止の教室にいた事がばれて、日向君と私は大目玉をくらった。

その罰としてプール掃除をさせられるはめに。

仲がいいというだけで、神谷先生は莉奈達を道連れにしたのだ。



「水を抜いたプールって広いわね~」

「げ、虫死んでる」

「ちょっとやめてよ!」



ぎゃあぎゃあ騒ぐ莉奈と葉月君。



「おい莉奈。滑って転ぶなよ」



少しぶっきらぼうな言い方だけど、優しさの篭ってる言葉。

莉奈は「はーい」なんてぶっきらぼうに返事をする。

にしても本当に暑い。

経っているだけでも額から汗が零れ落ちてくる。

前髪が顔に張り付きそうで気が気じゃない。



「よっしゃ!全員1コースから5コースまで並ぼうぜ!」

「何すんだよ大地」

「デッキブラシで競争だ!」



先程からテンションの高い二人は、更に大きな声をあげた。

茹だるような暑さに負けそうな私達を楽しませようとする彼は、やっぱり凄い。



「いいかフライングは反則だからな!」

「あいあいさー!」



日向君の隣に立つ葉月君が敬礼のポーズをとった。



「いくぞー。位置について、よーい・・・ドンッ」



日向君の合図とともに5人が一斉に走り出す。



「きゃはは!」

「滑るー!!」



滑りながらデッキブラシで水しぶきをあげて走り出す5人。

途中で葉月君が転んで、それに巻き込まれる日向君。

平松君は間一髪滑る二人をよけたが、デッキブラシが葉月君に顔にあたってしまっていた。

そんな様子に頬っぺたが痛くなるほどの笑いが溢れる。

せっかく腕まくりして、ズボンの裾も上げたのに彼らは既にビショビショだ。



「くらえ!」



日向君が蛇口を捻ると緑色の管の中を生ぬるい水が飛び出してきた。



「うお!大地てんめぇ水かけんなよ!」

「きゃー!濡れる!」



童心に返ったかのように無邪気に笑い合う皆。

プールサイドに干されていたビート板を持ち出して、それで水を救い上げたり。

ホースを頭に当てて滝修行だ、なんて馬鹿な事言ったり。



「あー!!笑ってたら何も掃除進んでないのに、疲れちゃったよ」

「ほんとだね!」



スマホが無くたってこんなに楽しい。

暑くたって、めんどくたって、4人といれば全部楽しいに変わってしまう。

まるで頬がちぎれてしまうんじゃないかと思うくらい、笑顔になれる。

ぴちゃぴちゃ、と足で底に溜まってる水で遊ぶ。



「相川!」

「えっ!きゃっ?!」




突然呼ばれた名前に振り返る暇もなく、デッキブラシでプールの底に溜まっていた水を擦り上げる葉月君。



「ちょっと!汚いじゃん!」

「大地がずっと水流してるから綺麗だって!おりゃ!」

「やめてよ~!!」



それでも水をかけてくる葉月君に私も持っていたブラシで対抗。



「おい!大地、水くれ!」

「・・・」

「大地?」

「あ、わりぃ。ボーッとしてた」



しっかりしろよー、と葉月君が声をかけると足元に冷たい水が流れてきた。

足を覆う透明な水面に映る自分の顔がなんだかとても情けなく見える。

前髪が顔にはりつくのがあんなに嫌だったのに、今では濡れてもうどうでもよくなっていた。



「おーお前達、ちゃんと真面目にやってるかー」



ちょうどその時、神谷先生がやってきた。



「せんせー暑いでーす」

「中野がそういうと思ってほら見ろ!俺からの差し入れだ」



先生の手には5つの紙パックジュース。

私たち5人は手に持つものを放り出して一目散に走り出す。

ピシャピシャと水しぶきがあがり、それに光が当たってとても輝いて見えた。



「あーそういや今日って日比花の日じゃん」


リンゴジュースを手に取った葉月君は、ストローをさしながら、思い出したように言った。

『日々花』という単語に私もそういえば、と思い出す。

日比花とは日比菜花火大会の事。

地元のお祭りでは一番大きなお祭りで、隣の市やそれよりも遠い市からも電車でわざわざ来る人がいるほど。

セミが夏に大合唱を始めるのと同じぐらい、私たちの市では夏の風物詩だ。


「あんた忘れてたの?」

「日比花なんてリア充のための行事だろ」


ちょっと拗ねたように口をとがらせる葉月君はまるで小学生のようだった。

プールサイドに腰を下ろしながら、5人が横に並ぶ。

太陽は私たちのちょうど真上に来ていた。生ぬるい風が吹いて、雲が太陽の下に運ばれる。



「でもあたし達は日比花行かないよね」

「俺も莉奈も人込みが嫌だからな」



確かにあのお祭りの人の量は尋常じゃない。

花火を一番きれいに見れるスポットは毎年予約制で、それ以外のところから花火を見るには人が多すぎて、場所を確保するのが大変だ。

ほとんどの人が場所をとれず立ち見をしていたり、何十とある屋台に並びながら見たり、買った食べ物を食べながら歩いて見ていている。



「ねえ先生!掃除頑張ったお礼に屋上開放してよ!!ここからなら充分花火も見えるし」

「お、それいいねぇ」

「でしょ!!ねえ先生お願い~!」

「神谷先生、私もここから花火見たい!」


莉奈に便乗して私もお願いしてみる。

しかし、神谷先生は一切表情を変えず、難しい顔をしていた。

立ち入り禁止の教室に入って、プール掃除をさせるぐらい厳しいのだから、恐らく難しいだろう。

気が付けば太陽を隠してくれていた雲が、流れて、また太陽が私たちを照らす。

汗が頬を伝い、手でそれを拭った。



「せんせー、可愛い女の子二人に頼まれたら断れねぇよなぁ?」



日向君の合いの手が入り、神谷先生の眉がピクリと動いた。



「相川はいいとして莉奈はどうよ」

「なんですってー!?」


莉奈が葉月君の背中を軽くたたいた。

そんな中、平松君は葉月君の手からジュースを奪った。



「あ、てんめぇ!」

「俺の彼女が可愛くないわけないだろ」



少し不貞腐れながら葉月君から奪ったジュースを飲み干す平松君。

さすが、という感じだ。

莉奈は恥ずかしそうに、だけど少し笑いながら「ほらみろ!」と葉月君の背中を叩いた。



「ったくリア充は周りの目を少しは考えろよなー」

「大地、俺達寂しいな」

「お前と一緒にされたくねぇけどな!俺モテるし!」



嫌味のない言い方に、二ヒッと悪戯に笑う彼はいつものお調子者の彼だ。

くそー、と葉月君は泣き真似をする。

それがおかしくて、また笑いが広がる。



「しょうがねーなー。俺は今日部活と仕事で20時まで学校にいるから、その間だったらいいぞ。その代わり他の生徒と先生には内緒だからな」



先生の一声に、その日一番の完成がプールサイドに響いた。




***



ドーン、と花火が上がるたびに屋上にそれに負けないくらいの5人の歓声が響く。

特別に開放された私達だけの屋上。

花火大会の開始が7時からだから、たった1時間の特別ステージ。

赤、青、緑、黄色、色とりどりの火花が夜空を明るく照らす。



「おーこりゃ特等席だな」



そう言うと花火はもういいのか、安全柵によりかかり、花火に背を向け座る葉月君。



「この校舎はそこらへんの建物よりも高いからな」



5階建て校舎というのは、公立高校では滅多になく、市内ではうちだけだ。

そのうえ屋上があり、且つ日々花開催地の近くとなれば、予約席よりも特等席だ。

私の隣で日向君も同じように腰を下ろした。

チラリ横を見ると瞳を閉じて花火の音を聞いているようだった。

右隣に立つ莉奈はその隣に立つ平松君とのお喋りに夢中のようだ。

気がつけば私達三人は二人の世界に入れなくなっていた。



「来年はもう花火見れねーのかな」



少し寂しそうな葉月君の声に、私は「どうして?」と返す。



「だって俺達受験生だぜ?」

「葉月は馬鹿だから勉強しなきゃだもんな」

「あ゛?てめーに言われたくねぇよ大地」



花火に負けないくらいの声で騒ぎ出すお調子者の二人。

そんなの耳に届いてない莉奈と平松君。

葉月君の言葉に、来年は受験生か、とあたらめて思い知らされる。最近は模試もあり、進路希望調査の回数も増えた。気づかないフリをしていたが、自分の人生がかかっている高校3年生が徐々に近づいてきているのだ。

来年は勉強付の一年になって、花火なんて見に行けないのだろう。

きっと、この花火が最初で最後。

5人で花火が見られるのも――――日向君と一緒に花火が見られるのも。



「来年も一緒に見たかったな…」

「「え」」



じゃれ合っていた二人が同時にこちらを向く。

ポロっと溢した声を拾いとる二人。

変なところで地獄耳だから困るのだ。



「あ、みんな一緒にって意味・・・だからね?」



しばらく二人はポカーンとしている二人の顔が大きな花火が何発も上がると同時に色鮮やかに染まる。



「当たり前だろ!」



それに負けないくらい大きな笑顔で日向君は言ったんだ。



「約束な!」



叶うか分からない約束を結ぶ。

それだけでも、私は少し強くなれた気がしたんだ。



***



高校生になって2回目の夏休みがやってきた。

と言っても去年と何ら変わりのない始まり。




「うー・・・めんどくさい」

「次は数学かぁ・・・」



ガタン、っと大きな音を立てて抹茶オレが落ちてきた。

冷房の聞いていない廊下をそれを飲みながら莉奈と二人、歩く。

夏休みの廊下は生徒が少ないせいか、どこか寂し気で、どこか違う学校のような気がしてしまう。

2年生は最初の2週間は夏期講習が開かれるため、朝から学校へ行かなければならず、未だに夏休みという実感が湧かない。



「翔也達はいいな~」

「よくもないと思うよ~。だってこんな暑い中練習試合だよ?私達は冷房聞いた部屋で机にひたすら向かうだけでいいんだし」

「それもそうか」



窓の向こう側。

太陽が容赦なくグラウンドを走る赤いユニホーム達を照らしつける。

どうやらまだ試合は始まっていないようだ。

遠くからで誰が誰かなんて分からないが、赤いユニホームに向かって、心の中で頑張れと応援をした。



「さあ、数学頑張りますか」



教室のドアを開ければ、冷気が体を包み込んだ。

席に着くと同時に、数学の先生が入ってきた。

教科担当のやる気のない挨拶を終えて、椅子を引く。

教科書とノートを開いて、公式を書き写し、問題を解いていく。

ふと顔をあげれば、こちらに背を向ける先生の頭に反射する光。

そういえば、あの先生のあだ名はザビエルだったっけな…なんて思いながら、また次の問題を解いていった。



***



やっとのことで60分という長い数学の講習を終えれば、やっと私たちの夏休みが幕を開ける。

窓の外で行われていた試合もどうやら終わったようだ。

グラウンドには先ほどまであった赤い集団はおらず、陸上部と野球部しかグラウンドにはいなかった。



「美空、行こ!」

「あ、待ってよ莉奈!」



何をそんなに急いでるんだろうか。

スクバを背中で背負った莉奈の後ろ姿を私も追いかける。

下駄箱からローファーを取り出して、1年前に比べて薄汚れたスリッパと入れ替える。

莉奈は既に履き替えていた。



「今日何かあるの?」



あまりにも急かすので莉奈に聞くと、子供のように無邪気な笑顔で「へへへっ」と笑いながら、私の腕を掴み走り出す。

転びそうになるのを何とか堪えた。



「ちょっと、莉奈!」

「いいから黙ってついてきて!」



ただでさえ暑いのに走っているせいで余計に身体中から汗が溢れ出る。

それが目に入って少しだけしみた。



「ここらへんでいいかな」

「何が・・・?」



莉奈が連れてきたのは運動部の部室が並ぶ前。

一番奥にあるサッカー部の部室近くにはまだ沢山人がいるようだった。

水道があり、自動販売機なども設備されているが、サッカー部以外に人はおらず、彼らもまた私たちの存在など気にも留めていないようだった。



「美空!」

「へ!?」



突然呼ばれた名前に変な声が出てしまった。

それに莉奈は少しだけ笑った。



「お誕生日、おめでとう!!」

「っ、きゃ!?」



莉奈がそう言うと同時にパアーン、と大きな音がしたかと思うと身体に感じる嫌な感覚。



「何~!?!?」



よく見れば制服も髪の毛もビショビショだ。

何が起きたか分からず、とりあえず自分が濡れたことだけは理解した。

地面には色とりどりの風船が割れて落ちている。



「相川!!」

「え?」



振り返るとそこには――――――。



「「「ハッピーバースデイ!!」」」

「うわ!!?」



3人が声を揃えて言うと同時にこちらにまた何かを投げつけてきた。

身体に当たると同時に先ほどと同じ音を立て、身体を濡らす。

ギューっと強く瞑っていたまぶたを上げると髪の毛から滴る水が地面に落ちていく。

先程から4人が投げていたのは水風船のようだ。



「何、これ・・・」

「美空忘れてると思うけど、今日はあんたの誕生日でしょ!?」



今日の日付を思い出せば7月26日。

自分の誕生日を忘れるなんて、と思うかもしれないが、夏休みのせいで日付感覚がずれてしまっていた。

ていうか朝お母さん何も言ってくれなかったし、絶対お母さんも忘れているに違いない。



「だから皆でサプライズを計画してたの!!」



後ろを振り返るとピースをしてる葉月君、軽く微笑む平松君。

そして髪の毛をクシャり、掴んで私から少し視線を逸らす日向君。

皆、試合で疲れているのに私のために・・・。



「ってことで美空、今のはまだまだ序の口よー!」

「え!?」



そう言う莉奈の手には二つの水風船が。



「うわ!」



辛うじてそれを交わすと私の後ろにいた葉月君にクリーンヒット。彼のツンツンした髪の毛が崩れた。



「莉奈、てんめぇ!!!」

「ははは!ごめんごめん!」

「くらえ!!」



気が付けば5人で水風船を投げ合う始末。

皆髪の毛はプール掃除の時以上に濡れていて、水に反射する太陽の光が眩しい。



「くらえ相川!」

「えぇ!?」



目の前に飛んできた水色の水風船に目を瞑るが、一向に冷たい感覚が襲ってこない。

恐る恐る目を開けると。



「日向君!?」

「大丈夫、相川さん?」



う・・・。

無造作にセットされているいつもの髪の毛が崩れて、髪の先から落ちる雫が妙にヤラしい。


「あ、うん」

「葉月てめぇ、もう少し弱く投げろよ。お前のはいてぇんだよ!」



確かに葉月君のは他の男子二人に比べて当たると結構痛いと思ってたけど。

日向君も平松君も、手加減してくれてたってこと?

もしかしてそれで日向君は私をかばってくれたの・・・?



「くらえ、俺の魔球!」

「へっ、まだまだ!」



二人が同時に投げた水風船。

しかしそれは―――。



「「あ」」


平松君が投げる水風船から逃げるのに夢中になってた莉奈がたまたま二人の間をとおり、たまたま直撃したのだ。

そう、たまたまだ。

葉月君がヤバイ、という表情をした。

日向君の横顔にもしまった、とバッチリ書かれている。



「あ~ん~た~た~ち~!!!!!」



両サイドから水風船をくらった莉奈の顔はビショビショ。

それに多分だけど、あの二人は結構本気で投げてたみたいだから、痛いと思うんだよなぁ・・・。



「やってくれたわね!!」



水道にあったストックを掴むと莉奈は二人めがけて勢いよく投げた。

それから必死に逃げる二人。

大きな笑いがそこに響く。



「葉月くらえ!」

「うおおい!なんで葉月って言いながら俺を狙うんだよ平松!」

「えい!」

「相川は俺狙いかよ!!せめて平松狙ってくれぇ!」

「あんた達おとなしくしなさい~!!」



きっと私は今、世界で一番幸せものだ。

大好きな人たちと一緒に笑ってる。

特別な毎日か、と聞かれれば1年前の平凡な毎日と何ら変わりはない。

だけど、1年前にはなかったものが今、ここにはある。

色とりどりの風船がはじけて、水が外の世界に飛び出す様に。

私の世界も、一気に開けたような気がした。

汗なのか水なのかもわからない。制服が体にくっつき、少しだけ気持ち悪い。

けれどそんなのもどうでもよくなるくらい、楽しくて楽しくて。



「大地先輩」



自分たちが主役だった世界は、すぐに終わりを告げた。

皆が同時に声の方向を振り向く。

そこには黒髪のショートカットが似合うジャージ姿の小柄な子がいた。

日向君の事を先輩と呼んだことから恐らく1年生だろう。



「コーチが大地先輩の事呼んでました!」

「あーマジか。みんなわりぃ。ちょっと行って来る」



自販機の近くに置いてあったタオルを頭に載せ、無造作に髪の毛を拭きながら歩きだした日向君。



「おーじゃあ待ってるわ」



葉月君の声に振り返ったのは日向君ではなく、日向君を呼んだ女の子のほうだった。




「楽しんでる所すみませんでした。では、葉月先輩と平松先輩もお疲れ様でした」




きっと誰でもわかった。

彼女が作り笑いを浮かべたことなんて。

それはまるで人形の顔を張り付けたように、感情のこもってない笑顔。

軽く会釈をした彼女が振り向きざまに瞳が合った気がしたのは気のせいだろうか。

私もつられて軽く頭をさげてしまった。



「翔也、あの子誰」



それはとても低い声だった。

先程までの楽しさとは一変して、少し重い空気が漂う。



「葉山琴美って言って1年のマネージャーだよ」

「ふ~ん」



それ以降の会話は耳に届かなかった。

だって、遠ざかっていく背中が横を向くたびに見える笑顔が楽しそうで、隣を笑う女の子も先ほどの作り笑いとは比べ物にならないくらいの笑顔を向けていて。

きっと日向君の隣を歩く女の子は、ああいう子が似合うんだろうななんて思ってしまった。






君が、いた夏。











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