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ドーナツ・トランペット バーガーリーパー  作者: マサ・イワムラン
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逃亡! ビッグパック101個の壁!

【これまでのあらすじ】

 ドーナツ・トランペットの望みはただひとつ――王様になること!

 荒れ果てたコモドールホテルの再生計画に乗り出したドーナツ。

 ホームレスたちに酒を振舞い、市に再建を訴えてほしいと持ちかける。

 だが、その思惑は思わぬ方向へ転がり、事態は暴動へ。

 気が付けば、ドーナツは扇動者として祭り上げられていた!

 ハンバーガー101個のタイムリープで、ドーナツはハチャメチャな人生を駆け上る!

「二度と連絡して来ないで!」


 イグアナは、即座に俺を、彼女のアパートの部屋から追い出した。トランクス姿でドアの前に立つ俺に、靴やスーツが投げつけられる。俺は拾い集めた服を着ると、とにかく外に出た。行く先は決まっている。パクドナルドだ。


 確かに、俺はホームレスどもに、コモドールの再建を市に訴えて欲しいと言った。だが、あんな暴動を起こせと言った覚えは全くない。

 ――いや、覚えがないからって、無関係ってわけじゃないのは分かってる。分かってるが、俺が頼んだのは「訴えろ」であって「壊せ」じゃない。


 さっさとバーガー101個を食べて、昨日の夜に戻る。そして、ホームレスに酒など奢らずに、イグアナとしっぽりデートでもしていよう。

 



 最近はパクドナルドのチェーン店も増えて、以前より店を探すのに苦労しない。俺はシャツの襟を立て、できるだけ顔を隠すようにして店に入った。


「ビッグパックだ」


 カウンターで注文すると、アルバイトの女の子はマニュアル通りにニッコリと笑った。俺の方を見ているようで見ていない。ゼロ円のスマイルだ。


「ポテトとドリンクは何になさいますか?」


「ポテトもドリンクもいらない」


「分かりました。ビッグパック1個ですね」


「いや……101個だ」


 レジを打とうとしていた女の子の手が止まる。

 もう一度、俺の顔を見る。

 今度は、さっきよりも長い。


「……101個?」


「そうだ。急げ」


 彼女は小さくうなずくと、清算もせずに店の奥へ入っていった。


「金は?」


 そう叫んだが、返事はなかった。

 嫌な予感がする。

 次の瞬間、パトカーのサイレンの音が聞こえた。真っ直ぐに、こちらに向かってきている。やがて、店の前に数台のパトカーが急停車すると、警官たちが飛び出して来た。


「動くな、ドーナツ・トランペット! 市が逮捕状を出した。暴動扇動の容疑だ!」


 俺はカウンターを飛び越え、厨房へ飛び込んだ。ポテトが舞い、バンズが床を転がる。店員の悲鳴を背に、俺は裏口から外へ飛び出した。




 走りに走った俺は、そのまま地下鉄に飛び乗った。逮捕なんてされた日には、そのまま拘束されて、タイムリープも出来なくなる。とにかく、一刻も早くビッグパック101個を食べなければ――。


 地下鉄を降りると、俺は別のパクドナルドへ駆け込んだ。


「ビッグパック、101個! 大至急だ!」


 だが、どこのパクドナルドに行っても同じだった。ビッグパック101個を頼む俺は目立ち過ぎ、すぐに警察を呼ばれる。その上、『ドーナツ・トランペットはパクドナルドに出没する』との情報が流れたのか、どこの店の前にも警察が張りついた。


 仕方なく、俺は兄貴のジュニアに電話をした。


「ジュニア、頼む。ビッグパック101個を届けてくれ」


「ドーナツ、俺や親父たちに電話しちゃダメだ。電話は全部、逆探知されてる――」


 そこまで言って、電話は切れた。俺の家族は全員警察の監視下にあった。

 俺は、急いで別の番号を押した。


「もしもし、俺だ。イグアナ。頼む、ビッグパック101個を……」


「連絡しないでって言ったでしょ!」


 電話は秒で切られた。




 弁護士のコーンフレークや、管理人のパーシ、仕事の関係者、片っ端から連絡をとったが、犯罪者に祭り上げられた俺を助けようとする人間は一人もいなかった。


 中でも、コーンフレークは酷かった。


「ビッグパック101個を買うのは俺の仕事じゃない。どうしてもして欲しいなら理由を言え」


 この非常事態に、執拗に食い下がる。

 こんな抜け目のない男に、タイムリープの秘密を教えるのは絶対に御免だった。教えた瞬間に、俺より先にビッグパック101個を完食し、自分の都合がいいように世界を作り替えるに違いなかった。




 助けを求めてあちこちに連絡し、警察に見つかっては逃げ回る――それを何度繰り返したか、もう分からない。


 駅の時計を見るたび、針が進んでいる。新聞の見出しも、ラジオの時報も、全部が俺を追い立てる。気が付けば、『宴会の夜』から、もう三日目に入っていた。戻れるのは三日前まで。ここを越えたら、暴動が始まる前にすら戻れなくなる。


 ビルの影から、白々と明けていく朝日を見つめながら、疲れ切った俺の頭に、ふいに思い浮かんだヤツがいた。

 なぜかは分からない。

 だが、アイツなら助けになるかもしれないと思った。


 俺が向かったのは、あの場所。

 そう――リブが働く、オンボロ魚屋の前だった。

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