ホームレスたちとの宴! あんたはティッシュ拾い係のトップだ!
【これまでのあらすじ】
ドーナツ・トランペットの望みはただひとつ――王様になること!
荒れ果てたコモドールホテルの再生計画に乗り出したドーナツ。
リブとの再会をすぐに忘れ、新たな美女・イグアナと出会う!
ハンバーガー101個のタイムリープで、ドーナツはハチャメチャな人生を駆け上る!
「コモドールの再生は、ニューヨークを生まれ変わらせる偉大な計画だ!」
俺はニューヨーク市庁舎の会議室で、唾を飛ばしながら熱弁を振るった。
テーブルの上には、新しい高層ホテルの模型が置かれている。
全面ガラス張りの、やけにゴージャスなやつだ。
周囲との調和?
そんなものはどうでもいい。
プレゼンはフリ芸だ。
理屈よりも、いかに派手で、いかに夢を見せられるか。
この計画に賭ける価値があると思わせたヤツの勝ちだ。
「コモドールが変われば、ニューヨークの景色も変わる。人が集まり、金が回る。だからこそ、この計画には特別減税の価値があるんだ!」
だが、市の連中は揃って鈍い顔をした。
「他のホテルから苦情が出ています。コモドールだけ減税するのは不公平だと」
会議は、そこで終わった。
「この計画の意味も理解できないとは、全く無能なヤツらだ!」
俺はクソ重い模型を抱えて市庁舎の大階段を降りながらわめいた。
コーンフレークが肩をすくめる。
「もともとコモドールは無理筋だったんだ。もっと安全な投資から始めたらどうだ?」
「コモドールが変われば、俺の人生も変わる」
俺は模型をコーンフレークに押し付けた。
「市のうすのろ連中の目を覚ましてやる」
「おい、弁護士資格剥奪は御免だぞ!」
だが、俺は聞こえないフリで階段を駆け下りた。
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その日の深夜。
コモドールホテルの裏通りに、大勢のホームレスが集まっていた。
「なんだこれ?」
「タダで酒をくれるらしいぞ」
噂が噂を呼び、売春婦やドラッグの売人まで集まってくる。
犯罪者のカオス。
その中心にいるのは――ドーナツ・トランペット。
この俺だ。
俺はホームレスたちに、どんどん酒を注いでやった。
「いいか。カビ臭いコモドールをぶっ壊して、キラキラした新しいホテルを作る。そうすりゃ、仕事はいくらでも生まれる」
歓声が上がる。
実に気分がいい。
「ただな。市の連中が邪魔してる。誰か、説得してくれればいいんだが」
俺が困った顔を作ると、鼻の赤い男が手を挙げた。
「じゃあ、俺が行ってやる」
「本当か! 成功したら、アンタは清掃係のトップだ!」
「俺も行くぜ!」
「アンタは……雑巾係のトップだ!」
「アタシも!」
「アンタはティッシュ拾い係のトップ!」
その夜のうちに、俺は色々な清掃係のトップを任命し続けた。
灰皿空っぽ係、空き瓶回収係、掃除機のつまり解消係。
なんでも係をつける。
その度に歓声が上がり、笑い声と根拠のない希望が、暗い路地を満たしていった。
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次の日の朝は、イグアナのアパートで目を覚ました。
イグアナには別に付き合っている相手がいたらしい。
だが、俺の野心と金の匂いにイグアナは飛びついてきた。
俺はシーツにくるまったままニヤニヤと笑った。
ホームレスや売春婦たちが、ゾロゾロと並んで陳情に行けば、きっと市の連中も俺の計画の重要性に気づくはずだ。
俺がマンハッタンの王になる時が、着々と近づいている。
電話のベルが鳴る。
しばらくして、イグアナは俺に受話器を押し付けてきた。
「勝手にウチの電話番号を教えないで」
「仕方がない。王は忙しいんだ」
受話器の向こうから、コーンフレークの声が耳に飛び込んできた。
「ドーナツ! 今すぐニュースを見ろ!」
「ああ? 何なんだ一体……?」
テレビをつけると、ニューヨーク市庁舎が映し出された。
大階段に、数え切れないほどのホームレスと売春婦が押し寄せている。
棒やガラス瓶を持っているヤツら。
制止しようとする警察官ともみ合いになり、警察官が催涙ガスを発射する。
「大変な事態です。今朝からニューヨーク市庁前で暴動が起きています。彼らは一様に、コモドールホテルの改装を訴えています!」
キンキンしたアナウンサーの声が俺の頭を殴りつける。
ホームレスの一人がインタビューにこたえて言った。
「市を説得しろって言われたんだ。ドーナツって野郎に」
俺の顔写真がデカデカとテレビに映し出された。
いつかの雑誌のインタビューで最高にセクシーなポーズを決めた一枚だ。
腰にまきつけていたシーツが滑り落ちる。
俺は、深い奈落の底へと落ちていくようだった。




