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桜色の忘却①―郷愁の足音―  作者: 星利
嗤う幻想遊園地
22/25

Kotaeawase


ちぇるしーが、語りだした。


「まず、大前提としてこの遊園地の7不思議とわらべ歌は、対応している形になっている。そして、俺達はそれに沿ってここへ連れて来られた。…"子供が消える"事件を模倣して。


では、まず7不思議の解明から行う。


まず、ジェットコースター。ジェットコースターでは、事故が起こったと言われていたが、誰に聞いても違う答えが返ってくる。…あやふやなんだ。っつーことは、今までは事故が起こらなかったってことだ。


つなぎ目の擦れる音から、「事故が起こりそう」だと危惧した客達の噂に尾ひれがついていったのだと考えられる。



次に、観覧車。俺は、上空から発見した。…観覧車のふもとに住む黒猫を。つまり、"助けを呼ぶ謎の声"は、猫の鳴き声だと仮定できる。


次は、メリーゴーラウンド。"独りでに廻る"っつーのは、ただ単にモーターの接続が悪いせいだろう。


ミラーハウス…これは、もしやとは思っていたのだが、ホンモノだ。きっと最初は、サクラを用いて自作自演で入れ替わっていたのだろう。体格が同じ2人に、カツラや化粧などを使用して容易に行うことができる。


しかし、いつの間にかこのミラーハウスは何者かに憑りつかれてしまった。それは、春灯さんの証言からも予測できる。"洋館と和室があった"と春灯さんは言った。…だが、実際には洋館エリアは存在しないんだ。だから、洋館を発見しなかった夏楼さんとはぐれた。



"アクアツアーで現れる、謎の生物の影"については、春灯さんが言ってくれた通りウーパールーパーだといえる。以前、ネットで写真を見たのだが、その特徴はウーパールーパーそのものだった。


水槽を洗う従業員からは見えない死角に、ウーパールーパーの死体が挟まり、永久保存されていたものの影が見えた。



そして、ドリームキャッスルの地下にある"謎の拷問部屋"は、ここだ。…文献によると、元々は開園当時、アトラクションとして使われていたらしい。


…そして、次は真犯人についてだ。


――犯人は、この中にいる。」



私達は、顔を見合わせる。



「それぞれのアトラクションにいた、オオカミを除く4体の着ぐるみとピエロに関しては、倒れているにも関わらず館内放送が流れ、ヘリウムガスを吸った男の声がしたことから、彼らはただの下っ端であることが分かる。


ここで犯人は、オオカミか夏楼のどちらかと言える。


…しかし、犯人は最初から分かっていた。




――夏楼だ。」



「!」



「実は、夏楼をローマ字にすると、Narou…並び替えるとUrano、つまり裏野…この遊園地の真支配人だ。夏楼は、偽名だよ。



何故、裏野 義が自首したのかは、夏楼と何らかの関わりがあり、頼まれたからだろう。


それに、夏楼の言動は嘘が多い。第一、66歳の警察官など、一般的には存在しない。警察の定年は60歳だから、少ないだろうな。


そして、救護室も存在しなかった。


また、館内放送が流れた時に、いつも俺達の視界にいなかったことから、アリバイは成立しない。



ちなみにここだけの話、夏楼には、この事件を起こす動機も存在している。


…彼の口にした"陰陽師"だ。


――彼は俺に、恨みを持っている。何故なら、父を、陰陽師の生き残りである俺の祖父に殺されたと思っているから。


…俺の家は、代々続く陰陽師の生き残りなんだ。



以上、Q.E.D.(証明終わり)」



(えっ、えっ、)


私の頭は、いきなりの展開に理解が追い付かない。



(ちぇるしーの家が、生き残りのおんみょーじ?


夏楼さんが、真支配人――?!)



すると、牢の扉が開き、夏楼さんが現れた。




「ハッハッハ、名推理、お見事!


君の言う通り、わたしが犯人であり裏野ドリームランドの支配人だよ。


…この際だから、全て教えてあげるね…。



まず、この遊園地では子供…若者が実際に消えていたんだ。正しくは、殺されたと言った方が正しいけどね。


というのも、ミラーハウス担当の者が、決まって変な気を起こしたんだ。でもね、ミラーハウスが悪霊に憑りつかれてるって世間に知れたら、客が来なくなるだろう?だから、拷問部屋で殺すしかなかった。


その人手不足を補う為、来園した若者を誘拐していたんだ。」



(物騒すぎないか…)


「じゃあ何故、この遊園地が完成してから65年の今になって事件を起こしたんや?」


玲夜の質問に、夏楼は無表情になって答える。




「それはね、…親父の100回忌だからだよ。」



ゾクリ、と背筋が凍った。



「親父…裏野 (きよし)は、戦後復興の最中、1952年1月、35歳の時にこの裏野ドリームランドを作り始めた。同年冬、完成した。


…けれど、親父は1952年の夏に、亡くなってしまった。…完成した裏野ドリームランドを見ることはなかった。わたしが1歳の時だった。


遺書には、"100歳になっても、裏野ドリームランドで人々に夢を届けたい"と書かれていた。…それが、親父の願いだった――!


それなのに、それなのに…!」


泣き叫ぶ夏楼。



「お前は、間違っている。お前が行ったのは愚かな…」


そう言いかけたちぇるしーの言葉を遮り、夏楼は泣き叫んで続ける。


「お前に、何が分かる!!


全部、お前のおじいのせいだ…!


70年前、生き残りの陰陽師にお祓いしてもらったのが失敗して、その日から親父の気が狂ったって、お袋が言ってたんだ!


…だから、今日お前らをここに呼び、幽閉したのは、…智瑠 孝――お前を殺す為だァァ!!」



血走った眼をカッと見開いた夏楼は、持っていたカバンから包丁を取り出し、ちぇるしーに突進してくる!



「危ないっ!」



すると、その時だった。


パトカーのサイレンが鳴り響き、本物の警察官が現れた!



「裏野ドリームランド支配人・夏楼 悟郎改め裏野 和夫(かずお)、電波ジャック及び殺人未遂の容疑で逮捕する!」


手錠をかけられ、連行されていく夏楼。



「そこのウサギ…爆発物及び拳銃を違法に所持し、使用した疑いで逮捕する!


イヌ、パンダ、カエル…誘拐を行った容疑で逮捕する!


そして、ピエロ…裏野 義!


お前は脱獄、また殺人未遂の容疑で逮捕する!」



(えっ、)



「ホレ、やっぱピエロは裏野 義やないか。」


玲夜がドヤ顔でこちらを見てくる。


「何で、分かったの?」


「何でやろ?


…オトコのカン、ってやつかな!」


「なに、それ。」


私達は、アハハと笑い合った。



ふと警察達の方に目をやると、オオカミの着ぐるみがこちらに向かって敬礼していた。


(もしかして、あのオオカミは本物の警察だったの…?!)



こうして、ドリームキャッスルを出た時…。



ドッカーーーン!


爆発音がしたのでドリームキャッスルの方を振り返ると、派手に爆発し壁が吹き飛んでいる!


どうやら、時限爆弾が仕掛けられていたらしい。


「危なッ…!」


「あれ、そういえば星野さんは?」


私は、星野さんが心配で仕方ない。



「そうね。拷問部屋から4人で逃げた時、一目散にミラーハウスへ駆けていったのよ。探しに行きましょう。」



一行は、ミラーハウスへ向かう。

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