Kotaeawase
ちぇるしーが、語りだした。
「まず、大前提としてこの遊園地の7不思議とわらべ歌は、対応している形になっている。そして、俺達はそれに沿ってここへ連れて来られた。…"子供が消える"事件を模倣して。
では、まず7不思議の解明から行う。
まず、ジェットコースター。ジェットコースターでは、事故が起こったと言われていたが、誰に聞いても違う答えが返ってくる。…あやふやなんだ。っつーことは、今までは事故が起こらなかったってことだ。
つなぎ目の擦れる音から、「事故が起こりそう」だと危惧した客達の噂に尾ひれがついていったのだと考えられる。
次に、観覧車。俺は、上空から発見した。…観覧車のふもとに住む黒猫を。つまり、"助けを呼ぶ謎の声"は、猫の鳴き声だと仮定できる。
次は、メリーゴーラウンド。"独りでに廻る"っつーのは、ただ単にモーターの接続が悪いせいだろう。
ミラーハウス…これは、もしやとは思っていたのだが、ホンモノだ。きっと最初は、サクラを用いて自作自演で入れ替わっていたのだろう。体格が同じ2人に、カツラや化粧などを使用して容易に行うことができる。
しかし、いつの間にかこのミラーハウスは何者かに憑りつかれてしまった。それは、春灯さんの証言からも予測できる。"洋館と和室があった"と春灯さんは言った。…だが、実際には洋館エリアは存在しないんだ。だから、洋館を発見しなかった夏楼さんとはぐれた。
"アクアツアーで現れる、謎の生物の影"については、春灯さんが言ってくれた通りウーパールーパーだといえる。以前、ネットで写真を見たのだが、その特徴はウーパールーパーそのものだった。
水槽を洗う従業員からは見えない死角に、ウーパールーパーの死体が挟まり、永久保存されていたものの影が見えた。
そして、ドリームキャッスルの地下にある"謎の拷問部屋"は、ここだ。…文献によると、元々は開園当時、アトラクションとして使われていたらしい。
…そして、次は真犯人についてだ。
――犯人は、この中にいる。」
私達は、顔を見合わせる。
「それぞれのアトラクションにいた、オオカミを除く4体の着ぐるみとピエロに関しては、倒れているにも関わらず館内放送が流れ、ヘリウムガスを吸った男の声がしたことから、彼らはただの下っ端であることが分かる。
ここで犯人は、オオカミか夏楼のどちらかと言える。
…しかし、犯人は最初から分かっていた。
――夏楼だ。」
「!」
「実は、夏楼をローマ字にすると、Narou…並び替えるとUrano、つまり裏野…この遊園地の真支配人だ。夏楼は、偽名だよ。
何故、裏野 義が自首したのかは、夏楼と何らかの関わりがあり、頼まれたからだろう。
それに、夏楼の言動は嘘が多い。第一、66歳の警察官など、一般的には存在しない。警察の定年は60歳だから、少ないだろうな。
そして、救護室も存在しなかった。
また、館内放送が流れた時に、いつも俺達の視界にいなかったことから、アリバイは成立しない。
ちなみにここだけの話、夏楼には、この事件を起こす動機も存在している。
…彼の口にした"陰陽師"だ。
――彼は俺に、恨みを持っている。何故なら、父を、陰陽師の生き残りである俺の祖父に殺されたと思っているから。
…俺の家は、代々続く陰陽師の生き残りなんだ。
以上、Q.E.D.(証明終わり)」
(えっ、えっ、)
私の頭は、いきなりの展開に理解が追い付かない。
(ちぇるしーの家が、生き残りのおんみょーじ?
夏楼さんが、真支配人――?!)
すると、牢の扉が開き、夏楼さんが現れた。
「ハッハッハ、名推理、お見事!
君の言う通り、わたしが犯人であり裏野ドリームランドの支配人だよ。
…この際だから、全て教えてあげるね…。
まず、この遊園地では子供…若者が実際に消えていたんだ。正しくは、殺されたと言った方が正しいけどね。
というのも、ミラーハウス担当の者が、決まって変な気を起こしたんだ。でもね、ミラーハウスが悪霊に憑りつかれてるって世間に知れたら、客が来なくなるだろう?だから、拷問部屋で殺すしかなかった。
その人手不足を補う為、来園した若者を誘拐していたんだ。」
(物騒すぎないか…)
「じゃあ何故、この遊園地が完成してから65年の今になって事件を起こしたんや?」
玲夜の質問に、夏楼は無表情になって答える。
「それはね、…親父の100回忌だからだよ。」
ゾクリ、と背筋が凍った。
「親父…裏野 清は、戦後復興の最中、1952年1月、35歳の時にこの裏野ドリームランドを作り始めた。同年冬、完成した。
…けれど、親父は1952年の夏に、亡くなってしまった。…完成した裏野ドリームランドを見ることはなかった。わたしが1歳の時だった。
遺書には、"100歳になっても、裏野ドリームランドで人々に夢を届けたい"と書かれていた。…それが、親父の願いだった――!
それなのに、それなのに…!」
泣き叫ぶ夏楼。
「お前は、間違っている。お前が行ったのは愚かな…」
そう言いかけたちぇるしーの言葉を遮り、夏楼は泣き叫んで続ける。
「お前に、何が分かる!!
全部、お前のおじいのせいだ…!
70年前、生き残りの陰陽師にお祓いしてもらったのが失敗して、その日から親父の気が狂ったって、お袋が言ってたんだ!
…だから、今日お前らをここに呼び、幽閉したのは、…智瑠 孝――お前を殺す為だァァ!!」
血走った眼をカッと見開いた夏楼は、持っていたカバンから包丁を取り出し、ちぇるしーに突進してくる!
「危ないっ!」
すると、その時だった。
パトカーのサイレンが鳴り響き、本物の警察官が現れた!
「裏野ドリームランド支配人・夏楼 悟郎改め裏野 和夫、電波ジャック及び殺人未遂の容疑で逮捕する!」
手錠をかけられ、連行されていく夏楼。
「そこのウサギ…爆発物及び拳銃を違法に所持し、使用した疑いで逮捕する!
イヌ、パンダ、カエル…誘拐を行った容疑で逮捕する!
そして、ピエロ…裏野 義!
お前は脱獄、また殺人未遂の容疑で逮捕する!」
(えっ、)
「ホレ、やっぱピエロは裏野 義やないか。」
玲夜がドヤ顔でこちらを見てくる。
「何で、分かったの?」
「何でやろ?
…オトコのカン、ってやつかな!」
「なに、それ。」
私達は、アハハと笑い合った。
ふと警察達の方に目をやると、オオカミの着ぐるみがこちらに向かって敬礼していた。
(もしかして、あのオオカミは本物の警察だったの…?!)
こうして、ドリームキャッスルを出た時…。
ドッカーーーン!
爆発音がしたのでドリームキャッスルの方を振り返ると、派手に爆発し壁が吹き飛んでいる!
どうやら、時限爆弾が仕掛けられていたらしい。
「危なッ…!」
「あれ、そういえば星野さんは?」
私は、星野さんが心配で仕方ない。
「そうね。拷問部屋から4人で逃げた時、一目散にミラーハウスへ駆けていったのよ。探しに行きましょう。」
一行は、ミラーハウスへ向かう。




