第1話 再会
「私と結婚して下さい」
それが騎士長である鳴瀬成三が、教壇に立って最初に聞いた言葉であった。
そもそも騎士団の騎士長である俺が、この対魔族騎士育成学院の教官になったのかは、少し時を遡る。
1ヵ月前、俺は団長に呼ばれ騎士団の作戦本部に来ていた。
「はああ、今なんて言ったんだ?豪」
「なんだ成三、耳カスでも詰まってるのか?」
そうニヤニヤしながら言ったのは、素肌の上に騎士団のコートを着ている、ヤンキーのような風貌をした、対魔族連盟騎士団の団長、鬼頭豪だった。
「いいか、もう一度言うぞ、お前には対魔族騎士育成学院の教官になってもらう」
「豪、お前本気で言ってるのか?俺無しでどうやって前線を維持するって言うんだ、ここに来るのでさえギリギリだったんだぞ」
「ああ、それなら大丈夫だ、お前の部隊が南での戦争を終わらせ帰還してきたからな、即座に前線に送ってやった」
人の部下を勝手に使うなよとムカつきはしたが、人がムカつくことを相手が逆撫でするように言い苛つかせるのが豪の楽しみの一つであるため、殴り飛ばしたくなるのを必死に抑え、話を聞くことにした。
「お前はさ、そんなでも騎士団最強の騎士長なんだから、これくらいのことで拳を上げないでくれないか、もっと騎士長であるという自覚を持った方が良いと思うぞ」
気持ちを抑えていたつもりだったが、どうやら俺の拳は豪の顔の目の前まで来ていたらしい。豪に言われてと言うのは少し癪だが、話を聞くためにも一旦拳を下ろすことにした。
「取り敢えず俺が前線を離れることは納得してやる、だがそもそもなぜ俺が教官なんてやる必要があるんだよ」
「そんなに焦るなってちゃんと説明するから、まあ主な理由は2つある、まず1つ目は魔族と魔物が強くなってきているからだ、それで参謀が言うには、このままだと1年後には前線が崩壊するかもしれない」
「それで、1年後即戦力として使える騎士を俺に育てろということか」
「そうゆうこと、お前なら出来るだろ経験はあるんだから」
豪の言う通り、以前にも自分の班員を指導して騎士団で有数の実力者にまで鍛え上げたことがあった。
「1つ目の理由は分かった、指導に関しては何も口出ししないと言うなら引き受けてやる」
「分かった学院には俺から言っておこう、それで2つ目だか、こっちの方が本題だ」
そうゆうとさっきまでのムカつく顔から笑みが消え、いつもの豪には似つかわしくない程に真剣な表情へと変わった。
「学院内に魔族が紛れこんでいるかもしれない」
「は?」
想像もしなかった言葉に唖然としたが、豪は気にせず話を続けた。
「学院内に保管してあった重要書類が盗まれたんだが、外部からの侵入の痕跡は無かった、他にも色々と調査はしたが原因究明に繋がるものは無く、内部の者、つまり教官による犯行ではないかという結論にいたったわけだ、そこでお前には魔族に怪しまれないように教官として指導しつつ、人間に化けてる魔族を探し出してもらいたい、これが今回お前のこなす任務というわけだ」
「なるほどな、教官として指導ができ、魂の知覚ができる俺は適任というわけか」
「それじゃ今から学院な、荷物は後で送るから、じゃ神崎よろしく」
「は?ああああああああああ」
豪が合図すると足元に穴が開き、その穴に落ちてしまった。
「結、急に転移させるのやめろっていったよな」
落ちた先にいたのは、対魔族騎士育成学院の学院長である神崎結だった。
「はい、じゃあこの書類読んでね、教官としての仕事についてや、学院のことについて書いてあるから、それじゃ後は個人の判断でよろしく、転移の先は貴方の部屋だから自由に使うといいわ」
「ちょっ、まだ話は終わってっ」
そうゆうとまた突然転移させられてしまった。それからの1ヶ月間は他の教官に挨拶したり、入学試験の手伝いをしたりと忙しい日々を過ごした。その間魂の隠蔽能力が高いのか、魔族に化けている教官を見つけることは出来なかった。そうして1ヶ月が経ち現在に至る。
「あれ?聞こえなかったのかな、もうしょうがないなあ、今度膝枕耳かきしてあげますよ」
「いや、聞こえてるよ」
「ええ、じゃあなんで無視するんですか、私みたいな完全無欠美少女に告白されたんですよ有り得なくないですか」
豪とは違うが、同じく俺を苛つかせるこいつに俺ははっきりと言ってやることにした。
「ガキは嫌いだ」




