表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/16

序章 主を見送った夜――「僕に仕えるメイドは世界最強の英雄です2」本編終幕より――

――500年前。


主ホワイトの亡骸を前に、エクレアは静かに目を閉じた。


「いま、ご主人様の魂が身体を離れました」


その声は穏やかで、けれどその場にいた誰よりも深い哀しみを抱えていた。


「このあと、ご主人様の魂は、わたくしが幽界へご案内いたします」


「ご主人様が次にこの現界へ生まれてくるのは、おそらく数百年は先になるでしょう」


一瞬、沈黙が落ちた。


けれどエクレアは、そこで立ち止まらなかった。


「それまでは、ご主人様から下されたご命令に従うまでです」


「そしてご主人様が再びこの現界に生まれてこられた時、今度こそ、何の憂いもなくお仕えできるようにするのです」


「それまでの間は、ご主人様をお迎えするための準備期間といたしましょう」


エクレアは、順に仲間たちへ視線を向けた。


「シェラはスレートのほうを手伝ってください。イオニアにはベルフラワーのほうをお願いしましょうか」


「・・・・ふふ。あなた方が力を合わせれば、男爵領どころか、一つの国すら造ってしまうかもしれませんね。ですが、それも悪くありません」


「残る二人も、引き続き、ホーネットはゴールド王国を、リューシェはエリューシオン教会と聖女を担当してください」


そして最後に、エクレアはまっすぐ前を見て告げた。


「それでは皆様。ご主人様が再び生まれるその日まで、それぞれの立場で励みましょう」


五人のメイドたちは、その言葉を胸に刻み、それぞれ転移でその場を去っていった。


あとに残ったのは、深い静寂だけ。


けれど、ついさきほどまで五人の女神がそこにいた証のように、神気だけはなおも淡く漂っていた。


これは――


愛する主を失った五人が、再び主に仕えるその日まで、世界を整え、国を育て、歴史そのものに関わり続けた、500年の記録である。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇


勇者ラベンダーが魔王を討ち果たして以後、世界はひとまず平穏を取り戻した。


世にいう「勇者の聖戦」である。


その功績は中央平原の各地に広まり、勇者の名は、国や種族を問わず、多くの者に讃えられることとなった。


だが、魔王という絶対悪が消え、魔物の脅威が薄れた一方で、今度は人の欲が頭をもたげはじめる。


身分を笠に着る王族や貴族。


弱き者を踏みにじる理不尽。


争い、陰謀、差別、搾取。


それらを見た創造神は考えた。


いつか再びこの現界に生まれてくる、親愛なるご主人様が――


理不尽に傷つけられることのない世界を、少しでも先に整えておこう、と。


そのために、五人の使徒は動き出した。


これは、のちに大将軍と呼ばれる者の物語であり、大魔導士と讃えられる者の物語であり、大聖女、赤髪の騎士、そして世界そのものを裏から支えた者たちの記録でもある。


そして、すべてはここから始まる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ