表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/8

仕事のスキルは気合と根性、おかしいですか?

「このままじゃ、お前は給料泥棒だ」


 この春、新卒で入社した正木圭一は、始発で出勤し、終電で帰る生活を十ヶ月続けていた。


「新卒なんだから、誰よりも早く来て、誰よりも遅く帰る。俺たちは当たり前にやってきたんだ」


「気合と根性が足りない。コンプライアンスなんて言葉よりも、まずは結果だ」


 上司や先輩社員からは、入社以来ずっとその様に言われてきた。


 そしていつしか、それが普通のことだと思うようになっていた。


「あなた、だいぶ疲れているじゃない」


「仕事は結果を出さないと。疲れたなんて言っていられないよ」


 母の心配をよそに、毎日そう答えていた。しかし、実際には常に頭が冴えなかった。


 同期入社は、自分も含めて十人。しかし今現在、三人しか残っていない。長時間労働に休日出勤も続き、病気で会社を去った同僚もいる。


「休みというのは、怠け者が求めるものだ」


 休日出勤で目にするものは、カップルや家族連れ。思い思いの時間を過ごしているように、正木の目に映った。しかし、もうそれを羨ましいと思う気持ちもなくなっていた。


 ある夜、正木は終電の車内で眠り込み、鞄の中身を床に撒いてしまった。


「すいません!」


 慌てて拾い上げていると、隣にいた女性が手伝ってくれた。


「ありがとうございます」


 彼女が拾った書類を正木は受け取った。


「駄目だなこんなことじゃ…」


 正木はそうつぶやくと、次の駅で降りた。


「あの、ちょっと」


 正木はホームで声をかけられた。振り向くと、先程の女性だった。


「あぁ、先程はありがとうございます」


「新卒さん?」


「は、はい。今年の春に社会人になりました」


「あの、今度もし良かったら、ここに電話下さらない?」


 彼女は正木に一枚の名刺を渡した。


「はぁ」


「もしかしたら、あなたのお役に立てるかも。大丈夫?一人で帰れるかしら」


「失礼します」


 正木は受け取った名刺を上着のポケットに押し込み、ホームを走って駅を出た。


 翌朝、正木は強烈な胃の痛みに襲われた。とても出勤できる体調ではない。


[休みというのは、怠け者が求めるものだ]


「俺は怠け者なんかじゃない!」


 何とか着替えて家を出る。


「圭一、そんな体調では無理よ。有休あるんでしょ!」


 母が必死で止める。


「母さんにはわからないんだよ。全ては気合なんだよ」


 母親が両手で正木の頬を抑えた。


「圭一、あなたはどうかしてる!あなたもあなたの状況も普通じゃない!」


「頼むよ放っておいてくれ、俺は大丈夫だから」


 母親の手をはねのけ、無理に家を出た。


「胃が痛い?それはこっちの台詞だよ、お前が結果出さないから」


 職場に着いて、早速上司にそう言われた。


「すみません、僕が悪いんです」


「そう思うなら、一つでも多く結果を出せ。病は気からだ。気合で治せ」


 しかし、胃の痛みは更に強くなり、体を前かがみにしなければいられなかった。額には脂汗が止まらない。


 電話を持つ手に力が入らず、ペンを持つ手は震えて字が書けない。


「正木君、だいぶ体調悪いようです。今日は帰らせてあげた方が…」


 見かねた同僚が、上司に進言する。上司は大きなため息をついた。


「仕方ないな、じゃあ今日は帰れ。明日はまた一番に来いよ。それから、今日の分は欠勤処理だからな」


「すみません…」


 会社を出たものの、正木の息は荒くなり、真っ直ぐ歩けなくなっていた。


「俺…もう駄目かも…」


 正木の視界は、ゆっくりと暗くなっていった。


労働法令の確認に一部生成AIを使用しております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ