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竜好きのオレ、ドラゴンの世界に転生して聖竜になる。  作者: 岩田 巳尾


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『それぞれの報告』 その14

 ジャックの熱弁に、エイラは微笑んで言葉を返した。


「フフ……。ジャック? 引退後は書庫長の後を継いで、書庫で執筆をしたらいいんじゃないですか? なかなか面白いお話だと思いますよ?」

「エイラ……! 俺は冗談で言っている訳じゃないんだ」

「フフ……。でも、今のは全部……ジャックの想像でしょう?」

「……そうだ。……だが、エイラは断言しなかっただろう?」

「……何をです?」

「『浄化』についてだ。ショーナが言った『浄化』について、エイラは……そういった魔法があるとも、ショーナにそういった力があるとも言わなかった。それなら……」

「フフ……」


 途中でエイラが笑い始めた事で、ジャックは言葉を止める。すると、エイラは満面の笑みをジャックに向け、口を開いた。


「確かに、私は『ある』とは言いませんでしたよ? ……でも、『無い』とも……言いませんでしたよ?」

「……!」


 はっとしたジャックに、エイラは微笑んで続ける。


「それに……。ショーナは賢いですが、そんな芝居を打てると思います? あんなに真っ直ぐな子が、大勢の前で……一芝居打てると思います?」

「それは……」

「フフ……。仮に芝居だったとして、全てがウソだったとして……。それで誰かが不幸になりました? 誰かが不利益を被りました? 誰かが命を落とし、傷付き、悲しみに暮れる日々を送る様になりました?」

「い、いや……それは……」

「そして、仮にそれが芝居でないのなら、それは当然……本当の事になります。ですが……。何が『本当』で、何が『ウソ』で……。何が『正しく』て、何が『間違い』なのか……。それは『見る側』と、『何を見るか』によって変わってきます。

 ジャックの想像は本当の事かもしれませんし、ただの妄想かもしれません。でも……それはこの場では分かりません。そこにあるのは……『ショーナが場を丸く治めた』……という事実だけです。……違います? ジャック」

「……そうだな」


 ジャックは少し苦笑いをしながら、右手の指で顔を掻いて相づちを打った。すると、ここでジョイが微笑みながら口を挟む。


「時々、そうやって真面目になるんだから……。報告の時、ずっとそういう風にしてくれれば、私達も気苦労が無いんだけど」

「あら! 私は普段から真面目ですよ? 報告だって、真面目に聞いているじゃないですか」

「……どこがよ……」

「フフ……。真面目に聞いていますよ? 真面目に羽目を外して」

「……そういう所よ、エイラ」

「フフ……」


 ジョイの言葉に、満面の笑みで答えたエイラ。彼女は少し間を置き、ジャックに微笑みを向けて話を促した。


「それで……。ショーナがさっきの事を言って、丸く治めた……。そういう事ですね? ジャック」

「あぁ。……まぁ、もう少し正確に言うと、ショーナがさっきの事を言った後、それを信じ切れなかった連中に、フィーが怒ってな……。それで戦闘部隊の連中はまとまった感じだな」

「あら! じゃあ、フィーが『サルの一声』を上げた、という事ですね?」

「『ツル』よ」

「フフ……。細かい事はいいじゃないですか。サルでもツルでも同じですよ」

「…………」


 満面の笑みで言うエイラに、ジョイは呆れ顔でため息を吐き、それ以上、突っ込むのをやめた。そんなジョイの隣で、ジャックは腕組みをして話しを続ける。


「……それで一連の戦いは終わりだ。その後、ジョイがまた戻ってきて……。友好派と人間達は帰り、俺達も帰路に就いた」

「……分かりました」

「あぁ、それと……。報告という程ではないが、それに関連する事で、三つ程……話がある」

「あら、何ですか?」


 これで終わると思っていたエイラは、きょとんとしながらジャックに聞き返していた。当のジャックは少し真剣な顔付きで、腕組みを続けながら口を開いた。


「……一つ目は……ジコウの事だ」

「あら! ジコウの件は、もうお話ししたではありませんか。これまで通り……」

「違う、その件じゃない。……ジコウは最初、ショーナ達に……『戦う理由を見付けた』と言って、姿をくらませたそうだ。俺達はショーナとフィーから、最初の日に……そう報告を受けている。

 ……だが結局、ジコウの言う『戦う理由』は分からず仕舞いだ。取り調べも出来ないから、聞くに聞けないしな。

 これについて……、エイラは何か思い当たる事は無いのか?」


 ジャックの問いに、エイラは微笑んで答える。


「フフ……。ジコウは率先して訓練をしてくれたんですよ? だから……」

「いや、ちょっと待ってくれ、エイラ。それは『結果的にそうなった』だけであって、最初からそうだった訳ではないだろう?

 それに、ジコウの言う『戦う理由』が、エイラの言う訓練と……結び付くとは思えん。仮にジコウが、最初から率先して訓練を行ったとするなら、何故ジコウは……姿をくらませる時に『戦う理由を見付けた』などと言う必要がある? わざわざ、そんな意味深な事……言わなくてもいいだろう?」

「…………」

「俺の考えはな……。やはりあいつは、何か特別な意志を持って行動に出たと思っている。俺がさっきジコウの件を話した時、『表向き』と言ったのは……こういう理由があったからだ。

 ……エイラ。表向きに、全てを訓練としたのは理解する。だが……ジコウに関しては、どうしても腑に落ちん。あいつは何かしら理由があって、集落を出たハズだ。そうでなければ、あいつはショーナ達に『戦う理由』などと言わんだろう」

「…………」


 真剣な顔で説明を続けたジャックだったが、エイラはただ静かに微笑み、それを聞いているだけだった。


「……なぁ、エイラ」

「……何ですか?」

「……何か俺達に隠してないか?」

「……何を隠すって言うんです?」

「さっきジョイも『わざとらしい』と言っていただろう。俺も……どうも引っ掛かる」

「……気にしすぎなんですよ、ジャックもジョイも」

「…………」


 ジャックは先程のジョイと同じ様に、エイラに鋭い視線を送って彼女の言動を見定めている様だった。その隣では、口数が少なくなったジョイも同じ様に、エイラににらみを利かせている。

 そんな二頭を前に、エイラは表情を変える事無く、微笑んだまま続けた。


「それなら、はっきり言ってみて下さいよ。……その『引っ掛かる事』を」

「……はっきりとは言えない。……ただ漠然とした引っ掛かりがあるだけだからな」

「……聞きますよ? ジャック。……私、毎日退屈ですから」

「…………」

「漠然と引っ掛かっているなら、それをそのまま言ってみればいいじゃないですか。私、聞きますから」

「…………」


 ジャックはエイラに鋭い視線を送ったまま、鼻で小さくため息を吐いて間を置き、思っている事を打ち明けた。


「……そもそも、エイラの部屋で起こった爆発から不自然だった。その爆発が起こった直後、ジコウはショーナに『長が襲われた』と言い、襲ったヤツを追い掛けて一本道に出ている。そしてジコウは姿をくらませた。『戦う理由を見付けた』と言ってな。

 なのに、その爆発がジコウとは無関係であるかの様に、エイラは『自分がクシャミをした時の誤射』だと言った。……自分のクシャミによる誤射であるにも関わらず、わざわざ残留魔力を消して……だ。

 何故、残留魔力を消す必要がある? さっき『第一号』と言って、はしゃいでいたのはエイラだぞ? それなら、残留魔力を消す必要は無いだろう?」

「……私も最初は慌てていたんですよ。だってクシャミでブレスを誤射するなんて、初めての事でしたから」

「……エイラ、俺達もバカじゃない。……俺にはな、エイラがジコウをかばっている様に見える。

 ……あれはジコウが撃った。エイラはそれを分かって、残留魔力を消した。そして……あの一連の騒動を訓練にして、ジコウを『おとがめ無し』にした。……違うか?」


 ジャックの力説を、エイラは不敵な笑みを浮かべて静かに聞いていた。しかし……


「フフ……フフフフ……。アハハハハハハッ!」


 堪え切れずに、腹を抱えて大笑いしだしてしまった。突然の事に、ジャックとジョイは目を丸くして呆気に取られている。

 ひとしきり大笑いして落ち着いたエイラは、右手で涙を拭いながらジャックに言う。


「なかなか……面白いお話じゃないですか……。やっぱりジャックは……お話を書いた方がいいですよ……。お腹痛い……」

「エイラ……」

「フフ……。推理物のお話でも書きます? この一連の出来事を題材にして、書庫に残しましょうよ。……きっと、後世に読み継がれますよ」

「エイラ……!」

「あっ! ちゃんとショーナとフィーはくっつけて下さいね! ……フフ」

「…………」


 満面の笑みで言うエイラに、ジャックは顔をしかめながら呆れ、ため息混じりにうなって右手で頭を掻いた。

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