3-1 ロイとの出会い
私が街へ出る事になってからも大変だった。
まずは服装、1日着るだけなのだから、
古着でいいと思うのだが、
パパがわざわざ職人を呼んで、オーダーメイド
で作成する事に。
あまりにも良すぎると、犯罪者から狙われる可能性
もあるので、どこにでもある一般人の服装を希望。
でも品がある事にパパがこだわり、
職人の手作業で、分かる人には作りの良さが、
分かってしまう一品に仕上がってしまった。
とはいえ、デザインはありきたりなので、
普通の人がその差に気づく事は
まあないだろうと、デザイナーの人は言っていた。
一部、布が擦れているようなのも、
わざわざ加工してダメージを作ってくれたようで、
その職人技に拍手を贈りたくなってしまう。
「どうしても行くのかい?」
隣の国に、数か月行くかのような、
大袈裟かつ神妙な表情でパパが聞いてくる。
「ほんの1日、2時間歩き回るだけよ、
行くのも、市民が沢山いる安全な所だし、
この格好をしていれば、何も問題ないわ」
ちなみに、その2時間の為に、
パパが歩く予定の街の管理者を呼び
講習を行ってもらっている、
なので、街へ行く前から、地理はばっちりで、
どこに何があるか把握しており、
行きたい場所も、全てチェック済みである。
それにはクッキーの専門店も含まれており、
自分の提案したお菓子が、
どんな風に街に溶け込んでいるか、
自分の目で見るのを楽しみにしている。
「じゃあ、行ってくるね!」
そう言うと、出る事ができる使用人は、
全てじゃないかと言う程、使用人やメイドが、
玄関にズラリと並んでいる。
「えっ、どうしたの?」
あまりもの、迫力ある光景に、
目を見張ってしまう。
「いってらっしゃいませ、お嬢様」
執事の合図に合わせ、全員が復唱する。
これは、無事に帰らないと、大変な事になりそう。
街の探検と気軽に考えていたのに、
パパと使用人達の大袈裟な態度に、
気を引き締めたのだった。




