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14歳の誕生日が過ぎて、数か月経った頃、
パパが私を談話室に呼び出した。
談話室は、いわゆる接待用の部屋で、
家の中でも一番豪華絢爛な部屋である。
照明はシャンデリアだし、
ふかふかの赤い絨毯が敷かれている。
調度品は、普段から使用人によって、
ぴかぴかに磨かれており、
全てにおいて、まったく隙がない。
そんな部屋にパパに呼び出されると言う事は、
何か重要な話でもあるのだろうか。
「お話って何?パパ」
「ああ、フェデリアよく来たね」
パパは機嫌はいいが、どこか緊張しているようだった、
そんなパパの様子は珍しく、首をかしげる。
そんな私を後目に、使用人に「あれを」と
合図を送る。
すると、しばらくして、
お茶専用のカートに乗せられたケーキが、
運ばれてきた。
「わあ」
思わず言葉がこぼれる。
そこにあったのは、ところせましとフルーツが、
ふんだんに乗せられた、フルーツケーキだったのだ、
「作ってくれたのね」
「ああ」
その割には、パパの顔が硬い、
何か問題でもあったのだろうか。
「実は・・・すまん!
あまりの美味しさに、公爵様への手土産にしたら、
公爵様が、王に献上したいとおっしゃったのだ!
公爵様からの要望、子爵家ごときが反対できず、
王に献上される事となった!!!」
あまりの大事に、私の口がポカンと開く。
王様、献上?あまりの遠い世界の話に、
すぐに反応できず
「えっと、良かったです?」
と何とか返す。
その言葉にパパはやっとほっとした顔をして、
何やら硬貨をテーブルに置いた。
「これは、王からの報奨金だ、フェデリアにこそ
相応しい」
テーブルに置かれたのは金貨、
ざっと見積もっても200万ぐらいはある。
「えっと、銀行に振り込んでおいて」
「そうだな、口座を作っておこう」
ケーキ一つで200万・・・・
王様ってやっぱり凄いのですね・・・・
「後、お願いがあるのだが」
「何?」
王様に献上され、なにやら素晴らしいケーキ
になったらしい、フルーツケーキを
食べながら答える。
「この前の誕生日の日に、リタに指示をした、
クッキーと言うお菓子があるだろう?」
「はい」
日本の知識で再現したクッキーは、
そのままこの国でもクッキーと私が名付けていた。
「そのクッキーの専門店を開きたいのだ、
プレーンのクッキーの他に、
チョコレート、アーモンド、紅茶の葉を入れた物、
絶対儲かる!
じゃない、この国の人に幅広く食べてもらいたいのだ、
報酬として、売り上げの1割はフェデリアに支払う、
どうだ、許可してくれるか?」
私は娘なので、黙って店を開いてもいいような物だが、
この国では発案者は大事に保護される、権利社会なのだ、
パパも商人と言う立場上、ちゃんと手順を踏んで、
店を開こうとしているのだろう。
「うん、いいよパパ」
正直、事の大きさ、重大さが実感できないので、
気軽にうんと言う。
この国の人が、手軽にクッキーを食べれたら、
私も嬉しいものね。
そう言うと、パパはがばっと私を抱っこした。
「ありがとう、他にもアイディアがあれば、
いつでも言っておくれ」
「それなら、ホットケーキも食べたい」
「ホットケーキ!また新しいお菓子か!
我が娘ながら天才だ!すぐにリタに指示を!」
いつもよりテンションが高いパパに、
微笑みながら話す。
「まだ、ホットケーキがこの国の人に、
受け入れられるか分からないのに・・・・
あ、それとお願いが・・・・」
「なんだい」
「リタのお給料、成人の料金を支払って欲しいの」
リタが作ってくれたクッキーを食べて感じた。
リタは単にレシピ通り作るだけでなく、
この国の人に受け入れ易いよう、
材料の調合を変えてくれている。
そういった、彼女の努力に報いたいのだ。
共働きか、仕事によって差はあるが
この国の月の平均月収は5万程度。
この屋敷の給料はいい方のはずだが、
子供はどれだけ働いてもそれよりずっと少ない。
大人と同じ給料がもらえれば、
好きな物ももっと買えるはず。
「それぐらいお安い御用だよ、
リタも貢献してくれている、その願い叶えよう」
「それともう一つ」
「なんだい」
機嫌のいいパパはほくほく顔で聞いてくる。
「1人で街へ行ってみたいの」
「街へ?」
ほくほく顔だったのが、一気に渋面になる。
「治安のいい場所しか行かないわ、
行き帰りは馬車でいいし」
「買い物なら、品物をいくらでも持ってこさせる!」
「ううん、街を歩いてみたいの」
「なら、せめて護衛を」
「そんな事したら、街に溶け込めないわ」
本の世界に転生して、裕福な生活をして、
ほとんど不満がないが、その少ない不満の一つが、
街へ行けない事。
品物は、パパが用意してくれるし、
服は職人を屋敷に呼ぶ。
なので、街を散策した事がなく、
せっかく本でヨーロッパ風の街並みだと知っているのに、
それを見た事がない。
庶民の料理は食べている。
しかし、料理人が調理した料理ではなく、
本当に屋台で売っている料理が食べたい。
ずっとそう思っていたのだ。
「ううう~む、なら、男装が条件だ!」
「本当!ありがとうパパ!!!」
男の格好をするなんて、絶対諦めるとパパは
思っていたようだが、元日本人、
ジーパンも履きますし、女性がショートカットも
珍しくはありません。
まだ、「男だぞ?本当にいいのか?」
と言い募るパパを後目に、
初めての街の散策に、胸を高鳴らせていた。




