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インディ娘ちゃんのノーテンキ学園冒険隊  作者: マックロウXK
第六章 最終決戦

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聖女たちの願い

 絶対絶命のピンチだと思われた。

 だが。

 聞いた者は抗えないはずの山瀬の言霊(ことだま)に逆らい、クラウドは思いっきり顔を背けている。

 予想外の事に、山瀬は首をかしげる。


「…………あれ? もう一度言うわ。私の()を見なさい……」


 やはり、クラウドは変わらず目を合わそうとしない。

 山瀬は回り込んで、クラウドの顔を正面から見据えようとしたが、クラウドはそっぽを向く。

 再び山瀬は反対側に移動したが、またしてもあさっての方角を向かれる。


「……ねえ? なんで、瞳を見ないの?」

「いや、だって、恥ずかしいし……」

「なに純情ぶってんの。目が合わないと、術を掛けられないじゃない。私の瞳を見なさいよ」

「そんなこと言われても……」

「思い出したぞ!」


 突如声を上げる、シリアス続きで出番が無かった、雨森ブラザーズの南斗。


「どうしたの、何を思い出したの?」

「巨乳好きが目立ちすぎて忘れてたけど、本来クラウドは女の子とろくに話も出来ない、シャイボーイだった!」

「そういや、そうだったなー。玲華さん美人だし、クラウドに目を合わせろって言われても、できたもんじゃないよなー」

「何ですって!?」


 それを聞いた山瀬は、両手でクラウドの顔を挟み込み、無理やり視線を合わせようとする。

 だが、クラウドは、今度は山瀬の胸の谷間をガン見する。


「ちょっと、どこ見てるの! 私の瞳を見なさいってば!」

「そんな事を言われても、おっぱいから目が離せないでごわす」

「急に鹿児島弁になるな! 私の瞳を、見なさいっての!」

「むむむむむむむ、無理でごわーす!」


 力ずくで視線を合わせようとする山瀬だったが、どうあがいてでも胸を見続けようとするクラウド。

 先程とはうって変わって、コミカルな戦いを繰り広げる2人。

 その不毛な攻防を見て、周りの者たちの反応は。


「さっきまでめちゃくちゃ緊迫したシーンだったのに、何やってんだ、あいつらー」

「もう、完全にコントだなー」

「あたし、クラウドくんのおっぱい好きをみくびってたよ……。まさか、洗脳に打ち克つほどのものなんて……」

「三雲くんって、面白い方ですわ~」


 膠着状態のまま、時は過ぎ。

 5分後。


「勝ったーっ!」

「ま、負けた……」


 床に突っ伏して、ガックリと肩を落とす山瀬。


「まさか、私の瞳術が、こんな事で破られるとは……」

「むっつりスケベで良かったー!」


 誇らしげな顔で、勝どきを上げるクラウド。


「あいつ、あんな事言ってら」

「アホだ。あいつは、真性のアホだ」

「クラウドくんが無事で良かったけど、なんだかなあ」

「チッ、くだらねえ……」


 瓦礫の山がガラガラと崩れ、雹河が悪態をつきながら立ち上がる。


「氷室さん! ご無事でしたの?」

「せっかく、女の足を舐める三雲を笑ってやろうと思ったがな……」

「あ? お前、とっくに起きてたのか?」

「はっ、あの程度でボクがやられる訳がないだろうが」


 言いながら、ゆっくりと雪姫の横を通り過ぎる雹河。


 バキャッ!


 雪姫を押さえ付けていた考古研の男たちが、同時に吹き飛んで倒れる。

 一瞬の内に、全員顎の骨を砕かれていた。


「汚い手で、依頼人(そいつ)に触るなよ……」


 そう言って、赤い絨毯の真ん中に立つと、雹河は山瀬を()め付ける。


「そろそろ終わりにしようか。このくだらねえ茶番も、てめえの野望もな……」

「くっ……!」


 山瀬はローブの裾を翻しながら、飛びずさって間合いを取り。


『力を解き放ちなさい!』


 山瀬の声に玉座の脇に控えていた、オーロラの一の下僕と名乗っていた人物が反応し、身体が膨張して服が弾ける。


「この方は、最初から私に非常に協力的で、肉体改造もむしろ自分から進んで受けられた、いわば最強の『改造人間(ブーステッドマン)』です」

「グルルルルル……」


 獣のような唸りを上げて、今にも飛びかからんとする男。


()きなさい! そして、彼をズタズタに引き裂いてやりなさい!」

「ガアアアアアアアアアアッ!」


 高い跳躍から、一気に雹河に襲いかかる強化人間。

 だが、雹河は冷静に男の顎に右の掌底を撃ち込み、空いた腹に左の掌底を叩き付ける。

 吹っ飛んでいく敵のその先に、すでに待ち構えている黒コートの探偵。

 雹河は男の頭をガゴギッと、頭蓋骨を砕くかのように踏みつけた。


「……で、何が最強だ?」

「くっ……、『全員、力を解放なさい!』」


 考古研部員が全員、貫頭衣を引きちぎりながら、先程の男と同様の全裸の筋肉ダルマに変わる。

 男たちから解放されたクラウド達は、雪姫を中心に一かたまりに集まった。


「ねえ、これって地味にセクハラじゃない? 目のやり場に困るんだけど」

「じゃあ、こうやって防いどいてやろうか?」


 クラウドは、中華ナベで晴海の顔を隠す。


「それじゃ、前が見えないよ!」

「てめえらは下がってろ、ボクが全員ぶちのめしてやる」

「いえ、あなたはもう、これ以上手を出さないで下さい」


 臨戦態勢の雹河を制し、前に進み出る雪姫。


「山瀬さん、もう上沢高校から手を引いてください。わたし達がすでに救い出されている今、これ以上の抵抗は無意味ですわ」


 雪姫は、今までのふわっとした雰囲気とは違い、貴婦人のような毅然とした態度で訴えかける。

 対する山瀬は、焦りの表情を見せながらも、それでも闘う意志を崩さない。


「いえ、まだ諦めません……。奪還されたのなら、再び奪うだけの事。考古研の皆さん、殺さない程度に痛め付けてやりなさい!」


 強化人間たちが、一斉にクラウドたちを襲う。


「雪姫!」


 晴海は戦う術を持たない雪姫をかばおうと、前に出ようとするが間に合わない!

 雪姫は、胸の前で祈るように手を組みながら、ひざまずく。


「もう、争いは止めてください。わたしは、同じ学校の人達が傷つけ合うのを見ていられません……」


 雪姫の瞳から、宝石のような涙が零れ落ち、床の上で弾けた瞬間。

 男たちの動きがピタリと止まった。


「どうしたのです! 彼らを叩き潰してやりなさい!」

「あなた方は本当はこんな事をしたくないはず、わたしには分かります。わたしは何をされてもかまいません。ですが、皆さんには手を出さないで下さい。お願いします……」


 雪姫は頭を垂れて祈りを捧げる。

 その姿に、敵味方関係なく全ての者に注がれる、聖女の慈愛を感じられた。

 すると。


『グギャアアアアアアアアアア!』


 強化人間たちは一斉に頭を抱えて、悶え苦しむ。


「なんだなんだ? どうしたんだ!?」

「玲華さんの命令と、雪姫の優しさの間で葛藤してるんじゃないかな。たぶん……」


 晴海はそう言って、親友の姿を温かく見守る。

 敵の一団は1人また1人と倒れていき、とうとう最後の1人まで倒れて動かなくなった。


「……やはり、貴女こそがカリスマ教の天敵となりうる存在。後の禍根となる前に、今ここで仕留めます!」


 山瀬は雪姫に向かって、毒蛇のように黒い鞭を撃ち放つ。

 だが、間に割って入った雹河に受け止められる。


「てめえの技は見切った。何度も食らうかよ……」


 雹河は蒼い左手で握り潰すと、先端から鞭が凍り付いていく。


「私のムチが……」


 山瀬は柔軟性を失い、ただの固体と成り果てた鞭を、たおやかな白い手から取り落とす。

 次々に手札を失い、追い詰められていく山瀬。


「さて、どうする? 五分刻みに解体(バラ)されるか、氷漬けになって永遠に眠るか、どっちか選べよ」


 蒼いグローブをパキパキと鳴らし、悪魔のような選択を迫る雹河。

 ジリジリと山瀬を取り囲むクラウドたち。

 だが。

 その前に、フェルトの帽子の少女が立ち塞がった。


「晴海?」

「みんな、もうやめよう……」


 晴海は、背後の山瀬に語りかける。


「ごめん。あたし、玲華さんの気持ちを理解したい、友達になりたいなんて言いながら、ちっとも分かっちゃいなかった。でも、ようやく分かったよ……」


 晴海は、眼前の仲間たちに語りかける。


「玲華さんは独りぼっちになるのが怖いだけなの。だって、あたしもそうだから、痛いほど良く分かる。だから、玲華さんはちっとも悪くないの!」


 すがるような晴海の言葉に、戦いの構えを解く男たち。

 晴海は、山瀬の方に向かい合い。


「ごめんね、玲華さん。もっと早く、本当の気持ちを分かってあげれたら良かった……。でも、もう大丈夫。あたし、玲華さんについていくよ。なんなら洗脳してもらっても構わない」

「晴海!?」

「晴海ちゃん!?」

「あたし、もう決めたの。あたしは玲華さんの事を放ってはおけない、独りぼっちにはさせられない。あたし達は似た者同士。合わせ鏡のような存在だって分かっちゃったから」

「晴海……、行くな! オレはまだ……」

「クラウドくん、ごめんね」


 晴海は仲間たちに晴れやかな、だが、固い決意に満ちた表情を見せて。


「玲華さんの夢を叶えて、戻ってくるのに何年もかかるかもしれないけど、信じて待ってて」

「……」


 晴海はまっすぐにクラウドを見つめる。

 その眼差しに、彼女の意志の強さを十分に理解しているクラウドは、それ以上何も言えなくなる。

 山瀬は、晴海の顔にゆっくり両手を添える。

 固唾を飲んで見守る、仲間たち。

 山瀬が持つ、その赤い瞳が光る……。


 みにょーん!


 山瀬は、晴海のほっぺたを白い両手で引っ張った。


「れ、玲華ひゃん!?」

「あっはっはっはっはっ、面白い顔!」


 山瀬は変形した晴海の顔を見て、お腹を抱える。

 涙を流して笑い、ひとしきり笑った後、涙を手で拭って。


「まいった。私の負けよ」

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