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インディ娘ちゃんのノーテンキ学園冒険隊  作者: マックロウXK
第二章 上沢高校を巡る陰謀

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邪教集団?

「助けて頂いて、どうも有り難うございました」


 三つ指をついて、お礼の言葉を述べるオカルト女。

 あまりの殊勝さと胸の谷間に、危うく呪い殺される所だったのだが、不思議と腹が立たない。


「お礼に、呪いの藁人形を御土産に差し上げます」

「あ、ありがとうございます」

「それ、もらってどうするの?」


 なぜか藁人形を受け取ろうとする晴海に、クラウドはツッコむ。


「だって、人の好意はむげにできないもん」

「そりゃあ、そうだけどさ」


 妙にお人好しなところがある晴海。

 なんだか危なっかしいなあと思うクラウド。

 そこへ、ブラザーズがニヤニヤしながらやって来て、オカルト女を指差しながら。


「ほれ、見てみろー」

「お前の大好きな巨乳だぞー」

「シッ、声がデカいって。オレ、ケバいおっぱいはちょっと」


 と、好みの範疇じゃないらしく、ふるふる首と手を振るクラウド。


「じゃあ、御土産をもらう代わりに、一つ質問していいかな」

「私に答えられる事なら、なんなりと」


 晴海の問いかけに、素直に頷くオカルト女。

 おっぱいの大きな人に悪い人はいないという。

 この人も見かけによらず、いい人みたいだ。


「さっき言ってた『カリスマ教』って、何の事?」


 オカルト女は、ひいーと言いながら、やにわに後ずさる。


「すいません、すいません、それだけはご勘弁を」


 カタカタ震えながら、両肩を抱くオカルト女。

 晴海は、脅えるオカルト女の正面にしゃがみ込み、肩に優しく手を添える。


「怖がらないで、この学校に関わる重要な事なの、お願い」


 晴海の目に宿る優しい光を見て取ったのか。


「分かりました、誰にも話さないと約束して頂けるなら、あなた方にはお話します」


 晴海はクラウドたちの方に顔を向ける。

 意を介して、無言で頷くクラウド。


「約束するわ、詳しく教えてちようだい」


 オカルト女は姿勢を正すと、ぽつぽつと語り始めた。


「『カリスマ教』は、最近、ある霊能者によって創設された宗教団体だと聞きます。新興宗教は今となっては珍しい物ではありませんが、この宗教が他と(おもむき)を異にしているのは、教祖も信者の対象も中・高校生であるという事です」

「中・高校生が信者だって?」

「はい。この宗教の基本方針は『世界の改革』。汚い大人によって形作られ、嘘で塗り固められたこの世界を、自分達の手によって作り変えるのを目的としていると聞きます」

「ふーん、それは大層なお題目で」

「変な名前の教団のくせになー」


 聞いた風な、陳腐なフレーズ。ブラザーズもバカにしたように名前をいじる。


「もちろん、思想の自由というのもありますし、掲げている考え方自体は悪くないと思います。ですが、良くない噂も耳にします」

「例えば?」

「具体的には分かりませんが、運営資金や信者を蓄える為に、かなりの残虐な行為を行っていると耳にしました」

「でも、そんな奴らがいたとしても、どうせ子供のお遊びみたいな物だろ、放っておいたらいいんじゃねーか?」


 ニュースやワイドショーなんかで、宗教団体の話は見聞きするが、結局はそいつらと関わらなければ、何も面倒は無いはず。


「そうかもしれませんが、こんな噂も聞いています。カリスマ教が布教の手を、この上沢高校に伸ばしていると」


 クラウドたちの背筋に、戦慄が走る。


「すると、何か? 上沢高校に、そのカリスマ教の刺客がいるってのか?」

「そりゃ大変だー」


 口調からは分からないが、焦っているブラザーズ。


「やっぱり……、邪教集団が絡んでいたのね。生徒会役員の誘拐事件、考古研、カリスマ教、だんだん繋がりが見えて来たわ」

「はい、私は生徒会役員が失踪したと聞いて、カリスマ教が裏で手を引いているとニラんでいました。そこで、私は行動に移したのです!」

「ヘー、どんな事?」

「悪魔を呼び出し、カリスマ教に呪いをかけようと、徹夜で召喚呪文を唱えていました。さあ、皆さんもご一緒に祈りを捧げましょう!」

「さ、必要な事は聞いたから、みんな帰るわよ」


 晴海たちは、そそくさと部屋から出て行こうとする。


「お願いします! まとまった人数で円を描いて唱える方が効果が高いのです」


 追いすがるオカルト女を、晴海は振り向き様にデコピンを食らわす。


「あうち!」

「あたし、他力本願ってあまり好きじゃないのよね」

「さあて、オレも行くかなっと……」


 クラウドも晴海たちの後を追おうとする。

 すると、オカルト女はクラウドにしなだれかかり、甘い声でささやきかける。


「ねえ、お姉さんがイイコトを教えてあげるから、一緒にお祈りしません?」


 耳に息を吹きかけながら、肩に回した手でクラウドの髪を撫でる。


「今なら、お札セット3枚組も付けるからお得ですよ、どう?」

「どうと言われても、いや、まいったな……」


 手慣れた手つきで、クラウドの乳首の場所などを刺激するオカルト女。


「あなた、さっき巨乳が好きだって言われてたわね……。なら、こういうのはどう?」


 オカルト女は自分の豊満な胸に、クラウドの顔を押し付ける。

 推定Fカップの巨乳と、オリエンタルテイストのお香の香りに包まれて、クラウドの意識は時空を超えた。


 この、全てを包み込む感覚は……そう、ガンジス川!

 悠久にたゆたうその大河は、そこに生活する全ての人たちを、受け入れ、育み、慈しむ。

 このおっぱいもガンジス川と同じく、清濁関係なく全てを包み込んでいくのだろう。

 ケバい化粧は仮の姿、クラウドはおっぱいを通じて、彼女の人となりを理解した。


「……わかりました。僕、オカルト研究会に入ります!」

「じゃあ、これ入部届ね。サインをお願いします」

「はい!」


 ボールペンを手渡され、サインをしかけるクラウドの後頭部に怒りの鉄槌!


「はい、じゃないわよ! 何やってんのよ! クラウドくん!!」


 晴海が放ったパチンコは、クラウドにジャストミート。


「ほら、ブラザーズくん達! とっとと運び出して!」

「インディ娘ちゃん、怖えー」


 怒髪天の晴海。命令に素直に従うブラザーズ。


「お邪魔しましたー」


 呆気に取られるオカルト女を尻目に、晴海たちはオカルト部を後にした。



 *



「あんな色仕掛けに引っ掛かるなんて、情けないぞクラウドー」

「しょーがねえだろ、あんなん引っ掛からん方がおかしいぜ!」


 言った後、クラウドは背後から殺気を感じる。

 キリキリキリと、からくり人形の様に首だけで後ろを見ると、晴海が凄い形相で、こちらを睨んでいる。

 怒った顔も可愛いというレベルではない。

 元が可愛いだけに、非常に恐い。


「あ、夏山さん、これは……」

「何デレデレしてんのよ! クラウドくんのエッチ!」

「さすが、おっぱい教信者のクラウド」

「インディ娘ちゃんも気を付けた方がいいよー」

「ブラザーズ! よけいな事言うなよ!」


 火に油どころか、核燃料を注ぐブラザーズ。

 晴海は、形のいいあごに指を当てて考えた後、一言。 


「そうね、肝に銘じておくよ」

「夏山さんも……もう、勘弁してくれよ……」


 自分への呼び掛けに、晴海はキッとクラウドを睨むと。


「あたしの事は、インディ娘ちゃんって呼んでって言ったよね。何で、あだ名で呼んでくれないの!」


 晴海の剣幕にムッとしたクラウドは、思わず本音を言う。


「インディコなんて、呼びにくいし、恥ずかしいし、なんか変だろ!」


 そのセリフを聞いた晴海は、急に顔色を変える。

 そして、何も言わずにその場から立ち去っていった。


「……なんだよ、急に」


 雷也は、ふてくされるクラウドの肩をポンポンと叩き。


「『女人(にょにん)小人(しょうじん)は養い難し』でござるよ」


 雷也から放たれた台詞を、クラウドはしっかりと噛みしめる。


「言葉の意味がわからねえ……」


 クラウドは、にょにーんと精進(しょうじん)料理のゴマ豆腐が伸びる姿を想像したが、たぶん違うなと思った。


「せっかく情報が出揃って来たけど、なんか雲行きがあやしいなー」

「そだなー」


 先程まで真上から照らしていた陽光に陰りが見え、太陽が雲に隠れていた。



「なんか変だろ、か……。クラウドくんにも、そんな風に思われてたのか……」


 仲間たちから離れた晴海は、寂しげな表情でそうつぶやく。

 そして、自分のささやかな胸を見つめ、はーっと深いため息をついた。

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