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第四話 ドール

「あのドールがこの村につい先ほど来たそうだ。明日、挨拶に行かないとな」


 俺の今世の父親、レインが食卓で嬉しげに語った。


「お父さん、ドールって誰?」


「おお、以前この村を魔物から救ってくれた英雄さ。普段は旅をしているんだが、たまにこの村に来てくれて、周囲の森の魔物を狩ってくれる、すごい人なんだ」


「あなた、魔物とか英雄とか言ってもまだわからないわよ」


「おお、ごめんなアレン。とにかく強くてかっこいい魔法使いなんだ」


 それを聞いた僕は、思わず目を輝かせた。


「魔法使いなの!僕、魔法知りたい!」


 想いと比例するように大きな声が喉から出た。


「はは、アレンは本当に魔法が好きだなあ。じゃあお話聞かせてもらいに、会いに一緒に行こうか」


「うん!」


 僕は続く父の言葉をあまり聞いていなかった。


 そんなことよりも嬉しかったのだ。


 本職の魔法使い!どれだけすごいんだろう!魔法を教わることができるかもしれない。

 それだけでワクワクしていた。


 僕は一人では魔法を使えなかった。いろいろ努力をしてみたけど、どれも実らなかった。

 それが解消するかもしれない。

 その夜は興奮でいつもより寝るのが遅くなった。


 ---


 ドールは白くて長い髭を蓄えた、穏やかな眼差しをしている白髪の老人だった。

 村に生えている一本の大樹を見ながらパイプをふかしていて、灰色のローブに白い杖を携えていた。


「ドール様、こんにちは。ちょうど良かった。挨拶に参ろうとしているところでした」


 レインがお辞儀をしながら話しかけた。


「おお、確かレインだったか。元気にやっていたかね」


 煙を吐くと、ゆったりとドールはレインに話しかけた。

 その姿には静かな威厳と静謐さが存在した。少なくとも、俺はそう感じた。


「はい、なんとかやれています。全てドール様のおかげです」


「そうか、それは良かった」


 ゆっくりと目の皺を深くしてドールは微笑んだ。


「ん、子供ができたのか?」


 ドールは俺に気がついたようだった。


「はい、アレンと申します。二歳になります。ほら、アレン。挨拶するんだ」


「アレンと申します。よろしく、お願いします。」


「ほほう、利発そうな子じゃな。成長が楽しみじゃ」


 ドールは俺に向かってにっこりと笑った。


「あの、ドール、さん」


「ん、なんだい?」


「僕に、魔法、教えて」


 ドールは眉を上げて意外そうなものを見るかのような目で僕の方を見た。


「アレン君は、魔法に興味があるのかい?」


「うん」


「そうかー偉いなあ。いずれ魔法使いにでもなるのかな。焦ることはないよ。きっといずれ誰かが教えてくれるさ」


「でも、僕は今、教えてほしい、です」


 僕はなんとか言葉を振り絞った。


 このチャンスを掴まないといけない。直感がそう告げていた。


「お願い、します」


 ドールは困ったようにレインを見た。


「ふうむ、叶えてやりたいが、わしは数日しかいないからなあ。ちゃんと教えることもできん」


「ドール様、何卒。一人でできる遊びのようなものでも良いのです、何か教えていただけませんでしょうか」


「ふむ。では、そもそも魔力がどれくらいあるのかの確認だけでも、してみようかの」


 そういうとドールは僕の頭の上に手を置いた。


 そして一言つぶやいた。


「ほう」



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