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9:なぜここに、あなたが?



******



 テストの結果、私達のクラスは誰も補習を受けることなく、私も総合10位に入ることができた。もちろん1位はゴーちゃん、2位がクラス委員のボーン君、そしてまさかのキラ君は9位……くっ、全ては魔国史のせいだ。あの科目さえなければ、私は5位の成績だと言うのに!

 ……まぁそれでも夏休みを無事迎えることができたので良しとする。


 休みの直前に例のお城訪問の打診があったことはまさに青天の霹靂(へきれき)ではあったけど。それもあって、夏休み前半は授賞式と言う名のキラ父への挨拶練習と本番があり、アーチェリーちゃん達との夜着女子会なんかもして、そして今回の海!気付けば私って絶賛夏の青春を謳歌中なのでは!?


 そんなことをいつも通り、ニマニマと一人考えていると、普段よりもかなりラフな格好をしたカーモスさんが小さなボストンバックを持って「お待たせしました」とやって来た。え、お待たせってどゆこと?



「………で?」

「で?とは?」


「ルーティエせん…あ、今は学園じゃねーからいいか。なんでルーティエだけでも面倒くせぇのにお前までいるんだよカーモス!」

「おやおや、キラ王子からそんなに歓迎されていただなんて……光栄の極みですね」



 なんだぁ~ゴーちゃんとは昔から自称仲良しだったとは聞いていたけど、カーモスさんとも【友人宅の執事と坊ちゃまのご学友】という関係性ではなかったのか。軽口を叩いている辺り、結構 気心知れているのだろうなと思える。



「えー、カーモスさんとキラ君ってお知り合いだったんですね!キラ君良かったじゃん!」

「ホント、久々にこんなに喜ぶキラを見れたよ……ふふ、ヨカッタネ?」


「もうヤダ、この一族関係者!!目ぇ腐ってんじゃねーの?どこをどう見てこいつと仲良さそうに見えるんだよ」



 それよりも一番不快感を全く隠しもしていないのが、ルティである。彼は過去にカーモスさんと何やら因縁でもあるのか、屋敷の中でも塩対応だ。



「カーモス、本当にあなたはなぜ来たのです?どう考えてもゴーシェの護衛ではないのでしょう?」

「ふふふ。嫌ですねぇ、もちろん坊ちゃまの身の回りのお世話の為に決まっておりますよ。ただ、昔よりもだいぶ手がかからなくなりましたからね、ちょっとしたリフレッシュといいますか。たまには外にも目を向けないと」


「僕の身の回りの世話って、そんなのとっくに自分で……」

「それに、女性が4人いて男性3人では合わないでしょう?一人だけ誰からもエスコートされないのは可哀想ではないですか?」



「それはわかるけど」と言いつつも、あまり納得がいかない様子のゴーちゃん。

 あーーちょっと気持ちわかるかも。友達との旅行に親まで付いて来ているみたいな心境だもんね。間違いなく羽目は外せないわ。まぁウェイウェイしているゴーちゃんは想像できないけど



「坊ちゃまが、ご事情があってエスコートできない時は、僭越ながら私が一人でお二人エスコートすることもできますよ?」

「……ハァ、わかったよ。好きにしてよ」



 なるほど、さすがカーモスさん。合コンで女子が多くて男子が少ないのは良くないもんね。ゴーちゃんは人見知りもあるけど、あまり他の女子とは話す印象がないから、エスコートは難易度が高いのかもしれない。

 

 私なんて浮き輪とかないけど、ちゃんと泳げるかな?くらいしか考えてなかったというのに……私の浮かれポンツクめっ! 確かに大人が一人より、二人の方が安全の為にもいいよね!いや、全員大人っちゃ大人か……

 でも、カーモスさんが来るってわかっていたら、アーチェリーちゃんも誘ってあげたかったなと少しだけ残念に思う。



「ルティもカーモスさんが来てくれたから負担が減って良かったんじゃない?」

「どうでしょうか……。まぁアオイ以外であれば特に口出しする気はありませんので、好きにしたら宜しいのではないですか?」



 今日も今日とて、私以外に興味がないという恋人は通常運転である。それを少し喜んじゃっている私の色惚け具合も小旅行という特殊イベントにより高まりつつあるのかもしれない。


 こうして私達は女子’Sと合流し、初めての馬車ならぬ『魔車』という、所謂馬が引くのではなく、飼い慣らされた魔獣ターキーがキャビンを引く魔車で別荘まで行くことに。


 ん?ターキーってよく美味しく頂いているアレでは……?

 ターキーはダチョウの5倍くらいある筋肉質な鳥型魔獣で、、、やはりこの世界の魔獣に「カワイイ」は存在しないようだ。

 

 7割ダチョウで、残りの3割は瞳が縦に伸びたスリット状なのと、クチバシに棘のような歯があり、始祖鳥のように翼を支える三本の指と鋭い爪がある。

 ……今後のドンタッキーへの来店頻度が落ちないことを祈りたい。


 大型の魔車に、カーモスさん、キラ君、女子’S三人、中型魔車に私、ルティ、ゴーちゃんの三人で乗ることになった。

 初めは男女に分かれて乗ればいいんじゃないかなって思ったんだけど、ハニーちゃんが慌てて『アオイさん、私達にも出会いの場をちょうだい!』と言ってきた。なるほど、そういうことならと魔車内合コンに協力することに。

 

 てっきり3:3を想定していたのに、一旦は大型魔車に乗り込んだゴーちゃんは『僕ちょっとあぁいう空気感苦手で……ごめん』と言い、青ざめた顔で私達の魔車へ移動してきた。今日も天使は汚れていない


 隣はもちろんルティがピッタリと座っているけれど、二人きりと思ったのに、発車直前になって三人になり若干不機嫌なルティ。私としてはいつもの身内で固まっているので、嬉しくはあるのだけど。

 それでも最近少しだけ賢くなった私は、このギクシャクした雰囲気のまま移動は嫌なので、ルティにコソっと耳打ちする。



『ねぇルティ、海で遊ぶのも楽しみだけど、部屋は同室なんだしちゃんと二人きりで過ごせるよ…だから機嫌を直して?楽しい旅行にしようよ』

『……わかりました。夜は絶対に二人きりですからね?』

『うん、もちろん!』


 ふぅ、とりあえずルンルンではないけど、機嫌は持ち直したぞ!



「ゴーちゃんも、星の砂見るの楽しみだね!私、空き瓶持ってきたから、ここに星の砂入れるんだぁ」

「ふふふ、アオちゃん準備がいいねぇ。僕はボールを持ってきたよ、みんなでビーチバレーってやつができるかなって。あっアオちゃんでも大丈夫なように一番軽いやつにしたから安心して!」

「うん???ありがとう、軽いやつね……ボールってそんなに重すぎるものってあったっけ?いくら貧弱な私でもボールくらい持てるよ~。あ、あと砂風呂もやりたいなぁ~ルティもやってみない?」


「もちろん、アオイがやることは私もやりますよ。首だけ出して縦に埋まる方ですか?」

「え、縦……?それって風呂というより拷問に近くない?違うよー浜辺に寝そべって、身体に砂を布団のように掛けていく方だよ」

「へぇ、僕もやってみようかな~」



 ゴーちゃんもかぁ……絶対砂で羽をつけ足そう!そうなると誰がラストに埋まるのか問題ができるよね。まぁ順番にやればいいか!参考までにターキーの羽の観察しておこう



「さ、アオイ。昨日もやりたいことリストを遅くまで考えていたので寝不足なのでしょう?それでは溺れてしまいますよ。眠れる内に眠っておいてはいかがですか?」


「……うん、バレてた?へへへ、実はすでにちょっと眠たくて……じゃあちょっとだけ寝るけど、二人は気にせずお話してて大丈夫だからね?私寝たら熟睡しちゃうから。でも歯ぎしりとかいびきをかいてたら絶対起こして!!」


「ふふ、わかったよ。着いたら起こすから安心して寝たらいいよ」

「はい、では私の肩にもたれて?ゆっくり休むのですよ」


「うん、おやすみ……」





 きっと目が覚める頃には着いているであろう別荘に思いを馳せて、私はひと眠りすることにした



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