File 3-3
ようやく時は終がインウィディアを言葉でいたぶっていた場面に戻る。
「・・・勝手に死んだだけじゃないのよ!!!」
「ふむ。それは実にいい得て妙な表現だ。しかし私も忙しくてね。君の戯言に付き合っている暇はないんだよ。君の名前は、インウィディアであっているね?スキルの内容は?」
終はインウィディアの顔を覗き込むようにして言った。
「何よ。そんなの答える義理はないわよ」
「残念ながら、犯人として私のスキルで捕らえられた以上、君には事件に関連する事柄について話す義務が発生する。まぁ義務というか強制なんだけどね」
「そんなこと言われて従う訳・・・・・あああああああ」
終がにこやかに会話しているのに対し、インウィディアは反抗的だった。しかしそんな態度だったインウィディアも途中で様子がおかしくなった。頭を押さえていた痛がり始めたのだ。
「耐えるのはおすすめしないよ。脳の魔力回路が焼き切れてしまうから」
爽やかな笑顔でそう言う終はまるで悪魔というか本物の悪魔のようだった。どうやらスキル探偵というのは僕が考えていたのよりもはるかにえげつない能力らしい。そしてその条件は、反則すれすれの技によって任意の相手を捕まえる手段となり得る。
頭を痛がったあと、終の言葉を聞いてか聞かずか、インウィディアはうなだれたあとボソボソとではあるが素直に質問に答え始めた。
「そう・・・私の名前はインウィディア。魔王の七幹部のうちの一人。嫉妬の大罪を背負いし者。スキルはリヴァイアサン。感情のある生物の嫉妬の感情を増幅させる能力」
「他の幹部はなんていう名前だ?そしてその能力は?」
終は核心に切り込む。
「それは・・・言えない。言った瞬間に私は死ぬことになっている」
「それは困るなぁ。しょうがない」
終は笑顔で指を鳴らすとその瞬間にインウィディアは頭を抱えてうめき出した。
「お願い・・・やめてぇぁぁぁぁあ」
「いいや、やめないよ。君は死んでもいいから、早く名前と能力を言うんだよ?」
僕はさすがにやりすぎだと思い止めに入ろうとしたが、それを察知した終に手で制止された。
「あああああああ・・・・ここまでなら言える。七幹部はそれぞれある感情を増幅させる能力を持っている・・・これ以上はお願い。助けて」
インウィディアはもはや終に命乞いとも取れる行為をしていた。終はニヤニヤした表情を一瞬で無関心の表情に戻し、電話をし始めた。インウィディアはもはや放心状態で言葉も発せない様子で、終が電話をしてから数分後、街の中心に城を構えていた騎士団が酒場にやってきてインウィディアは厳重に拘束された後に連行されていった。
しかし連行されていく直前。インウィディアは捨て台詞を残していった。
「私をこんな方法で捕まえれたのは褒めてあげるわ。でも、他の6人はそううまくいくとは思わないことね。もうこんな騙し技は絶対に通用しない。500年前に現れた勇者だって私が直々に壊してあげた。200年前の勇者だって私が直接手を下すこともなく死んでいったもの。私たちをどうこうできるなんて思わないことね!!」
そんな捨て台詞に終は。
「ご忠告ありがとう、肝に命じておくとも。あと、6人ではないね。7人だとも。私は魔王も捕まえるのだからね」
と飄々と返事をした。それを聞いたインウィディアは血走った目で反抗しようとしたが、反抗虚しく警官に連れて行かれた。その後、僕はその場で終の壮絶な取り調べの是非について考えさせられることになった。
「終さん・・・」
「なんだね。道連れ。今のは人道に反する、とでも言うつもりかね?」
「いえ・・・でも、さすがに今のはやりすぎじゃ」
僕は恐る恐る終に進言した。
「道連れ。お前は何もわかっていないんだよ。歯には歯を、悪には悪を、だよ。奴らを捕まえようと思えば並大抵の方法を用いていてはいつまでたっても捕まえられない。・・・なぁに。道連れは心配しなくていい。私があっという間に魔王まで討伐してみせるから。ああ、いや。最後にとどめをさすのは道連れじゃなくちゃあいけないんだったね。任せておきたまえ」
終は壊れた笑顔で僕に向かってそう言った。この人は、何かがおかしい。狂ってる。でも僕はその狂いを、ただの狂いだと切り捨てることを絶対にしてはいけない。彼女を頼ることにしたのは、まぎれもない僕なのだから。それでも、受け入れられないものもある。
「それは・・・わかるし、終さんのやり方だから・・・僕に口出しする権利はないのかもしれない。でも僕は終さんのために言うよ。そんなやり方は良くないって。何度だって」
その言葉を聞いて終は少しだけ眉をピクリと動かした。そしてその後、感情のない乾いた笑みで僕を見た。
「それは当人の自由だ。お前が私に強制するわけでもないしな。好きにするがいいさ。私がそれに従うかは別としてな」
それから終はホテルに戻ると荷物をまとめるように言ってきた。そしてまとめ終わると、テーブルの上に地図を広げて言った。
「さぁ。道連れは次にどこに行きたい?お前の行きたい場所が私たちの行く場所だ」
上終終は不気味な笑みでそう言った。だってお前が行く場所で事件は起こるのだから。
そう後に続く言葉が聞こえた気がした。




