契約内容はしっかり把握しておこう。
「じゃあまず簡単な依頼から受けようか。」
そうヴァフィヤが言った。
「Bランクの依頼を受けるんじゃないのか?」
「さすがに危ないよ。」
まあ確かに。いやでもうちのパーティはS、A、B、Dと平均ならBランクは超えているパーティだ。もったいないのではないだろうか。
「まあ急いでないからさ。ゆっくり行こうよ。みんなもそれでいいよね?」
イェフティヤは
「Sランクの依頼を受けよう。」
とか言い始めた。普通に無理だろ。
最悪なのがハーリアが同調しているということだ。
「いいですね。さっそく魔王ぶっ倒しにいきますか!」
二人とも頭のネジが外れているらしい。無理っつってんだろ。
とそんなやり取りをしているとヴァフィヤが口を開いた。
「まあまあ落ち着いて。とりあえずCランクの依頼でも受けようか。」
常識人枠のヴァフィヤ。ありがとういてくれて。ヴァフィヤがいなかったら今頃パーティ崩壊。もっと悪ければこの二人が魔王に突撃して死んでいたかもしれない。
「そうだな、それでいいと思う。Cランクの依頼って何があるんだ?」
「うーん、これとかいいんじゃない?」
掲示板から依頼書を取りながらヴァフィヤが言う。
それを見てみるとスライム討伐と書いてあった。依頼主はギルドそのもの。
「スライム?」
「あぁ、スライムっていうのは粘性のある生き物のことだよ。言葉で説明するのは難しいから実際に行って見てみようか。」
有名なゲームにも出てくるような感じのスライムだろうか。なら確かに簡単に討伐できそうだが。
ヴァフィヤが色々手続きをしてくれたので早速向かうことに。
都市、ソロモンだっけ?から出て数分ほど歩いた平原にスライムが何匹かいた。少し遠くの方には遊んでいる子供たちの姿が見えるな。どこまでが国なんだろう。あの都市はソロモンっていう国っていうのは分かったけどどこまで整備されているんだ。
スライムはというと、見たことのある形をしている。身長?体長?は大体五十センチくらいだろうか。目とか鼻とかは何もなくただの動くスライムという感じだ。子供も気にしてないっぽいし害はなさそうだけどなんで討伐依頼が出てるんだろう。
「へぇ、こんな感じなのか。倒すときに気を付けることはあるのか?」
と問いかけてみたところイェフティヤが答えてくれた。
「スライムは防具、武器、人間の体までなんでも溶かす作用を持ってる。」
えぇ......めちゃくちゃ怖いんですけど。それだけ聞くと下から二番目のランクの依頼とは思えないんですけど。
「安心して、溶かすといっても時間がかかるから丸一日スライムに浸かってるとかでもない限り死ぬことはない。窒息はすぐ死んじゃうかもしれないけど。まあそもそも何もしてないのにスライムから人間を襲うことは稀だよ。」
イェフティヤはそう言うと早速突っ込んでいった。
なるほどねぇ。子供が外で遊ぶときに偶然スライムに襲われたら、と考えると結構危ないわけだ。だからギルドが依頼して数を減らしているといったところだろうか。というかそんなところで子供を遊ばせるなよ。
ヴァフィヤとハーリアは別のところのスライムを倒してくると言ってどこかに行った。あと何か二人で話したいことがあるらしい。倒し方とか詳しいことはイェフティヤに聞くとしよう。
イェフティヤの武器は死神が使いそうな鎌。鎌より剣のほうが使いやすかったりしないのかな。
まあAランクってことだし安心して戦闘を見ておこう。
しかし数秒後。
「助けて。」
イェフティヤはスライムに捕まっていた。四肢をスライムに捕まれて身動きが取れなくなっている。
「忘れてた。単純な物理攻撃は効かないんだった。」
馬鹿なのか?いや俺も知らなかったけどさ。
「なぁイェフティヤ、本当にAランクなのか?」
「失敬な。正真正銘Aランクだよ。とりあえず助けて。」
ふくれっ面でそう言うイェフティヤ。かわいいじゃないか。
はぁ、助けるか。
ん?ちょっと待てよ?
これこのまま放置したら服だけ溶けるのでは?
この世界に来て一日ほど経ったわけだがもう慣れてきて三大欲求が正常に作動し始めている。目の前にはスライムに捕まった美少女。結局は俺も男の子なのだ。
「なぁイェフティヤ。死にそうか?」
「いや、スライムの溶かすスピードはさっき言った通り遅いからしばらくは大丈夫。窒息することもなさそうだし。でも服は体より溶けやすいから早く助けてほしい。この服ちょっと高いの。」
ちょっと待とうかな。ちょっと高いだけなら依頼の報酬とかでなんとかなるんじゃないかな。知らんけど。
「ごめん、どうやって助ければいいのか教えてくれないか?」
「魔力を込めた武器でスライムに攻撃する。」
何それ。マジでファンタジーの領域じゃん。いやファンタジー世界なのはわかってるけども。
「魔力を込める方法を知らないんだが。」
「魔力は全身に流れてる。それを集めて武器にも流すだけ。簡単。」
「はぁ。」
一回やってみるか。さっきイェフティヤが落としてたナイフを拾う。
でもすぐ助けちゃうとラッキースケベが発生しなくなっちゃうからゆっくり試そう。意図的なラッキースケベはもうラッキーではないけどね。
んん。こんな感じかな?いや違うか?んーーー?
全くわからないけども。
そんな感じで頑張ってたらイェフティヤが話しかけてきた。
「シキ、あなたは魔力自体は多いよ。多分ヴァフィヤよりあるんじゃないかな。だから直接スライム殴ってみて。それだけで倒せるかも。」
まじか。
もしスライムを殴ってうっかり倒せちゃったら困るな。
じゃあどうしようか......。
あ。
「取引しよう、イェフティヤ。」
「急にどうしたの?」
「助けてあげるかわりになんかしてほしいなーって。」
イェフティヤの全身を見る。
「あぁそういうこと。最低だね、シキ。」
美少女からの罵倒か、これはこれでアリだ。
「じゃあ助けてくれたら私のスカートの中、見せてあげる。」
うおおおおお!
「ほ、本当か?」
「私、嘘はつかない。」
「うーん、口では何とでも言えちゃうからな。」
「それに、これはお互いの了承を得た上での約束だから契約になる。」
「契約?」
「契約は必ずどんな形になろうとも果たされる。」
どういうことだろう。この世界のシステム的な?口約束だろうが何だろうが保証されるってことなのかな?
「そういうことならオーケー。助けるよ。」
ということでスライムを直接ぶん殴る。
するとなんとびっくりスライムが弾けた。
「ありがと。余計な条件が付いてるけど。」
「じゃあさっそく見せてくださいよぉ。」
今の俺はめちゃくちゃ気持ち悪いのだろう。だがしかし人の欲は止まらないのだ!
「はい、どうぞ。」
そう言ってイェフティヤはスカートを持ち上げた!
「はぁ!?」
期待して見ていた俺の視界に入ってきたのはただの半ズボン的なあれ。正式名称は知らないけど今はそんなことはどうでもいい。
「お、おい、中を見せてくれるって言っただろ!?」
「スカートの中を見せるって言った。契約の通り。」
「ひ、卑怯だ!」
「身動きが取れない相手に対して契約させるのは卑怯じゃないの?」
うっ、無表情だがその鋭い眼光には殺意が混ざっているようだ。
ここで俺がすることと言えば一つだよね。
「ごめんなさい!許してください!」
そう、土下座だよね。
「もういいよ。別に怒ってないし。男の子のそういう欲求は把握してるから。」
気を遣われるのが一番きつい。
「すみません......。」
「じゃあさっさと他のスライム倒して二人と合流しよう。」
ということであと三体。イェフティヤが今度は魔力を武器に込める的なあれをやってスライムを二体倒した。そして逃げようとしてた残りのスライムを俺がぶん殴った。
じゃあ二人を探すか、と思っていたらちょうどいいタイミングでヴァフィヤ達が戻ってきた。めちゃくちゃ平原だけど俺たちのやり取り見てないよな?
「そっちも倒し終わったみたいだね。」
よしばれてないな。
「あれ?イェフティヤさん。服ちょっと溶けてないですか?」
気づくなよハーリア!
ハーリアがそう言うとイェフティヤが答える。
「誰かさんがすぐに助けてくれなかったおかげでね。」
待ってくれ違うんだこれには訳が。
「まあしょうがないんじゃない?シキくんは初心者なわけだし。」
ナイスだヴァフィヤ。
「その魔力の量だとスライムくらいなら殴っただけで倒せそうだけどね。」
やめろヴァフィヤ。余計なことに気づくんじゃない。
話を変えよう。
「あぁそれで聞いときたいことがあるんだけどさ。今度暇なときに魔力とやらの使い方を教えてくれよ。武器に魔力を込める?っていうのもできなくて。」
「いいよ。じゃあ今からやろうか。イェフティヤとハーリアは先に戻ってギルドに報告しておいてくれるかな。」
「わかった。じゃあまた後で。」
そう答えたイェフティヤはハーリアを連れて都市に戻っていった。
そういえば連絡手段とかこの世界にあるのか?どうやって合流するつもりなんだろう。
「さて、じゃあまずはシキくんは魔力のことをどこまで知っているのかな?」
魔力ねぇ。体に流れてて、武器に込めたり魔法を使ったりできるものみたいな認識だけど、漠然としててとても知っているとは言えないな。
「じゃあせっかくだし魔力と魔法について一から全部教えようか!」
「お願いします先生!」
こうして俺はヴァフィヤ先生の授業を受けることとなった。




