第47話
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ミレーヌは、身を乗り出す。
「世話役」が少し引っかかるが、それよりも、エルフィが初めて話す、レクトとの出会いの方が遥かに気になる。
「何日か前から魔王討伐登録の話はしてたから、学院を中心に噂になってて、魔術師を探していたレクトの耳にもその話が入って、待ち構えてたんだって」
「なるほど」
「それであいつ、最初になんて言ってきたと思う?」
「“俺と一緒に、魔王を倒してくれないか”」
「正解。いきなりそれだからこっちも少し頭に来て、私を誰だと思っている、このエルフィ・ケネットを知らないのかと凄んでやったら」
「やったら?」
「“知ってるから、お願いしてるんじゃないですか”、だって」
「はは」
「で、そん時気づいたのよ」
「気づいた?」
「こいつ、私を見上げてない、って」
「……ああ」
「でもまあ、単に私のことをあまり知らないだけかもしれないからと、少し話をしてみたら、これが案外良く調べてんのね。戦士は既にガルドがいたけど、王都のめぼしい魔術師と僧侶の名前がずらっと並んだ一覧表を作ってて、私の名前が何重もの線で囲われてた」
「そうなんだ」
「ちなみに、あんたの名前は無かった」
「そうなんだ」
それはまあ、そうだろう。
「で、そこまで私のことを知っていて、それで媚びるでもなく、だからと言って虚勢を張るでもなく、一歩引くでもなく、普通に話してくる奴ってのは、本当に珍しくてね。話しているうちに、これならちょっと、試してみてもいいか、と思った」
「ああ」
「まあ、結果から言えば、三日目くらいにはその試しは終わってたようなもんね。分かるでしょ? どんだけこっちが試してやろうとしても、レクトはレクトだし、ガルドはガルドだしで、張り合いが無いったら」
「うん、分かる」
「でも、それが、楽しかった」
「うん」
それもまあ、そうだろう。
「それで、次は僧侶を探そうという話になって、一覧の神殿付きと王城付きはそもそも当たっても無駄だし、回復と防御なら私だけでもなんとかなるから、ここは世話役が欲しいと思って」
「世話役」
「その方向で魔術学院の知り合いに当たってみたら、神殿付きの中に、治癒術はいま一つだけど、妙に目端がきいて数字に強い、世話役になるために生まれてきたような僧侶がいるそうで」
「……」
その評価は間違ってはいない。いないけど。
「それで拝み倒してでも連れてこいってレクトに厳命したわけ。まさか二か月かけてまで口説き落としてくるとは思ってなかったけど」
「……」
なんとも言いようが無いので、黙っておく。
「で、そしたら、まさかの大当たり三連発よ」
「そりゃどうも」
エルフィの言い方はあれだが、本気で褒めているのは分かる。
「そっから先はあんた達も知ってるから端折るけど、一言で言うなら、あんた達は、最高だったわ」
「そりゃどうも」
これは、こちらの照れ隠し。
「誰も彼もが私を見上げてきた中で、私を見上げず、私と同じ目線でまっすぐに話せる相手が、三人も集まるなんて、想像もしてなかった」
「それは良かった」
これは本心から。
「だから、こう言ってはなんだけど、魔王討伐、すごく楽しかったわ。あと、その後のこれも」
「それなら良かった」
「だから、私はあなた達を、仲間だと思っている」
「ありがとう。私も」
「だから、あなた達には、私にできるだけのことを、してあげたいと思っている」
「ありがとう」
「だから、その私が言うわ。ミレーヌ」
「何を?」
「これで、良かったの」
「……」
「今のあなたには、そうは思えないのは当然だと思う。でも、私には分かる。これが、一番良かったって」
「……そう」
「それを受け入れろとは言わない。あなたが間違っているとも思わない。だけど」
「だけど?」
「全てを見通す天才の私が、こう言っていた。ということは、覚えておいて」
「……うん、分かった」
「ありがとう。私は、あなた達が好きよ。ミレーヌ」
「ありがとう。エルフィ。私も」




