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総合非格闘技AMMA~マウスウォッシュ・ファイトクラブ!~  作者: スギセン


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1/5

準々決勝1回戦 子どもも桃も、桃の内

「それって、あなたの感想ですよね?」


 先手を仕掛けたのは、瑠璃山るりやま小学校四年生、九十九翔太つくも しょうただ。

 失礼にも対戦相手を指差し、口をへの字に曲げてふてくされた態度を取る。


 対する、自称婚活アドバイザーの桃山桃子ももやま ももこは、ほんの少しだけ困惑した表情で受け止めた。


「……え、いや、何を言ってるんですか? ワタクシ、まだ何も喋っていませんよ?」

 桃子のまっとうな指摘が飛ぶ。


 翔太が先程放った言葉――「それって、あなたの感想ですよね?」は、確かに一部界隈で人気のあるフレーズ……キッズが好んで使いたがるのも頷ける。


 ――がしかし、ここは決勝大会。

 対話による口撃が常の総合非格闘技(AMMA)において、文法や会話の流れを無視した口撃は、減点対象とさえなりうる。


 より高度な戦いが求められる決勝大会において、翔太が無策にも放った言葉だとは考えにくく――


『おぉ~っと!? 翔太選手、なにやら涙目になっている!! まだ戦いは何も始まっていないというのに!!』


 アナウンスの声が響く。

 この状況に、観客一同は困惑を隠せなかった。


 そう――ただの無策であった。

 ただの――イキりであった。

 彼はその醜態を全国に晒し、その事実に耐えかねてポロリと涙がこぼれた。


「ねえ、おとなしく棄権してくれないかしら? ワタクシだって、小さい子を口撃するのは嫌なのよ」

「――!! こ、子どもだからってバカにしやがって! 大人はそんなに偉いのかよ!?」


 翔太は、子ども特有の青臭い主張を放った。

 しかし桃子、眉をピクリとも動かさない。


「……フンッ。 子どもだからじゃないわよ……バカだからバカにしてんのよ、バァ~カ」

「えっ……」


 桃子はしたり顔で、フンっと鼻を鳴らす。


『これはひどい!! 子どもの純真を真っ向から踏みにじるような、カスの大人の発言だぁ!! しかしこれは、こういう戦い――倫理観や道徳論を語っていては、真の勝者になれないのだッ――!!』


 アナウンスの煽りに、観客が湧いた。

 事実、今の言葉の応酬でさえごく一般的なものだ。

 バカだのアホだの、およそ恥ずかしくて言えない語彙力のない悪口も、シンプル故に刺さる。


「うっ……うわぁ~ん!!」


 遂に、幼い翔太は泣き出してしまった。

 なぜ決勝大会に上がれたのか不思議なくらい、頭も心も幼かったようだ。


「あ~やだやだ、これだからガキは……()()()()!!」


 ――総合非格闘技(AMMA)の決着の方法は三つ。

 本人から棄権の申し出があるか、三十分の制限時間後、審判団による判定が為されるか。


 そして三つ目が、桃子が叫んだ言葉――ジャッジ。

 現時点での状況から審判団に判断を仰ぎ、場合によっては即座に勝敗が決するというものだ。


 そしてジャッジの結果は――


『勝者、桃山桃子ッ!!』


 直後、観客席で男性陣が小さな悲鳴を上げた。

 電光掲示板に、彼女のプロフィール(偽装)と、顔写真(詐欺プリ)、電話番号がデカデカと表示されたからだ。


 勝者には、電光掲示板を利用できるという()()()()()()()がある。


 彼女の場合、自分のプロフィールを全国の殿方にお届けすることを選んだ。

 こういった所が、恋人ができない所以なのだろう。


「――ウフッ❤ 連絡待ってまーす!」


 恋人いない歴三十六年の桃子は、勝ち誇ったように右手を突き上げた。

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