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氷結の黒薔薇―世界を塗り替えよ、氷の少女と共に―  作者: 香辛凌
第3章『ホーリーナイトメア』
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第19話「推理ロジック/悪夢は終わらない」


二つの遠隔操作兵器から発射される多方向のビーム音が、屋敷に響き渡る!

「ソウジ、まずはあなたの推理の根拠を聞かせて?」

俺に凶悪な攻撃を仕掛けながら、ルシファーは話しかける。

「避けながらそんなことを…無茶振りが過ぎるぜ…!」

俺は黒薔薇の剣でビームを弾きつつ、被弾を抑える。

「ソウジならいけるでしょ…?あの約束をしたんだから。」

ルシファーの声のトーンが、一段低くなった。

「…できないとか言ったら、許さないから。」

その顔は、今まで見てきた彼女の表情ではない、怒りを含んだものだった…。


マズいな…


それを見て、俺はいなしながら口も同時に動かす。


「…まずおかしいと思ったのは、浄化の儀開始直後の殺人だ。被害を受けた2人はいずれも何かで急所を撃ち抜かれてた…くっ…!じゅ、銃だと思ったけど、火薬の匂いではなく、肉の焼けたような匂いがした…。つまり、ビーム攻撃なんじゃないかって推察した。」


その説明にルシファーは表情を緩め、攻撃の手を止める。

「へえ〜…想像力と五感が優秀ね。じゃあ、オールレンジ攻撃って分かった理由は?」

俺は呼吸を整えながら、壁にもたれて問いに答える。

「そこが重要だ。ミハイルの証言から、どうやって同時に多方向からビームで殺害できたのか…。俺が悲鳴の後すぐに駆けつけたのに、ジャンル重火器どころか何者かに侵入された形跡が無かった。」


「だから犯行はほぼ確実にマギアによるものだと判断した。」

俺はルシファーを見る。

「最初はルシファーに協力する裏切り者の存在も考えた。だがそれだと、俺達以外…ナイトメア家の人のスペックでは不可能だ。なぜならルシファー、お前がこの一族の特異点と家族が言っていたのを知っているからだ…。」


説明の途中、ルシファーが口を挟む。


「確かにそうね。でも、今までの説明だとソウジのお仲間さん…特にメビウスくんが怪しいと言ってるように聞こえるけど?」


俺は毅然として反論する。

「アイツの能力…光の力なら確かにあり得る。だが、ミハイルが聞いた銃撃音の証言。家族を愛していた…誰よりもルナを愛していたアイツの言葉なら、信用できる。わざわざミハイルだけ殺さなかったのも、手がかりを残すためだってことなんだろ?」


「つまり、メビウスを容疑者にすることはできないんだ。」

俺は一息ついて、話を戻す。

「なぜオールレンジ攻撃だと気づいたか…。決定的な答えは、あのメビウスの証言だ。」

その言葉に、ルシファーは眉間にしわを寄せた。

俺は続ける。

「メビウス達のチームも、襲撃にあった。攻撃方法は…やはりビームだったが、どうしても射っている人影が見えない。おかしいと思わないか?」


「ルシファー…お前は俺に見つけてほしいはずなのに、完全犯罪じみたことをするはずが無い。その話を聞いたとき、俺は予想した。透明化…見つけさせる気が無いからそれは無い。なら…人よりも小さいナニカが射っているとしたら?小さなナニカ・遠隔射撃・ビーム兵器…。」


ルシファーが、嬉しそうな表情を浮かべる…!


「ビット兵器…オールレンジ攻撃の可能性が高すぎるってわけさ…!」

俺の推理ロジックに、ルシファーは相槌を打つ…。

状況にそぐわない無邪気さに、俺は身の毛がよだつ…!

「うん!それそれで?何で私がルナに成りすましているって看破したの?」

アイみたいな喋り方で、ルシファーは急かす。

一瞬、目の前にいる彼女がアイと姿が重なるような感覚に、俺は根拠のない恐怖を覚えた。


「その答えは、アイが託してくれたお前の二枚目の手紙にある。ルシファー・レイス・ナイトメア” は ”この屋敷にいない。だがお前は俺との約束を果たしたい。だから存在しないわけがないんだ、この屋敷に。そして” は ”が血でマーキングされてたことで、アイの考えていたことを理解した。」


「それで、俺はルシファーが誰かにすり替わって、屋敷に潜んでいると確信した。だとすると、皆を呼び出して確認するまでだ。」

ルシファーの緑色の瞳が、俺を吸い込むように見つめる…。

俺は気を保ちつつ、話を続ける。

「…皆が本物だって、本音をぶち撒けてみて分かった。ルシファーは自分を見つけてほしい、だから犯人は既に死んでいる筈のオズマとルナに絞られた。そこで俺はルシファーと、家族に関する質問をナイトメア家の人達に問いかけた。」


「まず、殺された執事のオズマについて聞いた。理由は単純だ。俺の知らない人間だったからだ。ジェームズさん曰く、オズマが入ったのは2年前。前任の執事は、3年前に死亡したそうだ。」


ルシファーは無表情になった。どうやらオズマに関する話は、彼女にとってつまらないようだ。

俺は気にせず続ける。 


「そこで俺は、手紙にあった6年前から順にナイトメア家に起こった出来事を聞いた。そして3年前の話の途中で、皆が頭を抱えだした。”何か忘れているような…”ってな。」


俺はルシファーに指を指す!


「人を言葉で支配することのできるお前なら、記憶改ざんも朝飯前。改ざんのタイミングが3年前なら、オズマは時期的に能力の対象外!そして、ここからは推測だが…死んでしまった妹を、生きていることにすれば成り代わりも容易い。」

俺は息を整える。


「これが…お前が導いてほしかった回答か、ルシファー?」


そして、全てをまとめるように…俺は屋敷に響くような声で、結論を述べる!


「全てが繋がった…。3年前の記憶欠落…!これがお前がルナに成り代わっていた事を看破した推理ロジックだ、ルシファー!!」


その強い言葉に、ルシファーは恍惚の表情を浮かべる。

「流石だわ〜、ソウジ…。」


「…それで」


ルシファーの表情が、急に暗くなる。

俺は彼女のオーラに、何故か震えが止まらなくなる…!

ルシファーはゆっくりと、俺に近づいてくる…!

マズい…身体が、動かない…?!

俺に触れるか触れないかの距離で、ルシファーは上目遣いで静かに問い詰める…。


「約束の方はどうなの…?!」


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