第9話「モール内でバイオテロ!共闘するのは皇子様!?」
〈時は遡ること3日前―〉
私はアイ。ショッピングモール内で、ゲートと衝撃の合流をした案内人よ。
ソニアちゃんが悲鳴を上げて傍に駆け寄る。私もそれについていく。
「お兄ちゃんっ!!」
人が目立つところで倒れているというのに、声をかけてくれるのは少数だった。その他は、一目見て逃げるように離れる者、何故か恍惚の表情を浮かべて笑っている者…まるで、何かに取り憑かれたかのような邪気を放っていた。
―その時だった。
「君、意識はあるかい?」
落ち着いた、優しい声が響く。
横を見ると、銀髪のウルフカットに紫の瞳、高身長のイケメンがゲートの脈を測っていたのよ…しかも同世代くらいの…!
「うん…脈は正常だ。気絶してるだけでしょう。彼を担いでいきましょうか?」
ソニアちゃんがホッとしたように膝をつく。
「あの、ありがとうございます…。失礼ですが、あなたの名前は…?」物腰柔らかながらも、ただならぬオーラを纏うこの青年に私は恐る恐る聞く。
「僕はメビウス。訳あって旅をしているものです。」
彼は穏やかに答える。
「さて、あなた方のことも聞きたいのですが…彼を休めるところまで移動しながらにしましょう。」
こうして、私たちは近くの宿まで移動した。
もちろん、反逆のことは秘密にしたけど―。
そして宿に着き、メビウスが去ろうとしたとき、彼は静かに忠告した。
「皆さん、3日後にワルキュリア・シティモールに行くのはやめておいたほうが賢明です…。」
えっ…?なんでそんなことを知ってるの―?
「ちょっと―」
私は引き留めようとする。
しかし…
「では、ここらで。」
メビウスは夕日とともに消えていった…。
その夜、宿屋にて―
「なんでメビウスさんは、3日後という情報を知っていたのでしょうか…?それに、やめておけっていうのも…。」
ソニアちゃんが首をかしげる。
私は考えていた。
(ゲートがいつ起きるか分からない…メビウスの言うと通りなら、大司教が何か仕掛けるということかしら…?)
―1時間程の思考の末、私は決断する。
「ソニアちゃん。3日後、ワルキュリア・シティモールに行くわよ。」
「…!ですが、お兄―ゲートさんは大丈夫なんですか…?」
ソニアちゃんが真っ当なことを言う。
「確かにそうね…。だから、当日になっても起きなかったら、彼を担いであそこに行くわ。」
私は続ける。
「あのショッピングモールで必ず何かが起こる…。流石のゲートも目を覚ますわよ。」
私は…そう信じてる…!
〈そして3日後…ゲートが目を覚ます30分ほど前…〉
「…大司教、出てきませんね。」
ソニアちゃんがショッピングの広間で呟く。
「そうね…。極秘事項だったみたいだし、人目につかないところにいるのかもね…。」
ゲートを担ぎながらそう答えた瞬間…
「イヤァァァッッ〜〜!!」
悲鳴がこだました。
そして別のところからも悲鳴が次々と…
そして、みるみる湧き上がっていく邪気―!
「何が起こっているの…?!」
その時、広間の入り口が壊れる音が鳴り響く。
そこには…夥しい量の腐敗した人間…ゾンビが蠢いていたの―!
次の瞬間、ゾンビたちは人間と同じ速さでみんなに襲いかかる!
「―止まりなさい!」
私は入り口付近に螺旋階段状の氷壁を生成する!
地上にいたゾンビたちは氷漬けになったわ。
「みんな!この階段を上がって!」
しかし、私はそう言ったことを後悔した。
パニックになった来客達が、一斉に階段に向かう!
そのせいで…
「お姉ちゃ―」
ソニアちゃんが叫ぶ。しかし、その声は彼女の姿共に人混みに埋もれていく…。
そして、階段を上がった先の階から悲鳴の嵐が鳴り響いた―。
人混みが消えた頃…
「……!ゲートは……?!」
彼の姿は、どこにもない…。
私は担いでいたゲートを…私は落としてしまった。
つまり…一人になってしまったの…。
――――――――――――――――――――――――
〈現在―〉
…俺はゲート。目を覚ましたらバイオテロに巻き込まれた、駆け出し反逆者だ。
みんなはどこに行ったのだろうか…?気絶してからどれくらい時間が経ったのか…?
その時、幼い少女がゾンビに襲われているのを目撃した。
「…ったく。」
俺は黒薔薇の剣を抜き、ゾンビの脳天をぶち抜いた!
ゾンビは黒い血を噴き出しながら、黒い霧となって消えてゆく。
…?!まさかこいつら、悪意―?!
…いや、そんなことは今いい。
俺は怯えた少女の頭を撫でながら慰める。
しかし、肉が裂ける音…鳴り止まない悲鳴…夥しい数のゾンビは既に他の来客たちを殺戮していた……!
全員は助けられない…。ならせめて…!
その時だ。突如飛んできた無数の光の槍が、正確無比にゾンビ共を貫いてゆく。充満する黒い霧が晴れた後、やけに穏やかな声が全体に響いた。
「大丈夫かい?ゲートくん。」
その声の主はウルフカットのイケメンだった。
てか、なんで俺の名前を…?
「アンタがさっきのを…?」
俺の質問に対し、彼は答える。
「そうだよ。ゲートくん、突然で悪いが共闘といこうじゃないか。」
彼はショッピングモール全体を見下ろすように浮遊しながら、声を張り上げる。
「聞け!我の名はメビウス!アルトリア帝国第3皇子、”メビウス・ディ・アルトリア”だ!!」
「皇子だと…!?」
一抹の不信感が、俺の頭を過った―。




