マグマを呼ぶもの
数の上では倍であっても、プロトよりさらに戦闘力のあるザラマンダと高火力と堅牢な装甲を持つルナ・アルケニーがギーガー集団を駆逐するのにさしたる時間は必要でなかったのは、あとから思えば当然の結果ではあった。
『まだどっかに隠れてるかもしれんから、ドロップ回収中も警戒を怠るなよ!』
スカーフェイスは自らも周囲を警戒しつつ松の湯メンバーに指示を出す。
『やはりザラマンダは良いな、アイリスさん』
分隊を率いてドロップの回収にあたっていた巌が通信を飛ばしてきた。
『藪から棒に何です?巌さん』
『基本が宇宙服だからテクノロジー関連のスキルレベルに関係なく扱えるし、装甲のおかげで多少喰らっても気絶するようなダメージにならない。追加されたスラスターのおかげで移動速度も上がった。反応速度がステ依存なのは相変わらずなのはしょうがないがね』
β時には高度な機材が扱えず、頑丈な体を生かして盾役を買って出るも弁慶の立ち往生よろしく立ったまま失神することがままあり、沈黙の鉄壁と二つ名をもらった巌には今回の戦闘結果は十分満足のいくものであったようだ。
『まあ、うちの子を気に入ってもらえたのなら…』
社交辞令込みの返答を返しかけたその時、ずん、と大きな縦揺れがセサミオープナー・松の湯連合を襲った。
「っ!クオ!?」
「地中から急上昇してくるものがあります!姫様!地表到達予想20秒後、到達地点はギーガー出現地点と重なります!」
『ブラウエカッツより全機!空中退避!後退100m!』
クオの情報を受け、アイリスはルナ・アルケニー・ブラウエカッツをジャンプさせると同時に全機に退避指示を出した。空中退避を指定したのはこの揺れが続いたとしても地表にいなければ行動を妨げられない、という判断だ。アイリスの指示を受け、ルナ・アルケニーは脚力と補助スラスターを併用して、ザラマンダは機動ユニットのスラスターを用いてそれぞれ宙に飛び立つ。距離を取りつつ、チャンドラーの弱い重力に引かれて緩降下に入った彼らの眼下、先ほどギーガー集団が這い出てきた瓦礫の中央がぐっと盛り上がり、
爆ぜた。
『おい、あれは…』
そして現れた、金属光沢をもつ回転する円錐に、バズーがつぶやきを漏らす。
『あら、あらあら』
まだ地中にいくらか残っていたのか、ギーガーの体の一部と思われるものがその円錐に絡みつき、遠心力でまき散らされる様子を見ながら、なぜかどこか楽しそうなメイフェアの声が聞こえる。
『ひゅうっ!迫力だね、大地!』
円錐に続いてほぼ円筒形の本体が斜めに突出する様に、飛鳥が歓声を上げる。
「らいてう用の作業用BGMを流しますか?姫様」
こちらもまたチャンドラーの重力に引かれ、ゆっくりと倒れていくのを見守りつつクオが提案する。
「やめときましょう、シーンには合ってるとは思うけど」
『ひゃあああああぁぁぁぁぁ!』
アイリスがクオの提案を却下する中、共用チャンネルに悲鳴を響かせながらその巨体を地に横たえたのは
『ストライカー・ドリル、じゃったかのう』
『ああ。確か』
のほほん、とそれを評する村田とムラだった。
『ところで、ドク?』
『あー、ケビンさんだそうだ。アイリスさん』
アイリスの呼びかけをバダーが訂正した。
『そうなんだ。私はてっきりクリストファーさんかと』
『そのネタはもうやった』
ついでのボケにも律儀に突っ込みが入る。
『では改めて、ケビンさん?』
『さっきはどうも。乱暴だったが助かったようだ。君がこの集団のリーダーか?』
『まあ、半分は。二つの集団の連合だから。私の事はアイリスと』
『承知した。アイリスさん。で、何だね?』
『どこか落ち着いて話せるところに心当たりはありますか?なければ我々の前進基地に案内しますが』
『…ここの施設はばらばらにしてしまったし、そもそも安全でもなかったな。わかった。案内してもらおう。それと、そこの地底車両は念入りにチェックしたほうがいい。ギーガーの幼体や卵が付いていると厄介だ』
『忠告痛み入ります。スカさん、頼める?』
『私からもお願いします。自己診断では内部侵入はないですが、履帯とか外部にいると死角があるかもしれません』
『君は…宝飾士さん、だったかな?』
スカーフェイスには初めて聞く声だったが、すぐに【ストライカードリル】のオーナーだと思い至ったようだ。
『はい。掲示板ではコテハンはそうなっていました。普段はコヨミ、と名乗っています』
『了解、コヨミさん。点検は任された。それが済んだら君にも事情を聴きたい。同行してもらえるかい?』
『ありがとうございます。わかりました』
『じゃ、ストライカードリルの検査が済み次第1999まで一時撤収で』
「ところで、クオは【ドク】の本名は何だと思った?」
「…G?]




