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報告会

 総督府内に点在する会議室の一つ、現在はセサミオープナー設計検討会議室と名付けられたその中で、今は不在の大地を除く9人と1体が集まっていた。最奥のホワイトボード型のディスプレイの前にはアイリス。その脇に控えるクオはディスプレイの操作を担当するようだ。

 「まずはフロンティアの地表に降りた大地君とミケっちからのレポートから。クオ?」

 「はい、姫様」

 ディスプレイに草原を疾走するΠレックスの3D動画が映し出される。

 「予定通りの走行性能が確認できたよ。比較的フラットな不整地で最大速度160km/h前後。50km/hくらいの巡航速度で300km内外の航続距離、ただし地形や地盤の影響はかなりある、と。メディックスでも確認できてるけど、揺動抑制アルゴリズムは良好に働いてる模様。脚部や股関節の強度はむしろ過剰かもしれないって報告だよ」

 「どうするかい?アイリス君。正規販売分は多少スペックを落とすか?」

 手元のキーボードを操作してディスプレイに脚部のフレームをカットインさせつつムラが訊ねる。素材のランクを落としたり補強のガゼットを省略したりすればコストを下げ、生産性を上げることもできる。

 「私はこのままの方がよろしいのではないかと思います。ユーザーの自由な運用を(うなが)すためにも安定係数を多くとった方がつぶしが効くのでは?」

 メイフェアは多少高価になってもそれに見合う価値があると考えているようだ。

 「まあ、そのためのモジュラー構造でもあり、か」

 ムラもどうでもコスト優先、と考えているわけでもないようだ。

 「ですが、改善点もあります。大地機はポッドからの改造ですが、1からΠレックスを造るのならば特に胴体部の設計はブラッシュアップの余地がいくつかあります」

 メイフェアがキーボードを叩き胴体フレームの画像を呼び出し、数か所のフレームを改良案と差し替える。

 「例えばポッドのフレームにサブフレームをボルトオンしている…ここですが、一体化して形状最適化したものと差し替えればコストを抑えつつ剛性を上げられます。腰のアクチュエータもここのフレームがポッドのそれである前提でなければもう一声シンプルにできます。実はパトレックス5号機はこの仕様で4号機までと比較運用しています。ここまでのところ良好な数値を得ていますので、2次生産分からはこちらの仕様を推奨します」

 「危険はないんだね?メイちゃん」

 「はい。アイリスさん。」

 「あ、では、公団への設計登録はこの改良型のデータで申請ですか?」

 「うん、それで行こう、プルナさん。価格算定はお願いするね。因みにざっとどのくらい?」

 「えっと…1,200,000crくらいでしょうか。実売価格で.あ、冷蔵コンテナ付はもうちょっと高くなります」

 「まあ、そんなとこかの。ザラマンダの方はどうじゃった?」

 村田が先を促す。

 「とりあえず9Gでリミッターかける設定であんまり違和感ないようだったからそれで行こうと思う。マニュアルで解除もできるけど、マシンは瞬間25G位かかっても壊れないのは確認できてる」

 ディスプレイの動画を地表数㎝を滑走するザラマンダとトーラス帯での対ドローン戦の2画面に切り替えてアイリスが解説を始める。

 「有重力下ではこんな風に地表付近をホバー移動に近いイメージで機動するんだよ。もっと高度を取ることもできるけど、グランドエフェクトが効かないと燃費が悪化するから、まあ緊急用くらいに考えてね。で、みんなに渡したコンプリート版のザラマンダと、ミケっちのプロトからのアップデートパックの両方をしばらく販売するのは前に言った通りで、スケジュールは…」

 「昨日公団への登録が受理されました。公団での販売は本日正午より、また、登録に合わせてプロモーション動画をプルナ様が掲示板にアップされましたので、それに対するコメントで一時該当スレに加速が見られた模様です。姫様。関連して報告がございますが」

 「ん?なに?クオ」

 「スカーフェイス様とおっしゃるプレイヤーの方から戦闘ギルド【松の湯】名義で25機の直接一括発注をした場合、納期と価格はどのようになるかの問い合わせを受けています」

 「ああ、スカさんギルド作りたがってたものね。て、松の湯ww戦闘じゃなくて銭湯じゃない、それじゃww」

 アイリスは顔見知りのβプレイヤーがいかめしい表情で駄洒落を飛ばす姿を思い出してけらけらと笑う。

 「ああ、わしにもフレンドコールが来てたのう。AK45系列でいいから50丁ばかり用意できないか、と。納期は保留にしといたが、ザラマンダを出すなら合わせるぞ?」

 「ふむ、スカさんなら大丈夫じゃないかな?戦闘ギルド、て名乗りだけど実質開拓団の戦闘支援をしてたはずだ」

 村田もムラもスカーフェイスとは連絡を取り合う仲だ。セサミオープナーに誘わなかったのは、単に戦闘職プレイヤーがバズー・バダーのインセクティア兄弟で事足りていたから、というだけの理由でしかない。

 「よっし、一肌脱ごう。クオ、承諾の返事を。納期は最短3日。すぐに生産ラインも動かすように。価格は20%引きでいいってことで」

 「はい、かしこまりました」


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