あんたか!
「ところで、飛鳥さんも生産者プレイ志望なんだよね?」
「はい」
「話の流れ的に、飛鳥さんは調理師志望とは違う気がするんだけど」
「私は服飾系のスキル取ったんです」
「へぇ」
飛鳥の志望はアイリスが予想しなかった方向だった。セサミシードを目指した飛行プランは、色々と杜撰ではあったが作業ポッドで飢え死にしない程度の期間でたどりつく、と言う大前提に立てば確かにおよそそれしかないプランで、発想が基本的に理系のそれだと思ったからだ。そもそも作業ポッドを使う、と言うのが無理筋なのを置いておけば、だが。
「なにか?」
「ああ、ごめんなさい。芸術系とは予想しなかったもので」
意外そうな顔を見とがめられたので素直に謝る。
「そんなに意外でした?」
「なんかこう、発想は理系だなって思ったのよ」
「ああ、なるほどです。学校は工業大学なんで、そっちの癖みたいなものです」
「奇遇だね、私もミケっちも工業大なんだ」
「そうなんですか。ミケさんも…みけ、さん?」
まじまじとミケの顔を見つめ、次にやはりまじまじとアイリスの顔を見つめる飛鳥。
つられてまじまじと飛鳥を見つめるミケ。
やはりつられてまじまじと飛鳥を見つめるアイリス。
3人の眉間に軽く縦じわが寄る。
それぞれが、髪と目の色、ヘアスタイル、種族特性の耳の形を記憶にあるものと脳裏で差し替える。
「あー、あすかちゃん、とりあえずフレンド登録しとこうか?」
「あ、俺も」
「あ、はい」
めちゃくちゃ流れが不自然です、とプルナは思ったが、口には出さなかった。おとなな対応である。
『葉山ちゃん?』
『菖蒲先輩に、三宅先輩?』
『やっぱりか?』
「「「…」」」
3人を眺めているうちに大地も何かに気付いた様子で微妙な顔をしている。
「「「あんたか!!」」」
3人とも、顔の造作はあまりいじっていない。ゾアンは獣寄りから人寄りまで振れ幅はあるが、アイリスもミケも人寄りで耳に特徴が出ているだけだ。だが、髪の色と瞳の色がまるで違うので結構印象が違う。といってもミケは初見でアイリスの中の人に気付いているのだから、その程度の違い、とも言えるが。一方飛鳥は、色だけでなく髪型も変えているのでさらに印象が異なっている。
「そうだよねぇ。あんたそんな子よね。こう、基本は合ってるのに変なところが抜けてて、しかも無駄に行動力があるもんで失敗するっていう」
眉間の縦じわを揉み解しながらアイリスが述懐する。高校、大学と続けて後輩だった少女の、記憶に残る失敗例と今回の暴走がきれいにかみ合った。
「大地君も日ごろから大変なんだな」
「…はい…」
「ちょっと!先輩方?大地?やな納得しないでよ!!」
アイリスとミケの感慨に大地も思わず首肯し、飛鳥が抗議の声を上げる。
「…クオさん」
「はい、プルナ様」
実はリアルでの知り合いだったと見られる4人から取り残されたプルナはすっかり傍観者であった。NPCをあわせて20000人以上の中から偶然出会う、というのは確率的にどうなんだろう、などとつい考えてしまう。
「日ごろの行いって大事なんですね」
「同意します」
「収拾は付くんでしょうか、これ」
「プルナ様、こういう時はこう言えばよろしかったかと思います」
「?」
「なにこのカオス、と」




