フライング・はい。
いやいや、あれは騒ぎを拡大しないようにするためのたく兄の配慮だったり、公団との交渉技術だったり、その交渉の後は帰還準備にかかりっきりだったりでやむを得なかったんだ、とアイリスは自分を納得させた。
「じゃあ、目的は食材、特に調味料の買い付けってこと?」
「俺に関してはそうですね。公団が未調理の食材を販売するかどうか不明でしたし、もし出てこなければ産地に出向いて交渉してみればどうにかなるかも、と」
アイリスの問いに答える大地は、ふと、ミケやプルナの視線が妙にあたたかいことに気付いた。
「え?なんですか?」
「その…申しあげにくいのですが…」
「素材状態の食材は、ステーション標準時で今日の午後から希望者先着300名に各30食相当分まで先行販売される予定で、ゲーム内時間で3日後からは制限解除になる手はずなんだ」
「え?」
「生産者プレイヤーは支援したいと思ってるしね。最初が限定なのは流通の問題で、セサミシード・スタンリーキューブリック間の輸送航路が確定すればそれも解決して安定供給できるようになるから」
「え?」
プルナ、ミケ、アイリスからもたらされた情報に固まる大地。
ぽーん
公団よりの公式発表が全プレイヤーに送られたのは、正にその時だった。
「…」
「あのね、大地」
「…なに、姉貴」
「すっごいフライングだったね」
「あ ね き が い う な !!」
「なんか、飛鳥さんってクオと気が合いそうな気がするよ」
「?そうですか?姫様」
ぽつり、と呟いたアイリスに、クオが首をかしげた。
「まあ、骨折り損もなんだから基礎調味料1.8lづつくらいはおみやに持たせたげるよ。その程度は余剰あるよね?クオ」
「はい。戻りましたら用意いたします」
「その、ところで、飛鳥さんは大地さんのためにセサミシードを目指した、ということでいいのですか?」
アイリスが大地へのフォローを支持する傍らでプルナが飛鳥に尋ねた。
「はい。それがメインかな?でも新しいフィールドにも興味あったし、噂通りに青猫さんがNPCだったらもしかすると一番乗りできるかな、とも思ったりもしましたし」
「まあ、気持ちはわからんでもないが…」
新天地に興味を持つのは惑星開拓をメインテーマに据えたこのゲームのプレイヤーとしては普通の反応だな、とミケも同意した。ただし保留付ではあったが。
「あ、一応言っとくけど、セサミシードは私有地だからね?」
「「…は?」」
「まあ、悪意のプレイヤーでないことがはっきりしてれば上陸は許可する方針だけど、無制限に好き勝手されるのも困るよ?」
「「あの、私有地って、どちら様の?」」
「私の」
「「え え っ !!」」
「まぁ、驚きますよね」
「普通にありえねえからな」
アイリスの私有地宣言に驚愕する飛鳥と大地の姿にうんうんと頷くミケとプルナだった。




