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宇宙鉄人(ただし料理の)

 「私はそろそろ上に上がらなければなりませんので、あとはお任せしてよろしいでしょうか?アイリスさん」

 「ん、もうそんな時間?まぁしょうがないね。任された」

 「ではよろしくお願いします。お二方も後程また」

 医務室から出るとすぐにメイフェアがブリッジに上がっていった。この後は輸送船団と合流し、2時間もすればセサミシードに着くだろう。アイリス、プルナ、ミケ、クオの4人は遭難プレイヤー二人を有重力区画のラウンジに案内した。

 「ところで二人とも、死に戻ったと思ってる?」

 アイリスがまず切り出した。

 「え?どういう意味ですか?」

 遭難者姉が首をかしげ、セミロングの赤い髪が揺れ、銀の瞳を瞬かせる。まあ作業ポッドで漂流していたはずがログインしてみたら医務室のベッドの上だったわけで無理もない勘違いではある。

 「あ、いや待て姉貴。デスペナがない。死んでない…のか?」

 弟が矛盾に気付いたようで、赤い瞳を見開く。ちなみに髪は紺色で無難にカットされている。

 「じゃ、誤解が解けたところで自己紹介と案内をしよう。私はアイリス。で、秘書?従者?のクオ」

 名乗ったところでなぜか一呼吸の間アイリスの顔をまじまじと見る2人。

 「ああっ!!あ、青猫さん!!え?なんで?青猫なんで?」

 「ちょ、姉貴失礼!すみません姉気が動転して、もちつけ姉貴、ひっひっふー」

 「う、うん、ひっひっふー、ひっひっふー」

 「なんだろうこのカオス」

 「その、多分ステーションの一連の事件のどこかでお目にかかったのではないかと…」

 「はい。うな丼の時にお召し上がりになりました。因みに姫様がはじめて熊と遭遇した時にほぼ同じ反応をなさいました」

 あきれるミケにプルナが答え、クオが補足する。

 「あの、落ち着かれましたか?私はプルナと言います。アイリスさんと私でお二方を回収したんです」

 「俺の事はミケ、と」

 多少なりとも落ち着くのを待ってプルナとミケの二人も名乗る。

 「で、さっきもう一人いたのがメイフェア。ここはメイフェア所有の高速巡洋艦【プリンセス・メイフェア】艦内で、漂流状態のあなたたちを回収、収容して航行中」

 「航行中?あ、申し遅れました。私は飛鳥(あすか)。こちらは弟の大地です。回収ありがとうございました」

 「大地です。正直目的地に着けるか怪しい状態でしたので助かりました」

 遭難プレイヤー改め飛鳥・大地の姉弟も名乗った。

 「それで、どこに向かっていたのかはさっきの口げんかで大体わかったんだけど…」

 クオが運んできたコーヒーに口を付けつつアイリスが話を繋ぎ、飛鳥と大地がばつの悪そうな顔になる。

 「どうしてセサミシードを目指そうと思ったのかしら?」

  口元をカップで隠したままアイリスがすっと目を細める。

 「?セサミシード?」

 「姉貴、あのコロニーの名前だ。確か広域マップにはそう書いてた」

 「あ、そういうんだ」

 このふたり、アイリスさんにあんな風に視線をぶつけられてよく平気だな、とプルナは思った。

 「あ、すみません。実は、私たち二人とも生産プレイを目指していまして、弟はリアルでも調理師志望でこっちでも調理スキルをメインにとっているんです」

 「ですが、ご存知かと思いますが食材、特に調味料の不足でどうしてもバリエーションが増やせなくて。できるだけこっちで調達できる食材を使いたいとは思っているのですが。そんなときに料理人スレに突然カツ丼がアップされたんです」

 「あ、それ上げたの私です」

 プルナの仕業だった。

 「しばらくは出どころ不明でスレも阿鼻叫喚の加速状態でした。結局近日販売予定となっていたので公団の公式発表を待とう、と言う空気になったところでうな丼事件です」

 大地の説明が続く。

 「で、弟が何か手がかりはないかって調べてるのに付き合っているうちに広域マップに追加物件があるのを私が見つけたのです。同じタイミングで出現したのは何かの関連があるのではないかと私たちは考えました」

 飛鳥が説明を引き継ぐ。

 「本当は直接アイリスさんにお尋ねしたかったんですが、鰻事件の時は声をかけづらいほどに忙しそうでしたしそのあとはさっぱりステーション内でお見かけしなくなりましたから、ここはひとつコロニー、【セサミシード】でしたっけ?に出向いて調べてみようと知恵を絞ったのです」

 「イベントだけ起こして姿を消したんで、青猫さんはNPC説もそれなりの信憑性を持って流れていたので、俺たちも直接聞きだすのは半ば諦めていたんです」

 「おうふ…」

 またNPC説かよ、とアイリスは思った。

 

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