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めでぃーっく!

 「で、どうなんだ?」

 慌てて崩れ落ちたアイリスを抱き上げて、抗議も無視してお姫様抱っこで医務室に駆け込んだミケを待っていたのは船医のNPCとクオだった。

 「打撲傷と内臓圧迫による挫傷、右鎖骨と肩甲骨の骨折、そのほか毛細血管の破裂も多数ありますがそっちは問題ないでしょう」

 ミケの質問に船医NPCが淡々と答える。

 「被弾したのか?」

 「いんや、ミケっち。そもそもザラマンダは宇宙服機能を兼ねるんだよ?空間戦中にダメージが通れば高確率で即死するよ」

 続けての質問にはアイリスが答えた。

 「最後の回避機動が無茶だったのです。最大25G前後の荷重が発生しています。姫様が身体能力の優れたゾアンロードでなければ圧死も十分あり得たかと」

 クオが引き継いで解説を加える。

 「冷静だな、クオちゃん。てか、止めてやれよ」

 「ザラマンダの機動ユニットのテストだともうかがっていましたので。機械かパイロットの限界まで試さないと分からない、と姫様も常々おっしゃっていますので今回もその伝かと」

 「ま、そういうこと。クオを責めないでやって。まあ止められても聞かないけどね。それにゲームだから投薬もらって安静にしとけばログアウトしてる間に治っちゃうよ」

 「…いや、それにしてもやりようと限度はあるだろう」

 平然と無茶を肯定する重傷者とその従者に、セサミオープナーの面々と同じ感想を漏らすミケだった。

 

 その後場所を移動しての再度の採集では、ドローンの襲撃はなかった。

 「メイちゃん、ミケっち、こんな風にばらつきがあるってことはドローンは偏在してるわけじゃないんだね?」

 トーラス帯を離れた【プリンセス・メイフェア】は、輸送船団と合流するため航行中だ。アイリスはすでに動けるようになっており、ミケ、プルナ、クオ、指揮をNPCの副長に預けたメイフェアと共に艦内ラウンジにいる。

 「はい。トーラスもかなり広いので調査がまだ不十分なのです。確か公団クエストにドローンの分布調査もあったと思うのですが、受けるプレイヤーもあまり多くなくて」

 まだサービス開始直後で装備やスキルに自信のないプレイヤーからは敬遠されているようだ。

 「実は俺はそのクエ受けてるんだが、さっきみたいに数が多いとソロじゃ厳しくなってな。せめて火力を底上げしとこうとIDEさんに相談しようとしたところであの騒ぎにあったんだ」

 「あれ?じゃあクエストの期限とか大丈夫なの?ミケっち」

 「えと、それは大丈夫だと思います。1週間以内に3か所の座標と出現数を公団に報告すればよかったように思います」

 アイリスの疑問にはプルナが答えた。

 「あとは遭遇日時も、だな」

 それにミケが補足を入れる。そうしてデータを集めていけばドローンの出現密度マップがいずれできる、ということらしい。

 「ミケっちは調査クエを続けるんだよね?」

 「そうだな。今日のデータを合わせて一旦公団に報告して、改めて請け直すけど調査は続行するつもりだ」

 「ならさ、セサミシードに着いたらアップデートパック用意するから使ってよ」

 「アップデートパック?何の?」

 「ザラマンダ、の。ミケっちのプロトを私の使ってたのと同じザラマンダの仕様にするためのキット。ゲーム内スキルはどうか知らないけどミケっちならリアルスキルで組めると思うよ」

 「ありがたいが、いいのか?」

 「ま、今回ミケっちには協力してもらったしね。報酬と思って取っといてよ」


 「あれは脈ありという事でしょうか?」

 「え?え?そうなんですか?」

 「いえ、姫様は素でああなのではないでしょうか」

 ちょっと離れて内緒話をする声は、アイリスらには届かなかった。


 




 

 

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