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うぃんうぃん

 「ですが、本当にそれでよろしいのですか?」

 望外の好条件を提示されて大国はむしろ当惑していた。

 「別に我々はフロンティアを支配することを望んでいるわけではありませんから。それに、今回だけ、でなく今後も通して実行できる取引としたいと考えています。ですが、この取引を実行するには不足している物があります。それを公団に提供していただくのが本当の条件です」

 実のところ、大国は大幅に引いた条件を提示してできるだけ大量の食材を押さえておくことを目論んで交渉に臨んでいたのだが、アイリスの意向をくんでメイフェアが計画したのはそのカウンター、公団にとって理想的な価格の提供をまず行い、そのお得感をフックにして一気にこちらの求めるモノを引きずり出す、そんな交渉術だった。

 「不足している物、とは?」

 「物よりも人、それに手段ですね。商品の供給力は過剰なくらいあります。ですが、輸送手段は今の所この艦のみ。輸送用には効率がよろしくありません。荷駄作業も施設は用意がありますが、それを行う作業員は不足、いえ、不在です。取引の受発注にいちいちこうした場を設けてもいられませんから、【セサミシード】内に公団代表窓口も置いていただいた方がよろしいかと」

 「それは、今回のように持ち込んでもらう訳には?」

 アイリスの条件に大国が対案を出してくる。

 「それでは流通量が確保できませんし価格も折り合わなくなるでしょう。それに、この案は公団のためでもあります」

 「私どものため、とは?」

 「食材輸出に関しては、その可能性が出てきてからずっと考えていました。

 一つ。どうすれば求める全プレイヤーにあまねく行きわたるか。

 一つ。フロンティア地表の農地開拓を目指すプレイヤーの意欲をそがないようにするにはどうするべきか。

 一つ。どうすれば我々を含む特定プレイヤーに利権が集中するのを防ぐことができるか。

 一つ。我々が輸出入ばかりに時間を奪われぬようにするにはどうすべきか?

 もし、もしもですよ?我々が輸送できるプレイヤーを募って独自輸送を行い、最小限利益でばらまけばどうなるでしょう?ここまでの旅の道すがら、船持ちのプレイヤーのコミュニティーを知りました。最初に思っていたほど不可能事ではないと。もしその中に悪意のプレイヤーが混じりこんで横領を図ればどうでしょう?そうなった後で、本来望んでいたプレイが出来なくなった我々が投げ出してしまったら…どうなります?」

 アイリスの視線に力が入り場を支配する。

 『手札切りすぎたかな?』

 『いえ、よろしいでしょう。最後のもいい脅しです、アイリスさん』

 『あ、はい、そうですね。せっかく交渉の主導権を握ったところですからたたみかけるのが良いかと思います』

 そうしながらもフレンドコールで水面下の相談が続いていた。

 「それは…ぞっとしないシナリオですな…」

 大国が出てもいない汗を拭く。ロールプレイでなく、反射的にリアルでの動作を反復したからだ。

 「アイリスさん、誤解を恐れず言わせていただくが、この案件はある程度公団の管理下にあるべきだと考えます。自由交易至上主義の方々からは怒られそうですが」

 「同意します。少なくとも農水産プレイヤーが我々に追い付く、せめて背中が見えるくらいになるまではそのほうがいいでしょう」

 「私からもよろしいですか?」

 「なんでしょう」

 メイフェアが手を上げ、大国が応じた。

 「港湾設備等への派遣と併せて、この艦にもクルーを用立てていただくことはできるでしょうか」

 「それは可能ですが、関連は?」

 「抑止力として現在フロンティア最高火力であるこの艦は有用と思われませんか?」

 「…確かに。わかりました。手配しましょう」

 人員の手配にめどをつけたその裏で

 『そうなの?メイちゃん』

 『はい。セサミシードと同じくユニークアイテムですから』

 『今はじめて聞いたよ?』

 『聞かれませんでしたから』

 そんな内緒話があったことはこの際秘密であっただろう。


 

 


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