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なかのひと、またはあに

 「今は警備さん、て事にしてくんねえか?アイリス?まあGM権限があるのは確かだけど」

 琢磨が答えた。

 「じゃあ警備さん?無力化したらどうせ引き渡すつもりだったし、いいけど」

 アイリスもひと暴れして発散したのか、あっさりと承諾する。

 「あとな、一応事情聴取があるから公団事務局まで同行願おう」

 「それもどうせ最初からの目的地だから問題ない…かな?」

 これも快諾した。さらに数名の琢磨と同じ制服を着た警備員が動けなくなっているザラマンダ・プロトに取りついて犯罪者プレイヤーを引きずり出している。

 「ありゃ?なんか静かになったと思ったら、気絶してる?」

 「ああ。継続ダメージからの精神力判定に引っかかったんだろうな。起すと面倒だからこのまま連行しよう」

 一度に大ダメージを受けたり1分以上の継続ダメージを受け続けると精神力を基準に気絶判定が行われる。失敗すると気絶した旨インフォメーションが入り、ログアウト以外の操作ができなくなる。こうなるとログアウトするか、回復判定の成功を待つか、誰かの治療を受けて状態異常から回復するかしかない。

 「あの警備さんたちもGM?集まってくるとか意外に暇なの?」

 「ばか言え。俺以外はこの現場にいる警備員はNPCだよ」

 「それで大丈夫なの?」

 「大抵はな。戦闘特化のトッププレイヤーでもなけりゃ取り押さえられる。そう調整してる」

 まあモンスターの類もAIやアルゴリズムが違うだけでNPCと同じだから、調整はできるのだろう。

 「あいつはどうなるの?」

 アイリスの質問はかかわったものとしては当然の興味であっただろう。

 「今回は説教と警告、だけかな?初犯だし痛い目も見たし、ザラマンダ・プロトも全損扱いだから保険適用で資金半減だ。おまけに悪目立ちしたから色々とやりにくいことも出るだろう。これで酷いペナルティー受けたらゲームやめちまうな。そもそも犯罪者プレイそのものは別に禁止していない。割に合わんがね」

 「そうなの?」

 「ああ。プレイヤーの行動にできるだけ掣肘をかけない方針でな。もちろん犯罪者プレイを推奨はしない。手配犯ともなれば買い物はできん、クエストも限られる、賞金稼ぎに追われる、いいことはほとんどない。それでもそれが良いというならやってみることはできる。システム的には禁止ではない」

 琢磨の回答に、これ以上聞いてもなぜ禁止でないのかは答えてもらえそうにないと経験上察したアイリスは、この件に関しては今はここまで、と思うことにして公団事務局へと向かった。


 事情聴取、とは言っても今回アイリスは警備にとっては善意の協力者であり、行動ログから詳細も読めているので形式を整えた、とかアイリス等をギャラリーから隔離した、といった意味合いのようで取調室でのそれはすっかり雑談タイムと化していた。

 「あ、そうだたく兄、お土産があるよ。この件の関係者に分けてあげて?」

 「うぉ、あやおまえこれどこで!?」

 「んー、領地?」

 アイリスがバックヤードから取り出したのはカツ丼定食20セットだった。

 琢磨は、取り調べる方が用意するものだったのでないかと思ったが、口には出さなかった。ついでに取り調べあとの提供なので賄賂ではないことにした。

 その後、犯罪者プレイヤーは、取り調べと説教の合間に絶妙なタイミングで差し出されたカツ丼に涙した。

 

 

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