表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

36/232

ふなたびなう

 高速巡洋艦【プリンセス・メイフェア】のブリッジ、操舵手席で、アイリスは艦備え付けの情報アーカイブを開いていた。隣の砲術長席にはクオが姿勢よく座っているが、現在すでに【セサミシード】とのリンクは切断しており、しばらくの間は彼女が自力で動き出す事は無い。

 メイフェアとプルナは一旦ログアウト中であり、ゲーム内時間であと2時間は戻ってこない予定だ。その間アイリスが運行責任者代行という事になるが、艦はメイフェアがログアウト前に設定したコースで自動航宙中であり何かのトラブルが無ければアイリスの出番はないはずである。この宙域に【プリンセス・メイフェア】以外に用事のある船がいるはずもなく、ぶっちゃけアイリスはボッチで暇を持て余していた。

「ま、しかたないっちゃしかたないけどね」

 メイフェアはともかくプルナは操縦関連のスキルを取得しておらず、単独でブリッジの留守居役はできない。時間的にもどこかでメイフェアかアイリスのどちらかが単独で残るようにしないとリアルでの生活に差しさわりが出てしまう。

 「こうしてみると、ホント隔離されてたんだねぇ」

 アーカイブから開いて空中に投影されているのは「フロンティア」惑星系の縮小映像だ。

 「惑星フロンティア、サイズ、質量ともに地球の約98%、大気組成は地球とほぼ同じで表面積に対して海洋75%、陸地25%。知られている範囲では生態系は恐竜が完全には絶滅しなかった新生代に例えられ、温血爬虫類と哺乳類が共存。由来不明の謎生物の報告もあり」

 フロンティアの映像をタップすると公式設定に準拠した情報テキストが開く。

 「人工物は現時点で軌道エレベータが一基。その周辺に開拓者の集落ができつつあり、現時点で人口規模では市街に近づいているが一次産業が皆無で住宅もテントやバンガローに類するものしかない。人口の過半はエレベータ基部の宿泊施設を利用している…資材あればドーユーさん地表でも引く手あまただったんじゃないかな?」

 一旦アップになった軌道エレベータ付近の映像をスクロールさせ、静止衛星付近まで縮小する。

 「軌道エレベータの他には先史文明の遺物と思われる人工物が散見されるが、いまだ未調査で詳細は不明であり今後の調査、報告が待たれる。つまり、クエストの素だね。

 軌道エレベータ上部は公団ステーションと連結されている。ステーションは直径1.6kmのトーラス型を2基連結したもので、収容人口は2万人前後。マザーシップを解体した資材で港湾の拡張工事が進められており、現在プレイヤーの30%前後が関連クエストに従事している。港湾拡張は第2次開拓者受入れの準備と噂される、か。これのせいでメイちゃん艦を置きづらくなったんじゃないの?」

 さらに映像を引く。

 「地表から2万km前後に岩石群の輪が存在し、トーラス帯と呼称する。鉱物資材の採取場所となっており、公団ではプレイヤー全体の共有物として自由採集を認めている。短期間でそこそこの収入が見込めるクエストとして知られつつあるが、所属不明の戦闘ドローンとの遭遇報告が複数件上がっている。トーラスの成因は複数存在した衛星のうち惑星に近いほうが潮汐力で砕けた、とする説や先史文明がテラフォーミングの際に資材確保のために大量に運んできたもの、とする説などがあり、確定していない。ふうん?」

 実のところ、プルナとメイフェアのログアウトを先にした理由の一つがこのトーラス帯のせいだった。大きく迂回すると時間のロスが大きいし、かといって迂回しないと衝突事故やドローンとの戦闘が懸念されるので最小限迂回することにしたのだが、少しよけた程度ではまだこのエリアでは哨戒をする者と回避する操艦技術を持つ者が必須であり、この区間に差し掛かる前に二人にログアウト/ログインを済ませてもらうことにしたのだ。

 そこからさらに映像を引き、フロンティアから4万km付近に来たところでようやく【セサミシード】の軌道にたどりつく。

 「衛星は月とほぼ同じ大きさ、質量でフロンティアからの距離も地球/月系に準じている。サンスクリット語で月を表す【チャンドラ】と呼称。詳細は未調査だが、あまりに地球/月系に酷似するのは偶然でなく先史文明の作為が働いているとの見方が有力。ラグランジュ4にコロニー、【セサミシード】」

 ふと、リンクが切れて動かないクオに視線を向ける。

 「…なんか、クオの合いの手が入らないのは変な感じだよ。ゲームを始めてから、ゲーム内時間でも1週間とちょっとしか経ってないのにね。メイちゃんが来るまでぼっちプレイと思ってたけど、クオは一緒だったものね。クオは、私が来るまで1000年の間ずっと寂しかったの?」

 問いかけてみるが、当然クオからの反応はない。


 その頃、セサミシードでは


 「わしは飯盒炊爨(すいさん)くらいならできるのじゃが…すまん、家では食事はばあさんまかせなんじゃ」

 「俺も料理スキルはとってないぞ?誰かできるやつはいないのか?」

 「ムラさん、顔を見て察してくれ」

 「だが、ドーユーさん、せっかく生鮮食材が山とあるのにそれを目の前に公団謹製のレトルトパウチと言うのは…」

 「バズー、責めるな。ドーユーさんのせいじゃない」

 「でも兄貴!」

 『皆様、ボディーが出払っておりますので調理を実行することはできませんが、調理手順のご案内くらいは可能です。そして素人でもまず最小限失敗しないカレーライスを提案いたしますが、いかがでしょう?』

 

 「「「「それだ!!」」」」


 焦げ付かせて総orzまであと1時間




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ