いってきます
「それで、アイリス君はどうするんだ?ステーションに行くのか?それとも【セサミシード】の修理に残るのか?」
クオを助手にメイフェアの【ザラマンダ・プロト】4号機の改装を始めたアイリスにムラが尋ねた。
「迷いどころよね。クオは現状でセサミシードから離れられないのよね?」
「はい、姫様。私の本体はセサミシードのメインフレーム内にありますから、長距離通信施設が機能しなければリンクが切れてしまいます。リンクの切れた端末は複雑な人形と変わりがありません」
「正直セサミシードの詳細情報は完全に把握してるわけじゃなくて、クオ頼みなのよ、ムラさん」
アイリスは作業を続けながら嘆息した。
「プルナさんは必ずしも同席は必要ではない、とおっしゃいましたが、公団とのお話にはアイリスさんがいらした方が望ましいと思いますわ」
「まあ、そうじゃろうの」
メイフェアの意見に村田も同意する。
「だけど、どの程度の人員がいる、なんてことはクオちゃんしか正確にわからんわけか…」
腕組みをしてドーユーが考え込む。
「ならばこっちに残って通信でも正確な話をした方が有効かもしれんな」
「だが、NPCとはいえ他人に話を通すのに目の前にいるといないではかなり違うぞ?」
バダーとバズーも一長一短な状況に解決案を出せないようだ。
「…クオ君、3人がかりでステーションまでのリンクを回復させる、という条件でどのくらいの時間がかかると見積もる?」
「はい、ムラ様。姫様おひとりでゲーム内時間で8日かけて港湾を機能回復させました。移動に最も時間を費やしましたから、多人数で手分けしてかかればあるいは1日強で可能かと」
ムラの質問にクオが淀みなく答える。
「…クオ、みんなのパーソナルコミュにリンクを張ってナビゲーションすることは?」
【ザラマンダ】の機内に上半身を突っ込んで作業しながらアイリスが問う。
「可能です」
「メイちゃん、ステーションまでの所要時間は?」
「ゲーム内時間で6時間です。もちろん【プリンセス・メイフェア】なら、ですが」
「うーん…クオ、さっき外したカバーと8号Tバーレンチ」
「じゃあ、こうしよう。ステーションには、私とメイちゃん、プルナさん、あとクオのボディーを連れていく。クオはボディーとのリンクが切れている間は、コロニーのLANで修理をサポート、長距離通信が回復したら私の補佐。バダーさんとバズーさんはムラさんとドーユーさんの護衛」
【ザラマンダ】内部の改装を終えたアイリスが割り振りを発表した。
「わしは護衛なしか?」
「いやいや、村田さんメイちゃんの次に保有火力高いからね?」
「お?」
「ん?」
「あ?」
「ふむ?」
「ほう?」
「? どしたの?」
「「「「「何ぞクエストが発動した」」」」」
「ああ、港の時も出たからね。ちょっとだけど達成ポイントが出るみたいでしょ?」
セサミシード南港【バンゲリング】では、今まさに高速巡洋艦【プリンセス・メイフェア】が離岸出港しようとしていた。船倉には4000食相当の食材を皆でガントリーをマニュアル操作して積み込んでいる。
「じゃあ、ムラさん、村田さん、ドーユーさん、留守中セサミシードは任せたよ?あと港湾倉庫の食材は好きに食べちゃっていいから。バダーさん、バズーさん、猛獣の不意打ちにはくれぐれも気を付けてね。クオ、しっかり皆を補佐するんだよ?私のいない間失礼のないようにね?」
「あぁ。任された。時間があれば修理は進めちまっても構わんのだろう?」
アイリスの通信に港務局からムラが答える。
「もちろん。あ、でも何がどこまで進んでるのかは連絡ちょうだい?」
「了解だ」
「道中気を付けて行くのじゃぞ」
「ありがとう、村田さん」
「職員の人数が確定したらすぐに連絡してくれ。住宅の設計に入るから」
「おk、ドーユーさん」
「猛獣はテーザーで無力化が推奨なんだな?」
「まぁ先手を取られなければ問題ないがな」
「危なければこだわらなくてもいいからね、バダーさん、バズーさん」
「道中お世話できないのが残念です。代わりにと言っては何ですが私のボディーにいたずらしていただいても結構です、姫様」
「しねえよ」
ゲーム内時間で3時間後、調理スキルを持つ者が居ず、食材の前で途方にくれる残留組の姿があったのはご愛嬌と言うものだろう。




