製造者責任
「メイちゃん、着込むんじゃなくて。ちょっといじるから降りて」
【ザラマンダ・プロト】を装備したメイフェアにアイリスが指示を出す。
「あ、そうですよね。いつも装備コマンドで着用するのが手早いのでつい」
かしゅっ、と気密の解放される音とともにカメラヘッドのマウントと一体になった頭部装甲が前方にスライドし、それにかぶさるように背面装甲と動力部ユニットがスイングして開く。武骨なザラマンダ・プロトの開いた背中から後ろ向きに体を引き出す美少女の姿は蛹から羽化する蝶のようでもある。
「えと、メイフェアさん、ちょっとそのまま」
「どうなさいました?プルナさん」
「スクショを取ります。カタログショットにいいかと思いまして」
「ああ、それはよいアイデアですね」
嫣然とカメラ目線で微笑むメイフェア。ザラマンダ・プロトとメイフェアのバランスのいい構図を探してちょこちょこと位置を変えてスクリーンショットを撮影するプルナ。
「…俺も撮っていい?」
「ムラさんにはこれ」
撮影に加わりたがるムラにアイリスが示したのは、マザーギーガーの素材とスパイダーシルクだ。
「おほっ、アイリス君!これなんだ!?」
「任せたいものがあるって言ったでしょ?β最終イベントの時のドロップと、ここの高山地帯で採取した巨大蜘蛛の糸なんだ。分析して素材レシピを取得すれば使えるようになるみたいなんだけど、その辺りのスキルを私が改めて伸ばすよりもβから引き継ぎのムラさんに任せた方が高効率だよね?」
「もちろんだ!で、レシピはここにいる皆で共有でいいのか?」
「そうだね。みんな1から開発した秘中の秘、みたいのはあるだろうからそんなのは伏せたままでいいと思うけど、ドロップ品情報みたいな降ってわいたようなことや製品化していてリバースエンジニアリングできるようなものは【セサミオープナー】内では共有で行こうと思うのよ」
「じゃな。そのくらい連携を密にせぬと組んだ意味が薄れてしまうでの」
アイリスの見解を村田が支持する。
「アイリスさん、降りましたよ?」
撮影も終ったらしく、メイフェアが声をかけてくる。
「じゃ、私のも出しとくか」
アイリス自身のザラマンダ・プロトはバックヤードから装備せずにそのままアイテムとして取り出された。
「さて、ここにあるザラマンダ・プロトはそれぞれX00003号機とX00004号機になるんだ。3号機が私のだね。メイちゃんにあげたのが4号機。そういえば、メイちゃんβ最終イベではこれ使わなかったの?」
「武装ができてないとうかがいましたから」
「まあテスト機でどつきあいは不安で当然よね」
「1号機と2号機はどうしたんだ?」
ドーユーが挙手して質問する。
「1号機は負荷試験でスクラップにした」
「2号機は、あれじゃな?アイリス嬢」
「知ってるのか?村田さん」
村田がなにかを知っている風な物言いをするのにバダーが食いつく。
「運動性と装甲性能の最終試験だ、と2号機を着込んで走り回る嬢ちゃんにわしが射撃を。50口径でスクラップになって嬢ちゃんは死に戻ったんじゃったか」
「双方合意のテストでPK案件じゃないってGMに説明するのが大変だったよね」
「いや、体張り過ぎだろう」
けろりとした顔のアイリスに思わず突っ込むバズー。
「アイリスさんのテストは大体そんな感じですよ?1号機の負荷試験も艦載機デッキの隔壁と力比べをわざとして最終的には死に戻りでしたでしょう?」
あきれ顔でメイフェアが補足する。
「いやだって、性能限界を確認するのは製作者の責任だと思うのよ」
「「「「「「「やりようと限度はあると思う」」」」」」」
「そうかなぁ」




