出会った
結論から言えば、修理そのものは簡単だったと言えただろう。アイリスの修理スキルが高いので、故障個所の特定も修理作業も手早く進む。3件をかたずけて平均1時間一件くらいのペースで進められている。ゲーム内では時間は4倍加速だし、夏季休暇に入っているのでまだ時間の余裕はある。
「ぶっちゃけ、移動時間が一番長いよね」
「BGMにワンダバセレクションはいかがでしょう」
「…うん、次の移動からお願い」
だんだん一本調子な作業にだれてきたところだった。
「さっきの英語歌詞のは?」
「7ですね」
「7作目?」
「いえ、2作目、カウントによっては3作目、とするかたもいらっしゃるようです」
ものすごくどうでもいい会話を交わしつつ5件目のポイントのエアロックに取りつき、IDでロックを解除、中に入る。外壁側のドアが閉鎖され、エアロック内に空気が流入。内壁側ドアが開き…
「!」
「!?」
何かと目が合った。2秒ほどの沈黙。
「くま?」
「グルル…」
相手が何か、認識が追い付いた瞬間
「ガアッ!!」
立ち上がり、両前足を上げて威嚇してくる身長約3Mの熊。
「うわぁっ!!」
反射的に右ストレートを叩き込むアイリス。
まともに左顎に鉄拳を受けてたたらを踏む熊。
「くま!?なんでくま!?」
「間違っておいでです。あれは熊でニンジャでは」
「ネタはいいから!!」
「落ち着いてください。虚空に浮かぶ野生の王国と評されたのは姫様です」
「そうだけど!」
「グガッ!!」
一発くらっても闘志満々な熊が再び威嚇してくる。
「どうやらここの配電室は居住区画内からアクセスできるようです。本来ドアで閉鎖されているはずですが、おそらく鍵の故障で開くことができたのではないか、と」
ぶん、と音をたてて振り下ろされる熊パンチを両腕でブロックするが、エアロック内で身動きできない。
「冷静な分析ありがとっ!それで⁉」
「推定しますに、排除しなければ修理の障害になるでしょう」
「どうやって⁉あれ、ザラマンダ・プロトを着ててもこっちより100㎏は重たそうだよ⁉」
「ですが、パワーとスピードは同等に思います。そして、【ギーガー】よりも攻撃力があるとは思えませんので…」
「…ザラマンダ・プロトの装甲は抜けない?」
「はい」
ザラマンダ・プロトのヤクザキックが熊を引きはがす。
「ありがとう。確かに慌て過ぎだったみたい」
のし、と室内に足を踏み入れる。対する熊は立ち上がるのはやめたようだが、その眼の戦意は消えていない。
「よろしい。では教育の時間だ」
2ラウンド32秒、眉間へのストレートを受けた熊は、アイテム熊の胆と熊の掌をドロップして消えたのだった。




