おまけ.入学理由
「写真撮ろうぜ!」
「ずっと友だちだぜ!」
そんな声が教室のあちこちから聞こえてくる。
今日は卒業式だ。
「さて、と」
立ち上がったそのとき、
「勉」
背中越しに、爽太の声がした。
振り返る。
そこには爽太と――
「何その間」
氷室が呆れた顔で立っていた。
隣で小森が手を振る。
「いよいよだね」
「……」
少しだけ、二人を見る。
「だから何なのよ、その間は」
氷室が眉をひそめる。
俺は言った。
「……いや」
「俺らも仲良くなったもんだなと思ってな」
一瞬、氷室が止まる。
「な、何よ急に……!」
少しだけ視線を逸らす。
「もしかして……嫌なの?」
「そんなことは言ってないが」
「じゃあ何なのよ!」
少しだけ間が空く。
小森が口を開く。
「仲良くなれて嬉しいってことだと思うよ?」
そのまま氷室の方を見て言った。
「……負けたくないこともあるけどね」
「……何の話よ!?」
爽太がため息を吐いた。
「……勉の取り合いはその辺して行こうぜ」
「な、何言ってるのよ!?」
氷室の声が裏返る。
「バカじゃないの!?」
「違うの?」
小森が小さく言う。
「違うわよ!!」
教室に声が響く。
「……まぁでも」
「この学校来て正解だったな」
小森が頷く。
「……うん」
氷室は何も言わない。
だが、口元だけがわずかに緩んでいた。
爽太が、ふっと笑う。
「……今更だけどさ」
「何でこの学校選んだの?」
「名前だ」
小森が首を傾げる。
「……万二高校?」
爽太の表情が固まる。
「待て」
「……まさかお前」
俺は頷く。
「万二」
一拍。
「パンツだ」
「ここ偏差値八十二だぞ!!」
爽太が何か言っているが、そんなことより――
「八十二……」
俺はゆっくり頷く。
「語感が最高だよな」
氷室と小森が顔を見合わせる。
「そんな理由で受けるところが、なんと言うか……」
小森が小さく笑った。
「勉くんらしいね」
「待て待て待て」
爽太が慌てて割り込んだ。
「何いい話みたいに終わろうとしてんだ……滑り止めは?」
「潘津高校」
「受験理由が最低だ!!」
「おかげでみんなと出会えた」
「最高だよ!!!」
その瞬間――
ピコォォォン!!!
頭の中に、聞き慣れた音が響いた。
「……!」
窓の外を見る。
「行ってくるわ」
「待てええええ!!卒業式だぞ!!」
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました!
まさか日間8位まで行けると思っておらず、びっくりしています。
感謝の気持ちを込めて、卒業前のちょっとしたおまけ話を書いてみました。
最後まで江口は江口でしたが、少しでも楽しんでもらえたなら嬉しいです!
本当にありがとうございました!




