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14.野外観察スタート

いよいよ今日は遠足だ。


バスに揺られ、行く先は、


――野外観察。


最高じゃないか。


俺は委員長として、最後尾からみんなを見てあげよう。


ふはははっ!


「江口くん。楽しそうだね?」


横から声がした。


小森だ。


「そうだな」


そのまま続ける。


「色や模様。一期一会の出会いを思うとな」


「いっぱい見つかるといいね?」


「ああ!」


思わず声が弾む。


「分かってくれるか!」


「萌。騙されたらダメよ」


後ろから、落ち着いた声。


振り返る。


氷室だ。


「え?」


小森がきょとんとする。


「変なこと言ってるだけだから」


「……えー?」


小森は少し困ったように笑ってから、


「変な澪ちゃん」


その言葉に、少し間が落ちる。


「……お前ら、朝から何やってんだ」


すぐ後ろから声。


振り返らなくても分かる。


「爽太、親睦を深めることは大切だぞ」


「……深めてるのか?」


爽太は少しだけ考えてから言う。


小森が小さく笑う。


「仲いいよね」


そうこうしているうちに、

バスの揺れが止まる。


窓の外はいつの間にか、

緑が増えていた。


バスを降りる。


足元に広がるアスファルト。

少し湿った土の匂いが混じる。


空は高い。


その空気を吸い込んで――


「いよいよだな」


近くにいた爽太が振り返る。


「友だちと回ると楽しいな」


「青春だよな!」


前にいる男子の声に、

小森も楽しそうに頷く。


迷いなく続け、そのまま視線を上げる。


風。

人の流れ。

揺れる影。


「青色に、赤色……」


そのまま言葉を重ねる。


「学校の醍醐味だな」


「バラ色の人生ってやつか!」


近くにいた男子が笑う。


爽太は首を傾げて言った。


「……なんか違う気はするけどな」


前の方で先生が手を叩く。


「公園は信号を渡ってすぐだ。固まって移動しろー」


視線を前に向ける。


信号が――青に変わる。


人が一斉に動き出す。


歩き出す。


ピコン。

ピコンピコン。

ピコンピコンピコン。


(来た来た来た……!)


口元が上がる。


「ふはははっ!」


「何だよ急に」


「音が鳴り止まない!」


「すげぇな……もう環境音まで把握してんのか!」


「信号の音だろ」


男子の感心した声に、

爽太はため息混じりに返す。


「……男子って楽しそうだね?」


「萌。あれは楽しそうじゃなくって、

馬鹿って言うのよ。」


小森の言葉に、氷室が応える。


「一緒にしないで欲しい!」


爽太が声を上げる。


横断歩道を渡りきると、

そのまま公園の入口へ誘導される。


「クラスごとに並べー」

「一班が先頭だ」


先生の声が飛ぶ。


自然と列ができていく。


俺たちは、九班。


(……予定通り、最後尾だ)


全員が並べたところで、

先生が前に立つ。


「これから班ごとにフィールドワークを行う」


プリントが配られていく。


「観察したものの特徴を書いていけ」


「色や形、気づいたことを記録すること」


紙を受け取る。


視線を落とす。


(……色、形)


ーーいいね。得意分野だ。


「一組から順に出発する」


先生が手を上げる。


「一組、行けー」


列が動き出し、前の班が一つずつ進んでいく。


間隔が少しずつ広がり、足音や話し声が遠ざかっていく。


やがて、順番が回ってくる。


「九班、行けー」


歩き出す。


前には氷室と小森。


最強だ。

居飛車穴熊をも超える、完璧な布陣。


歩き出してしばらくすると、舗装された道を外れ、土の道へと入っていく。


周りの木が増え、足元には落ち葉が混じり始める。

踏むたびに、かさりと乾いた音がした。


「……あれ」


前を歩いていた小森が足を止める。


ピコーン。


『パンツイベント発生予測』


(来た!!)


小森は、少しだけ身を乗り出す。


「鳥……?」


視線の先、枝の上で小さな影が動く。


「どこ?」


「ほら、あそこ」


小森の指が伸び、それにつられて視線が上がる。


そのまま一歩、踏み出した瞬間。


足が根に引っかかる。


体が前に傾く。


「きゃっ!」


咄嗟に腕を伸ばし、そのまま体を引き寄せる。


重さが乗る。


距離が近い。


――視線が落ちる。


白を基調に、差し色が美しい。


「だ、大丈夫……?」


小森が顔を上げる。


少しだけ頬が赤い。


「問題ない」


小森は慌ててスカートを押さえながら、何度も頷いた。


「ご、ごめん……」


「気にするな」


体を離す。


そのとき。


「おい、江口」


背後から声が落ちる。


(……やはり来たか)


振り返る。


一ノ瀬が歩いてくる。

その後ろに、班の連中も続いている。


「来ると思ってたよ。

やっぱりこのタイミングだよな?」


眉をひそめる。


「何を言っている」


「隠さなくていい」


小さく息を吐く。


「……隠れてるのを見るのは、嫌いじゃないが」


視線だけ落とす。


「お前のは、な」


「何の話だ!!」


一ノ瀬は頭を振る。


「……そんなことより、勝負だ!」


一ノ瀬は唐突に言い放つ。


「どちらが多く観察できたかを競うぞ!!」


そのとき、一ノ瀬の後ろから、声が飛んできた。


「蓮くんは負けねーぞ!」


「そうよ!」


「ちょっとパンツが好きなだけで、最強なんだから!」


一ノ瀬が固まる。


「……最後違うっ!!」


「違わないでしょ!」


小森がきょとんとする。


「……?」


氷室がため息をつく。


「……はぁ」


爽太が顔を覆う。


「また変なやつが増えた」


一ノ瀬が叫ぶ。


「一緒にするな!!」


読んでいただきありがとうございます。


昨日は更新できずすみません。

本日からまた投稿していきますので、

次回も読んでいただけると嬉しいです。

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